現世の蛹編 第二話
著者:根本鈴子 様@coconala
企画:mirai(mirama)
蘭と真白の出会いは不思議なものだった。お互い、朱世蝶を追いかけていたら、お互いにばったりと出会い、人型の少女の姿をした蘭と猫型の真白は何故だか息がぴったり合うようで、自然と一人と一匹は一緒になった。
「あんたは、真っ白だから真白! マシュマロみたいで可愛いし、ぴったりだね。そういえば、私の名前は蘭って言うんだよ。親も兄弟もいなくてさ、いつからかずっと街をぶらついてるんだよね。よかったら一緒に旅でもしない?」
蘭がそう言うと、真白は「にゃーん」と言って、蘭の隣を付いて歩くようになった。
「よしよし。真白。これからよろしくね」
これが真白と蘭の出会いだった。
一人と一匹は、境遇が似ていることもあるからか、仲間意識のようなもの、例えるなら友愛のようなものを感じていたのだった。
それから、街で朱世蝶の噂を聞き、蘭は「私のやるべきことはこれだ」と思い、朱世蝶の引き起こす怪異と戦ったり、惑わされた人々を元に戻すということをするようになっていった。
本人達は知らないかもしれないが、そんな姿を見ていた人達の中で、噂になっていた。
少女が猫と共に朱世蝶によって引き起こされる因果や縁を絶ち切るのだと。
それから蘭と真白はよく公園のベンチで座って日向ぼっこをしている。
朱世蝶を見かけては、それを追いかける日々。
でも、こうしてのんびりとした時間を蘭は真白と、真白は蘭と過ごすのが、嫌いではなかった。なんだかあったかい人と、一緒に居るというのは心が落ち着く。しかし……。
怪異のない時間はもちろん、寂しさを感じることもある。
余分なことを考えてしまうからだ。それだけでなく、自分の存在意義についてを知りたくなることもある。
真白もまた、何か考え事をしては寂しそうな表情をする蘭を見るのが辛いと思うこともあった。
「にゃーん」
「ん? どうしたの? 真白」
真白はその温もりに抱かれたくて、蘭の膝元で頭を擦り付けた。
「寂しいの? よしよし。私達は一生一緒にいようね」
そう言って、蘭は真白を抱き上げて頭を撫でた。
「にゃーんにゃーん」
「はいはい。可愛い、可愛い。真白はいい子だね。そうしていると、ぬいぐるみみたいだ」
そして蘭は真白を抱えて歩き出す。
今までとは違う、蘭と真白という一人と一匹で生きていく道を選んで。
「にゃー! にゃあ、にゃー!」
「んー? あ、朱世蝶か! 怪異かもしれないね! 行くよ。真白!」
そうして、一人と一匹は今日も朱世蝶を追いかけていく。