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第21話 自活一歩手前

 白蛇様の『お世話係』のひとり……として、ですが。お部屋を『ひとり』でひとつ与えられるのは何故でしょうか。


 巫女姫だったあの家では一応寝所程度は与えられていましたが、今はただの小娘。穢れを多く受けていた贄だったそうですが。白蛇様方のお役に立てる存在として……このお屋敷に居てもいいのだと。


 着替えはあまり慣れていませんでしたので、白蛇様が『こいつに聞け』と愛らしい女性を連れてきていただきました。



太陰(たいいん)と。天一や天后が世話になったと聞いている。身の回りが落ち着くまで、教えてやるから心配しなくていい」



 凛、とした面立ちですのに愛らしさも感じます。異界の方々は、皆様美醜が整い過ぎて……自分への自信はどんどん無くなっていきます。ですが、ご飯をきちんと食べてから身を清めるのを繰り返すことが大事だそうで。



「よ……よろしくお願いします」

「固くならない……は、難しいか。ひとまず、下手でもいいから着替えの練習からしよう。贄を着飾る程度にしていた派手なものはしない」

「はい」



 寝る時だけは、単衣になるくらいは自分でも出来ますが。他はほとんど人任せでしたので。実際、太陰様から簡単に教わってみても袷がうまくいきませんでした。



「ある程度の慣れ……が出来たら、歩いてみよう。おそらく、砂羽は足の力が弱く見える」



 実際、その通りでした。数歩はよくても、長く廊下を歩くと軽く息切れをしてしまうほど。待つのは得意でしたが、『動く』については全然だったため。


 そして、自分なりに着込んでみたので紐なども解けそうでした。



「……赤児のようです」

「実際。贄の理由のためだけに育てたのだ。箱入りと聞こえはいいが、道具でしかないのに感情を与えても意味がない……か。度し難い」

「……怒られるのですか?」

「そうだとも。逆に、擦れていない砂羽は稀有だ。贄として教育を与えなかった逆が出たな?」

「……癒す力もまやかしでしょうか?」

「封印が解けたらわかる。今は基準となる身体作りからだ。何か食べたいものはあるか? もしくは……そうだ」



 くるんと、指で円を描き。光ったかと思えば、そこから湯呑みが出てきたのです。



「……そちらは?」



 お茶ではありませんし、牛の乳の飲み物のようにも見えません、つぶつぶしたものがとろっとしている感じでした。



「甘酒という。米を使って作ったものだから、正式には酒ではないが」

「……飲んでも?」

「もちろん。ぬるくしてあるから、すぐに飲めるさ」

「……いただきます」



 湯呑みは少し熱く感じましたが、飲み物は優しいとろとろで飲みやすく。ほんのり、変わった風味がありましたが甘くて美味しかったです。



「さて、近侍と言えば……砂羽は自分で掃除はないだろう。この暗い屋敷を明るくしてみないか? 我らも当然手伝う」

「はい。お手伝いさせてください!」



 少し力強い言葉が口から出ると、りん、と鈴の音のようなものが聞こえてきて。私の周りに青い光の輪が幾つか散らばると、湯呑みの中が綺麗になっていました。甘酒の残りが全然なかったのです。

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