第34話 穢れを流したあとは?
叫んでいて、どれくらい経ったでしょうか?
身体の奥の奥から、搾り取るようなあの痛みと熱さに耐え切れず。
終いには、気を失っていたようです。起きた時には、湯殿で白蛇様に身体を洗っていただいていました。
「気が付いたか!? 大事ないか、砂羽?」
「……あの。穢れは」
「すべてとは言い切れんが、かなり絞り取れた。その都度、騰蛇だけでなく朱雀にも焼いてはもらったが……寝所が使いのもんにならなくなってな? 今修復してもらってるところだ」
「そ……う、ですか」
どれほど、とまではわかりませんが。贄姫と仕立て上げたあの家の人間は、『道具』は『道具』だったと……これで認めることが出来ました。いくら生みの親であれ、子にしてはならないことを私の身体に注ぎ込んだ。
穢れがだいぶ出たことで、今までのぼんやりに合点がいきました。私はただ『傀儡』のように身体には穢れを溜めさせていただけの形代。
意思が整いつつある今、私はまだまだ無知でも、都波の家の愚かさくらいはわかりました。
「穢れで手足の関節も少し膨れていたか。娘よりは少女ぽいが十五くらいか」
「……まあ」
細かっただけの手足が、少しふっくらと肉付きの良い形に整えられていて。
カクカクと動きにくかった、関節もきちんと動かせます。穢れの溜まり場として今まで動きにくかったでしょうが……あの穢れは、焼いただけで浄化できるのか気になりました。
「砂羽。清め終わったら、また馳走を食おう。騰蛇らが張り切ると言っていたしな?」
白蛇様は労わるように、そうおっしゃっていただけますが。まずは、謝らねばと湯殿の中で私は平伏しました。
「ありがとうございます。……ですが、お屋敷を大変なことに」
「? はは。沙霧を動かせるようになるまで、私らは事実上『封印』させられていたのだ。礼を告げねばと思っていたぞ? 砂羽が謝る必要などこにもない」
「……そうなのですか?」
「穢れを『力』に変えてたのは、私と狼王だが。一気にやり過ぎて、しばらく現世側も大変だろう。都波が一番とばっちりを受けているから……な?」
「……わかりました」
多くの罰を受けているのが、あの親たちや使用人らであれば……私がこれ以上関わっても一緒だ。
なら……白蛇様方に、恩義を返すべく。これからは側仕えとしてお仕えすれば良いのだ。体を洗い尽くし、湯を術で払い。
身なりを整えれば、天一様が外で待っていらしたのか私に抱きついてくださった。
「砂羽っち! なんか可愛い!!?」
「ええ。さらに愛らしくなられて」
天后様もそうおっしゃってくださるので……背丈は縮んだものの、顔の作りはどうやらまた整っているらしい。そして、恥ずかしいですが、腹の虫がうるさく鳴ったので、皆様を笑わせてしまいました……。




