第24話 まずは日常生活を
私の最初の『お仕事』と言うのは、肉体にたっぷりと溜まった『穢れ』を取り除くところからでした。
白蛇様へお仕えするよりも前に、まずは自分自身の身体を静養しなさいと……しっかり言われてしまいました。都波のあの家にはもう戻さないように取り計っていただけるので……まずは、己自身を大事にしなさいと。
それなのに、ですが。
「砂羽〜! 全身泡泡にしてあげる!!」
神将の中でも、女性の形をとられる方々に……湯殿でこれでもかと洗っていただけるのには、きちんと理由があります。私の穢れがお風呂で取れるのは……白蛇様や皆様が使われるこちらで『全部落とす方が効率いい』ということで。
騰蛇様や朱雀様のご飯を食べたあと、食休みしてから神将の方々に洗っていただく。
玉砂利のように溜まった『穢れ』は、白蛇様がお仕事に使われる。これを三日間繰り返してくださったのですが。
「……えぇえ? 砂羽??」
三日目の夜ご飯の時に、朱雀様にお会いしたのですが。とても不思議そうに私のことを見下ろされました。
「……何か、変でしょうか?」
湯浴みをたくさん繰り返し、ご飯もたくさん食べて寝て。夢物語のような生活を過ごすのが、本当に夢のようでした。
なので、何か不都合があっては皆様にご迷惑をおかけするのでは……?とお聞きしたところ。
違う違うと言わんばかりに、朱雀様は首を横に振られました。
「穢れにそんなにも生気を吸われていただなんて思わなくてさ? 肉づきもよくなって、愛らしく見えるよ。良かった良かった」
「愛らしい……?」
最初の湯殿でのお話でも、白蛇様から言っていただけましたが。鏡を見ても、神将の皆様の方がお綺麗では?と思うのでわかりませんが。
少なくとも、見苦しい姿ではないのには安心出来ました。
「砂羽。麦茶飲め」
騰蛇様から、冷たい麦茶をいただくのも日常になりつつあります。褒めてはくださいませんが、ぴりぴりした怒りを感じませんから……都波への不満は落ち着かれたのかもしれません。
穢れの話題が白蛇様から出た時には、それはもう雷が落ちる勢いで怒ってくださいましたもの。
「ぷくく。騰蛇は心配性だなあ? 別に取らないって」
「……うるさい」
上での御二方のお話がよくわかりませんが、冷たくて香ばしい麦茶は今日も美味しいです。
髪の水気ですが、穢れがまだあるので術の練習も兼ねて……呪言を唱えつつ、桶に全部貯めます。薄墨みたいな色ですが、やはりまだ穢れは残っていました。
それを太陰様が鏡を通じて、『捨てる場所』に捨ててくださってから。
騰蛇様の、特製のご飯がまたいただけるのです!!




