第16話 こちらは女性の神将？？
案内していただいたお部屋には、とてもたくさんのお料理が並んでいました。膳ではなく、たしかこれは『食卓』というのは知識の片隅で覚えてはいましたが。
「素晴らしく愛らしいですわね？！ 白蛇様の式にて事情はお伺いしておりましたが」
「む。湯を浴びて穢れが抜け落ちたのだろう」
水色の御髪がお美しい女性と、濡れ羽のように長い黒髪の……殿方でしょうか？ 私の姿を見て、白蛇様のお言葉と同じような褒め方をしてくださいました。
「……砂羽と申します」
「砂羽ちゃんですわね？ 私は天后。白蛇様の身の回りを担当していますの。そっちは玄武で、この屋敷の護衛ですわ」
「……未熟者だが」
「そう言わずに。騰蛇から簡単に事情は聞きましたわ。たくさんご飯を召し上がってくださいな」
「あ……ありがとうございます」
いい匂いを辿れば、たくさんのお料理が。飢えに飢えていた私の体は、まだたくさん求めているのでしょう。しかしながら、一応『姫扱い』されていた身としては……がっつくのははしたないと思っておりますので耐えます。
「ほら、とりあえずこれ食え」
ですが、見透かされた騰蛇様からまた『おにぎり』を渡していただけました。当たり前のように、手の中に入れてしまわれたので……崩れる前にとかじりつくのも仕方がありません！ 美味しいですもの！！
ただ、中の具はお魚ではなく……とろっとしているのに甘辛くてしょっぱいものでした。とろりとしたのが、お肉の味に近いのですがお肉はありません！
「……美味しゅうございます！」
とろりとしたモノを見てみましたが、玉石の様に黄色くて濃い塊。
ひと口頬張れば、お米にとろっとしたのが絡んでどんどん味がまろやかで食べ易く感じる気がします。その繰り返しが楽しくて、一個食べ終わるのもすぐでした。
「軽く仕込んだ卵黄漬けだが。肉の味が好きなら……と作ったが、杞憂だったな？」
「らんおー？」
「ほぼ、生の卵。しかし、塩以外の調味料に漬け込むと味わいが違う」
玄武様、という殿方も召し上がっていらっしゃいましたが……ひと口で、というのは驚きました！？ 米粒をこぼさず……は食べ慣れていらっしゃるからでしょうか？
「……久しぶりの好物にがっつくな。もう一個くらい、砂羽に取っとけ」
「……ん」
「あ、いえ。私はだいじょ」
「良いですのよ、砂羽。貴女の気遣いよりも、肉体の心配をなさい？ 穢れは取れても、空腹は別ですもの」
箸で食べさせていただいたのは、お肉と野菜の細切りにした炒め物でした。甘辛いですが、少し風味の違う味付けと野菜の歯応えが楽しいです。
「……美味しゅうございます」
「わたくしも久しぶりの騰蛇手製の料理は楽しみですわ。おにぎり以外に何を食べましたの？」
「たくさん、お肉をいただきました……」
「魚は苦手ですの？ 興味があるのでしたら、是非この揚げ物も」
また箸で食べさせていただきましたが、かりっとした後にふわっとした歯応えが楽しいだけではなく。さっぱりとした味付けに夢中になりそうです！！
「……まともな食事してなかったのに、好き嫌い無しか。沙霧の料理は俺と近いからな？ 子孫としては相性が似てんだろ」
「雰囲気……たしかに、主に似ていますわね？ ですと、近侍の任が多い騰蛇の馳走が一番に近いのも納得ですわ」
「そうなのですか？」
少し畏敬の念を感じてしまう沙霧様ですが。お料理のお味が、騰蛇様と似ていらっしゃるのは驚きました。少し興味が出てきましたが、それでも騰蛇様のご飯は美味しいと思ってしまいます。初めて口にした、美味しいご飯だからでしょうか？
