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第10話 審神者のこども?

 皆様がご用意してくださる食事の数々に、初めてですが『満腹』を覚えた気がします。これまで限られた食事しかして来ないでいた、『巫女姫の食事』とはまるで違う。


 食後のお茶、というのも初めてでしたが。香ばしくて冷たくて美味しゅうございました。『渇き』が潤うような気分になれたのです。



「……ご馳走様でした」



 雑な食べ方をしてしまいましたが、どなた様も私を叱ることなく見守ってくださいました。御礼を申し上げたのちに、何故か柔らかいものが私の頭を包んできましたが。



砂羽(さわ)っちは、天一といっしょに暮らそー!!」



 お相手は天一様でしたが、何か畏れ多いお言葉を口にされたような? しかしながら、話そうにも柔らかい何かで口を阻まれてうまく動かせません。苦しくはないのですが。



「……あのね、天一? たしかに女の子同士がいいのはわかるけど! 正確にはお前違うでしょ!!?」

「だよな。最後の顕現した状態なだけだし」

「別で個室こさえるから、離れがいいよ。まずはひと息つかないと」

「……別、ですか?」




 朱雀様がおっしゃるお言葉もわかっておりますのに、また『ひとり』になるのに恐怖を感じました。違う、彼らは違う、と頭で言い聞かせようにも……知ってしまったこの温かい場所から離れたくない。


 だから、とどなたかにしがみついてしまった。放り出して欲しくないと訴えても困られるだけとわかっても。


 ひとりが、嫌で堪らなくて。あの暗い場所には帰りたくないとさらに手で力を込めれば。



「落ち着いて。僕らは君を案じただけだ」



 冷たい手を重ねられ、ほてった意識が落ち着いたように感じた時には。私はどうやら、騰蛇様に肩を掴まれていました。重ねられた手は別の方で、お顔を拝見しますと少し細い殿方がゆるく笑われているだけでした。



「あ、の……」

「大丈夫そうだね。朱雀、天一。支柱を見てもらえるかな? 僕は騰蛇ともう少しこの子と話をするから」

「……ん」

「……了」



 お二方が去られたあと、その殿方はぽんぽんと私の髪を撫でてくださいました。まだ冷たいですけど、手に感じたほどではありません。



「……離れていいのか?」

「少しだけなら。と言うよりも、離れることが出来たんだ。この子、どうやら僕の血族らしい」

「……それでか」



 何をおっしゃっているのか、よくわかりませんが。どうやら、騰蛇様方とは親しい関係の殿方のようです。私を何度か撫でられた後、じっとこちらの顔を覗き込まれましたが。



「……うん。この封印の施し方。雑だけど、あの家のものだね。どうやら、『埋め』に使われたんだろう。封印出来たら沈めるだけの『嫁後』として」

「じゃあ、お前の?」

「ただし、魂の波からしてほぼ同質。つまり、兄妹に等しいから嫁ぎは却下だね。僕の理由を知らなくて、勝手に埋めるのはあいつらの手口としてはいつものことだ」

「お、にい……さま?」

「だと思って。次代の審神者へと送られた妹よ」



 やはり、お言葉の内容はわかりませんが。とりあえず……私とこの方は縁戚のご様子らしく。けれども、理由があって『兄妹』のような関係でもある、と。


 ますます、頭が混乱しましたが。井戸へと巫女姫を投げ入れるのは私が最初ではなかったことを教えていただきました。



「えっと……審神者、については私ではなく?」

「僕のことだよ。霊力が殊更強い人間だったから、疎まれて閉じ込めようとした。君とかは、あくまでその贄程度。向こうには運が悪いけど、もうこの風習はやめさせようか? こどもを舐めたら、って思い知らせないとね?」



 簡潔にわかったことは、私はとんでもない霊力を持つ方の里へと来てしまったようです。驚き過ぎて、しばらく騰蛇様から離れるのが怖かったくらいに。


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