イントロダクション
ここでは 第二部の全体の構想を示しましたが
次話からは、第一部の最後、天海号がペンペンに入港した日から始まります。
天海号での初クルーズを終えて入港したのが今年の春
そして16歳の誕生日を迎え、再び冬がやってきた。
今 私は竹林省領主としての仕事を覚えるのに必死だ。
フローラ大臣のご指導のもとで。
一方 海運会社天海は、今年の冬は、近距離クルーズ「冬の旅」を売り出すことにした。
速い話が、海運業を展開するには、港湾整備と港と街をつなぐ道路の建設が必要、それには資金が必要、
しかし天河家には金がない
ゆえに まずは、海運会社「天海」の資産を使って、金を稼ごうというわけ。
◇ ◇
海運会社天海の資産と言えば、天海号。
天海号は大型船である。
貨物と旅客の両方を運ぶことのできる仕様である。
昨年の、天海号初クルーズ、竹林省領主凱旋航海(と巷では呼ばれている (;^_^A)であきらかになったのは、
①船旅への人々のあこがれ・興味・関心の強さ
②目下のところ船による貨物の運送需要がさほどないというかちぐはぐなこと。
速い話がヒノモト国北部、ジョーダンから北の岬に至る西海岸では、
港町間の運送所要時間が 高速馬車と天海号ではほぼ一緒なのである。
それゆえ 大量の貨物を一度に運んでしまいたいという希望はあるのだが・・
それは 主に冬の王都参り(国王へのお年賀)関連であり、
これまでも 陸上運送でやりくりしてきたので、
船便に対しても 顧客のコスト意識が高い。
つまり 新規参入のうまみが小さいということ。
やるなら 小型船でちまちまやるか、中規模船で安定経営路線を目指すか、
いずれにしても区間限定で運送業をやったほうがいい。
しかも現状なら、海運会社天海の直営事業ではなく、
チェーン店方式で 地元の個人船主をまとめていく方が初期投資が少なくすむ、
というのがタンタンの見解であった。
(この事業についての詳細について語るのは後日にしよう)
一方東海岸航路といえば・・・
沿岸領主は貧乏だ。
沿岸の町は 貧困型自給自足タイプだ。
早い話が、わざわざ物資を運んでまで営利展開するほどの余力がないのである。
だから ギリギリ必要なモノは他所から買い付けるが
何かを売り買いして大儲けを狙うほどの余力がない。
ゆえに 貨物運送に関する海運需要がほとんどない><
土地の生産力に余力にある竹林省にしても、ハテンから船荷を出して他領で売りさばいて 竹林省も海運会社天海も共に収益を上げるには時期尚早。
なぜならインフラ整備ができていないからw
港湾設備だけでなく、生産地から港までの道路整備も含めて。
(生産地ー港ー消費地をつなぐ陸上運送費用もバカにならないのだ)
現状では
産物を他領に出荷する竹林省の生産者が儲けるためには、
無理なく生産できる範囲=少量を、安い船賃で輸送しなければいけないので
海運会社天海が赤字になる。
◇ ◇
一般論として、海運業・貿易業で儲ける為には、
往復の航路で大量輸送をひきうけ、運賃で儲けるか(=船会社として儲ける)
それぞれの港で まとまった量を安く仕入れて高く売りさばく商売で(=貿易業者として)儲けなければならない。
その為に、欧米では、
プランテーション方式で収奪式農業(低賃金・単一作物大量生産で 土地と現地人を荒廃させる)を行ない仕入れ代金を無理に押し下げ、
そこに自国の工業製品や麻薬を無理やり買わせて、押し売りで儲けつつ、買い付けに行く片道分の船の移動コストも浮かせ、
奴隷の売買により、仕入先の生産コストを下げさせてさらに安く仕入れると同時に、
買い付けに行く船に「奴隷」という商品を運ばせて、仕入先に押し売りして儲ける。
そして、船員には、ラム酒とたばこをあてがい、アル中・ニコ中にして、劣悪な労働環境で使役してきた。(=船を動かすコストの低減)
さらに平成日本のように、メディアを上手に使えば、安く仕入れた粗悪品を大量に上手に売りさばいて儲けることも可能である。
言い換えるなら、竹林省の人間も他領の顧客も海運会社も安定した事業・生活が送れるような「まっとうな商売=適正価格での取引」をするには、インフラ整備が欠かせない。
夢の世界では、
利権の為に公共投資を利用する輩が跋扈し、
行政も政党交付金(国税からの支出)を得るために議員数を増やしたい政党の意向に沿って、
議員や党の後援者に資金(財源は税)を流すための公共投資しか行なっていなかったが、
本来の公共投資によるインフラ整備と維持とは、
あくまでも その地域での、適正価格での取引を実現させ、
売り手・買い手・運送会社・労働者・事業主のいずれにもしわ寄せすることなく、住民全体の生活を安定させる為の手段に過ぎないのである。
◇ ◇
竹林省としてのインフラ整備費用(天河家負担)
寄港先の港湾などの整備事業に天海社が投資する資金
VS
天海号の収益=安定した海運業の続行
竹林省生産者の利益⇒竹林省の税収の増加
天海社が他領で展開する事業の収益=出資者としての天河家の利益
(⇒竹林省領主として使える予算の増加)
のバランスがとれるのに何年かかるか?
初期投資を回収して黒字転換する時期をいかに早めるか?
この見極めができるか否かが、官営事業の成否を決めると言っても過言ではなかろうか。
(連結決算というのは、赤字部門隠しや不正蓄財の手段ではないのである!!
むしろ 共存共栄による安定した緩やかな上昇を実現するための俯瞰を得るための手段なのだ!!)
しかも 竹林領主としては、他領からの人やモノの流入により竹林省内が荒れることがないように目配りもしなくてはならない。
◇ ◇
北の岬~ルンに至る東海岸一帯には、
締りよく自給自足する中で そこそこ小金を貯め込んだ富裕層はいる。
富裕層は娯楽に飢えている。
だが、質素倹約しなくては貯蓄もできない自然環境なので
娯楽を実行するにあたっての制約も多い。
つまり、資源を浪費すれば たちまちその地域一帯が飢えることになるほど、
ヒノモト国東部の土地そのものの生産性が限定的なのである。
だから 娯楽の実行もまた限定的にならざるを得ない。
東海岸の領主達は 王都への年賀の旅でリッチな者への憧れだけはしっかりと焼き付けられている。
しかし 見栄をはれるだけのものがない己の生活ゆえに悔しさもため込んでいる。
彼らを支えているのは、堅実に生活をしてきた己の生きざまに関する誇りだけだ。
というわけで、南のはてから発進する天海号クルーズに東海岸の領主達が乗船して天海号の定員を埋め尽くせば、
次年度のモードを「クルーズ体験」にして 東海岸の領主達が栄光をつかむことができるかもしれない!
これまでは、天河家領主が年賀に参加しない年は
常にその年のモードを 富裕な北・西海岸領主達に握られていたのだから、
「今こそ モードの栄光を東海岸の領主達で分かち合おう!」と
東海岸の領主達は燃え上がったのである。
もちろん ここに至るまでには紆余曲折があった。
それを これから 振り返ってみようと思う。




