現世の蛹編 第三話
著者:根本鈴子 様@coconala
企画:mirai(mirama)
ひらりはらりと舞う朱世蝶。
その先には怪異が待っていると、人は言う。
「こっちか? こっち? どっちだと思う? 真白」
「にゃあ」
真白は前足を片っぽだけを上げて道の先を指し示す
「こっちだね! わかったよ! 真白!」
「にゃあーん」
二人は今、人間の女子高生に害を与えていた怪異を退治するべく朱世蝶を探していた。
その朱世蝶はいくつかに分かれて蘭達の目を欺く。
「あっちこっちへと紛らわしい……!」
そう言いながら、蘭は木刀を手にしていた。
そしてそれを指でなぞると、真剣に変わった。
「女子高生を永遠の夢に連れて行くなんて、優しいように見えて酷いものだわ!」
蘭はそう言って朱世蝶を斬った。
しかし、次から次へと湧いて出て来る。
怪異の本体を倒さなければならないらしい。
蘭と真白は朱世蝶を斬りながら怪異の本体を探した。
すると街中に朱世蝶が大量に出現し、その中心に害を与えられ、眠りに落ちてしまった女子高生と同じ姿をした怪異が居た。
「見つけた……っ!」
蘭は剣を振りかざすも、怪異はあっさりと避けて「うふふふ」と笑っている。
その声は耳障りなノイズとよく混ざっていた。
「待てぇ! このぉ!」
蘭は一心不乱に剣を振り続けるが、一向に怪異には届かない。
一方で怪異は余裕を見せて手を振りかざすとそこに朱世蝶を出して、まるで嵐のようにして蘭達に襲い掛からせた。
蘭はそれを避けもせずに正面突破を図る。
真白は蘭の背中にしっかりとくっ付き、離れない。
「女の子の夢を利用するなんて、そんなこと許せない!」
そう言って、蘭は怪奇と戦う。
怪異は一撃目を食らいながらも、まだ動けるといった様子で、傷口から朱世蝶が出てきてはいるものの、まだ人の形を保っていられるようだった。
「もっと可愛くなりたいのぉ……。おしゃれになって、喜んでもらうのよぉ?」
怪異は耳障りなノイズと共に声を出した。
恐らく、それは怪異が害を与えた女子高生の夢や希望と言ったものだろう。
「それは、あなたの夢じゃない! 怪異が、人になり替わろうなんて、出来っこないのよ!」
そう言って、蘭は今度こそ怪異の急所を剣で突いた。
すると怪異は身体の至る所を朱世蝶に姿を変え、形を保てなくなってしまった。
「まだなのに……。まだ、願いは、叶っていないのに……。私は女の子の夢だからぁ……」
怪異はそんなことを言いながら、一匹の大きな朱世蝶になった。
蘭と真白は、その大きな朱世蝶に手を触れる。
手を触れることによって、その怪異の記憶を覗き見ることが出来るからだ。
そこで見た怪異の過去とは……。