第12話 女神?男神?
手招きしていただいた道に誘導していただいても、わかります。このお社はとても広い。都波の家として住まわされていた、あの家よりも確実に。
おぼろげな記憶でしかありませんが、赤子だった頃に歩き回った廊下などはこちらよりも狭かったはず。幾度も曲がり角を通りましたが、まだ長い気がします。
こちらの主様はとても高貴な御方なのでしょうか? お会いしておりませんのに、とても緊張してしまいます。
「白蛇様! 支柱の原因になった子どもを連れてきました!!」
ただ、沙霧様はお部屋の前に着いたと同時に……思いっきり、障子を開けられました。無遠慮過ぎて、障子が壊れそうな勢いなくらいに。
「わかっているが、うるさく開けるな!!」
凛としていて、力強い女性の声。母や都波にいた使用人らとは真逆で、己の強さがある方だと強く感じました。ですが、沙霧様の後ろにいるのでよく御姿が見えません。
「うるさくしないと寝ちゃうじゃないですか。僕の術式も今は必要ないようですし」
「……それはそうだが。ん? 肝心の子どもとやらは?」
「この子です」
すっと、横にズレていただいたことで御姿を外見することができました。雪のようにお白い玉肌に、ふんわりと羽根のようにほわほわしている金の御髪。左目は布を巻いてらしてますが、右は薄い水色でした。
御衣裳ですが、何故か殿方用の黒と白のお着物。もしかすると、この方は男性でしょうか? お胸を見てみましたが、わずかに膨らんでいらしたので女性だとホッと出来ましたが。
「お初にお目にかかります。……都波砂羽と申します」
ご厄介になるのですから、挨拶は必然。できるだけ腰を折ってみましたが立ちながらは久しいので少し背中が痛みましたが。
「そうか。私はこの社の主で、白蛇と呼ばれている。投げ込まれたと聞いたが、後始末はこちらで任せろ。……しかし、まだ贄姫を放り込む悪習が残っていたとは」
軽く撫でてくださるのは、此処にいらっしゃる皆様の癖でしょうか。不快には感じませんが、とても温かく思えます。
「僕が社を離れられるくらい力はあります。ただ、『荒神』風習は厄介な状況まできてるでしょうね」
「そうだな。私がこの状態を維持出来ているのも瀬戸際。……砂羽、少しこちらへ」
「あ、はい」
白蛇様の呼びかけに応じますと、ふんわりと抱えていただき。花のような芳しい香りで、つい寝そうになるくらいの眠気が来てしまいます。
「ふむ。食事もだが、まともに睡眠も足りていない。であれば、騰蛇。奥の寝所へ」
「了。砂羽、少し頑張れ」
「私はしばらく『上』に邪魔してくるからな。沙霧もしばらく忙しくなる。……仮宿として、存分に休め」
「騰蛇。他の皆にもここの食材使っていいって伝えてねー?」
「ああ」
何かやり取りされているのは、薄っすらと覚えていましたが。目を閉じていたい気持ちが強くなり、そのあとに起きた時は御簾の中の布団で寝ていたことが分かりました。
「寝て……」
「起きたか? 茶でも飲むか?」
御簾の外から、騰蛇様がいらしてくださったので頷きました。お盆には湯呑み以外に、まあるい何かがお皿に乗っていましたので……食べ物でしょうか? また寝てしまいましたので、どうしてもお腹が空いてしまいます!!




