第29話 あったかい汁物
今日の主役のご飯。
お米はあるのですが、湯殿ではない水を体が必要としていると言うことで。
騰蛇様が、私の好みを探るべく……いくつもの汁物を用意してくださいました。味噌汁、お澄まし以外に見たことないものが。
しばらくは、それに合わせたご飯作りをしていただけることになったからです。私の体にはまだまだ肉づきが足りないようですから。
「味噌汁は、刻みネギにかき玉入れてみた。量が多ければ、ここに飯を入れて雑炊にしてもいい」
「……美味しそうです」
「んじゃ、どれもひと口食べたあと。そうするか?」
味噌汁は卵でふわふわ。塩っぱさが優しい。
お澄ましは、ほんのり醤油がある以外は出汁の味。
洋食はほとんど食べたことがなかったですが、しちゅー、ぽたーじゅはコクがあって甘塩っぱさが際立ち。とまとやお野菜たっぷりのは、酸っぱさでびっくりしましたが……お米やパンが欲しい味でした。
しかしながら、やはり卵雑炊をたくさん食べたくなりましたので。
騰蛇様にお願いして、麦入りのお米を大きな椀に入れたもので出してくださいました。さらに、刻んだねぎも追加で。枯れていないネギを美しいと思ったのは、こちらでの生活のおかげです。
「……美味しいです」
卵でまろやかになることが前提なのか、味噌汁の味噌は少し濃いめ。でも、出汁との風味を損なっていません。卵とお米、味噌汁をかき混ぜても怒る方はいらっしゃいませんし……ひと口食べることで、もっともっとと思ってしまう気持ちも止めらません。
おかずも食べたいところですが、湯浴みでかなり穢れを落としたこともあり……ゆっくりお腹を整えるところから始めています。療育というものだそうです。
「もう一杯いるか?」
お優しい騰蛇様は、口を緩ませながら椀を受け取ろうとしていましたが。あと少し、と思うとお腹が痛くなりそうだったので、お断りしました。
これは食べ過ぎやこれまで食べて来なかった理由だけでなく。
身体の内側にも、穢れが溜まっていたのが宮腹に集中しようとしていたからです。このあと、横になってからその『抜く』作業を本格的に進めていくためですが。
「騰蛇。俺が片付けておくから、砂羽を寝所へ」
「……そうだな」
神将の皆様の方が、穢れを視ることに慣れていらっしゃいますので……私は素直に騰蛇様に縦抱きしていただきます。暴れて、変に穢れが身体を蝕んではいけないために。
「……お世話かけます」
「心配すんな。砂羽のお陰で、里に常駐させられてた俺らが動けてんだ」
お聞きしましたが、十二神将の皆様は沙霧様の式神。つまりは、このお屋敷の警護を任されるほどのお偉い方々でしたのに。あの都波と白蛇様方との因縁がひどくなるにつれて叶わなかったそうです。
「来たか。では、宮腹関連なら……添い寝は私だな」
白蛇様が寝る準備だと言わんばかりに、羽織と単衣でしたが。お美しいので、女の私でもときめきが起きそうです。
寝所へ寝かせていただきましたが、白蛇様がそっと添ってくださっただけで……穢れが管のように動き始めました!?




