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貧乏領主になりました  作者: 木苺
    ペンペンと天海号
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花峡谷若者達のペンペン暮らし

花峡谷から来た若者達(お上りさん達)は、天海号の入港式を見たあと、

街の雑踏を避けて、ホビット寮の整備に精を出した。


 上陸休暇をとる天海号の船員達を宿泊させたり

 花峡谷から来る熟練航海士たちを迎え入れるために。


外から見て 土手の中に住居があると気づかれないように配慮しながらも

窓から風や光を採り入れるために、窓枠に絡みついた植物などを上手に除去したり

部屋の掃除をしたり。


自分達が使う部屋の掃除は 自分達の到着前にフローラとウマイヤが済ませてくれていたが、

これから来る予定者の分の部屋の掃除は手つかずであったから。


(セバスが私の年賀に付き添って留守にしている間、ウマイヤはフローラの助手として雑用を勤め

 バッキ―のパン屋は アルバイトを増やしてバッキ―が一人で切り盛りしていたらしい。

 といっても ウマイヤも何かと手伝っていたようだが)



さらに、バッキ―とウマイヤの手伝いもした。


なにしろ ペンペンの町に外来者があふれかえっていたので、飲食業は大繁盛どころか調理場が不足してしまったのだ。


それゆえ一般の人々が、自宅の台所を使って料理したものを、玄関先で売っても完売御礼状態。



お上りさん達は、天海号の入港式に集まった群衆に圧倒されて人酔いしてしまったので、式典後はそうそうに天河館にもどった。


そして 花家の若者達の引率をしていたウマイヤからのお願いを受けて

天河館のキッチンをフル稼働させてパン焼きとハンバーガー作りに励んだ。


 クッペを効率的に焼くのは、花家の面々の得意技である。


 さらに、前回ペンペンを訪れたイモの話を聞いて

 すでにバンズとパテの焼き方を習得していたのだ、花家の若者たちは!


 だから 食材さへあれば、基本のハンバーガー(トマト・レタス・パテ)を作ることもできた。 


それらを、バッキ―が自分のパン屋で売って売って売りまくった。

さすがに こうもお客が立て込んでいたら、

販売品もクッペとハンバーガー&水限定となったが

 それでも 飛ぶように売れた。


天河館でパンやパテを焼く若者達の腕前を見たウマイヤは、

最初に焼きあがったパンをバッキ―のパン屋に運び込むときに

2人の若者もいっしょに店へ連れて行き、

そのままバッキ―店の付属キッチンでもパン焼き&調理をさせた。

(バッキ―店付属キッチンのスペースは限られているので、働ける料理人もお二人様までなのだ)


◇ ◇


ペンペンの町に押しかけていた人たちが、家路につき 

ペンペン町の特需が一段落ついたころには、

ペンペンの住民達も、客商売に疲れ果て、自分で 自分のために調理するのも面倒な気分になっていた。


そこで 街の人たちは ペンペンに元からあった飲食店にどっと繰り出した。


「いやー 特需対応で疲れているのは 僕たちもおんなじなんだけど」


 ケイタ―家の若様は「臨時休業」の張り紙を手に持って表に出たら、

 店まで食事に来た町の人達と出会ってしまい、悩んだ。


それでも「いつも来て下さる町の人があっての商売」の家訓に従い

臨時休業の予定をとりやめて、

まかない定食」限定で商売をすることにした。


 いつものメニューと違って、「賄い食」ならば、より多くの人に食事を提供できるからという理由で。


それは 薄利多売で儲ける為ではなく、単純に 竹林省の公務も務める家として

イベントに参加した人々をねぎらわねばならぬという責任感からであった。



 老舗ケイタ―店ともなれば、町全体が特需景気に沸いているさなかであっても、品質を落とすことなく 定員いっぱいまでの客しかとらずに いつもの料理を提供していたので、

従業員は休みなく働いて疲れ果てていても

店としては 通常の「大入り」程度の儲けにしかならなかった。


そのあたりが 特需にあわせた乱売でがっぽり儲けて、観光客の減少にあわせてさっさと臨時休業を決め込んだ「オカミの店」とのちがいでもあった。


だから、ケイタ―店では、お疲れモードの板前さんたちは休ませて、

代わりに家族と、住み込みの見習いたちが中心となって「賄い食」対応での営業とした。

 町の人々に 栄養バランスの取れた料理を提供して、

 人々の疲労回復に役立つ為にと。

 

