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第22話 わずかな綻び

「ほう? 封印に綻びが出たか? 癒しと言うよりも、浄化だが」

「……私の、術ですか?」

「軽い言祝ぎにて、行使出来たのだろう。あとで、白蛇様に報告せねば」

「はい!」



 騰蛇様からも、雑な封印と言っていただいてますので……ほころびとやらが出たのでしょうか。


 私自身が本当に持つ、『癒しの力』。


 異能とも取れるそれを、取り戻す機会がこれから増えてくる。嬉しいと思いましたが、複雑な気持ちにもなりました。この力を『道具』として利用するだけの彼らには、『心』とやらがありませんでしたもの。


 民草のため、と豪語していたはずですのに……結局は家と我が身のため。彼らから、砂羽()には何もありませんでしたから。



「であれば……態と封印をほどくのに『洗い物』をしようか」



 ゆっくりと廊下を歩き、案内してくださった場所は……天后様が玄武様とお食事を取られているお部屋でした。玄武様は寝ていると言うより……倒れていらっしゃるのでしょうか? 天后様自身は、まだ盃に注いだお酒を召し上がっていらっしゃるようですが。



「あらぁ? 太陰ぅ? 砂羽を連れてきてくださったのぉ?」

「酔いすぎだ。一升より飲んでいるな。……砂羽、この有り様を見てどう思う?」

「…………散らかって、いますね?」



 畳にはお酒が染み込んだり、お料理の何かが倒れた程度でしたが。ご飯がダメにはなっていないので、片付ければ元通りになる感じではありました。



「なら、『片付け』てみぬか? 先程の決意……これらへと向けてみてくれ」

「……決意」



 片付け場所は分かりませんので……『洗う』を思い描けば良いのでしょう。汚れた箇所を消し、綺麗な食器へと元通りにさせていく。言祝ぎについては、私は不勉強ですが……太陰様に認めていただけたので、口から出る言葉で代用してみます。



『洗い、清め』



 また鈴音が響き、青い蛍火が部屋中に広がっていきました。天后様や玄武様に触れた途端、おふたりは飛び上がらんばかりに体勢を変えられましたが。



「な……なんだ?」

「ま、まあ。わたくし……はしたない姿を」

「酔いが覚めて何より……さて、この火を」



 太陰様が、懐から大きめの丸い鏡を出されたと思えば。蛍火はすべてそちらへと吸収されてしまいました。



「ど、どうされるんですか?」

「ふふ。蛇には蛇、毒には毒。封印には封印……だが、白蛇様に伺った方がいいだろう」



 あざとい微笑みでそう仰るのですが……背筋が少し寒くなったのは気のせいと思うしかありませんね。学の少ない私でも、太陰様が何をされそうになったのか……少しだけわかりましたから。



「お? ここで誰か術使ったのか? えらく綺麗になっているが」



 騰蛇様がいらっしゃったのですが、少しお疲れ気味なのか……雰囲気が穏やかです。



「喜べ、騰蛇。雑務の使い方次第では、砂羽の封印もほとんど解ける」

「ほぉ? まさか、これ全部か?」

「軽めの言祝ぎを行使してのこれだ。おそらく、贄姫として我らに寄越したことを後悔させられるだろう」

「くく。いいな、それ。……ん? 袷が雑だな。自分で練習したのか?」



 ひとつふたつと触れていただいたのですが、ほんわかと心の奥が温かくなってきます。なので、礼を告げれば『いちいちいらん』と苦笑いされましたけれど。

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