現世の蛹編 第六話
著者:根本鈴子 様@coconala
企画:mirai(mirama)
蘭と真白は一人と一匹、隣同士を歩いていた。
すると髪の長い赤い目をした長身のすらりとした少女が立っていた。
年齢は蘭と同じくらいだろうか。
二人は異様な雰囲気を感じ取り、振り返る。
この感じは……、いや、周りを見てみると、朱世蝶がひらひらとあちらこちらに舞っていた……!
「真白! こいつ、やばいやつかもしれない!」
「フニャアアア!」
その少女は二人の方を見て、口が、弧を描いた。
「あら、失礼ね。まるで人を、化け物扱いするかのように……」
朱世蝶が束になって渦を巻き、その嵐が蘭や真白を襲う……!
蝶の羽によって、蘭と真白は足や腕に切り傷を作る。
腕で顔を守りながら、それでも蘭はその怪異をしっかりと瞳に映した。
「私はね、ただ、この世界を、蝶々でいっぱいにしたいだけ……。なのに、どうしてそれを邪魔するの? あなた達だって、仲間じゃない」
ふわりと微笑みながら、いつの間にかその少女は蘭の目の前に現れ、片手を差し出していた。握手でも、しろと言うのだろうか……。
「わ、私は仲間なんかじゃない。真白だって、あなたとは違う!」
「そんなことはない。あなた達は、私の仲間。ね? 仲良くしましょうよ」
そう言ってにこにこ微笑みながら両手で蘭の左手を握った。
その瞬間、酷い痛みを蘭は知った。
「ひっ!」
「ほーら、身体が蝶々だから、私の仲間。そうでしょ?」
にこにこ笑っている少女。
欄の左手は、赤い蝶々に次から次へとその形を変えていった。
「い、痛い! 痛い痛い痛い!」
蘭は身体を、左手を切り刻まれていくような感覚が走り、痛みに悶えた。
「大丈夫、私と、ともだちになってくれたら、すぐにこんなの塞がっちゃうから。ううん、正しくは元の形に戻すことくらい簡単に出来ちゃうから、安心してね」
「ともだち? ともだちだったら、こんなことしないんじゃないの? ……ひあっ! 左手が、左手が……!」
ぽとりと、左手が落ちた。
傷口には、朱世蝶が群がっていた。
不思議なことに、血は出ていない。
しかし、痛みは、なくなったという感覚は、間違いなくあったのだった。
「朱世蝶、の、仲間なんかになったら、人間達が……、くっ、健やかに暮らせないでしょうがぁ!」
そう言って、蘭は右手で少女の頬を叩いた。
するとそこが朱世蝶の形になって、一匹、二匹と空を舞う。
「あらあら、せっかくおともだちになれると思ったのに……。ざーんねん」
そして、少女と蘭は戦いを始めた。
その間、真白はどこかのビルに入って行ったようだが……?