そういう公徳心の強いケイタ―家で、調理人としての心得を学んだウマイヤとバッキ―であったので、


いつも以上に多くの住民が外食を求め

しかし 庶民的な小規模の飲食店は軒並み臨時休業を決め込んだペンペンの町で


バッキ―は いつもよりもテラスでの営業時間を伸ばし、

1日中モーニングセットとランチセットの特別販売を行なった。

 それを支えたのが 花家の若者達であった。


一方、特需期間中は、道が混雑していたので給食配達サービスを休止して

いつもの利用者の方々には 街で臨時営業をしている「にわか飲食店」を利用してもらっていた。

 なにしろ お隣さんもおむかいさんも そろって飲食物の販売をやっていたら

 わざわざ給食サービスを受ける必要ないだろうということで。


(福祉事業でもある配食サービスを担当していたアルバイトの人たちも

 その期間中は 一般の店でアルバイトを猛烈に頑張って、より多くの臨時収入を得ることができた)


そして 特需景気が去ったあとの1週間は、いつものアルバイター達にはそのまま骨休み休暇を取ってもらって、

代わりに花家の若者たちがボランティアとして宅配業務に携わった。


おかげで 花家の若者達は「天河家の新人さん」として 街の多くの人達から顔を覚えられた。


天河家が 公益のため・福祉事業のために 臨時の手伝いをどこかから連れてきて

必要がなくなればその人たちがどこかに消えてしまうことに慣れているペンペンの人たちは、

花家の若者達のことも このようにしてすんなりと受け入れてしまった。 



花家の若者達も、ペンペンの活気に押し流されるようにして

こうした体験を楽しんだ。


もともと ハレの日の共同作業は、心が浮き立つものであり


知らない町で 地図を片手に配達するのも、探検気分で面白かったから。


 なにしろ フローラが作った地図は、精密で、

 花峡谷の者達は 地図を読むことにも()けていたので

 人に聞きながら知らない町をさまようよりも、

 地図を見ながら 街並みを把握していく方がよっぽど安心できたのである。


さらに「バッキ―のパン屋さん」に食べに来た人たちは、

互いに顔なじみで、和気あいあいor静かに食事を楽しむタイプの人達だったので

余計な気遣いなく接客できたのも若者達にとってはありがたいことであった。


さらに 花峡谷の若者達は、天海号のリネン類や制服の洗濯・繕いなども引き受けた。


なぜ ほかの町のように 街の人たちの中から洗濯屋を作らなかったかと言えば

竹林省は、新領主による改革により、目下(もっか)好況を呈しており、

失業者の無い状態。


さらに このところ ペンペンは 天海号を見に来た人々でごったがえしたり

その対応に町の人達は てんてこ舞いの末 疲れ果てていたので

とてもじゃないが 洗濯アルバイトをやる余力がなかったのである。


しかも 花峡谷の人間にとっては、長期航海から戻ってきた船のリネン類を洗ったり

船員達の服の手入れは 村を挙げての行事(お仕事)だったので

その作業場所が 花峡谷になるか、ホビット寮になるかの違いでしかなかった。


最初、セバスたちは そこまで若者達に押し付けてよいのかどうかと迷ったが

「花峡谷に比べれば、ホビット寮の方が設備が整っているから 大丈夫ですよ~」と言ってもらえて

ほっとした。


「洗剤を仕入れて 花峡谷まで持ち帰るよりも、ここで洗濯を済ませたほうが楽だし~」

とイモはこそっとつぶやいた。



休暇中の船員達も 自分がその日に脱いだ制服の洗濯とつくろいなどは、花峡谷の若者達と一緒に行なった。

もともと 天海号の船員達と花峡谷の若者たちとは顔見知りの仲であったし

船員にとっては、自分達の衣類の手入れは日常の一部でもあったから。



※ 土日休日は 朝8時 

  月~金は  朝7時の1回投稿です

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