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貧乏領主になりました  作者: 木苺
第5章 ハテン~領都ペンペンへ :調査船に変身!
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閑話 大根と大根葉 (買い付け裏話①)

いつだったか、船内で 大量の大根の葉と(かぶら)の葉を刻んで乾燥させた。


それが今や、船内食として大いに役立っている。


刻む前に 汚れ落としのために海水で洗ったので 少ししょっぱい。

 それゆえ ゴマとまぜてふりかけにすると「ゴマ塩」っぽい塩加減でおいしいのだが

 塩分取りすぎになりはしないだろうか?と気になる。


それはともかくとして、ふりかけご飯を食べながら、ふとつぶやいた。

「それにしても 突然現れた あの大量の大根葉と蕪の葉っぱは何だったんだろう?」


「それはですねぇ~」とタンタンが話してくれたのが ↓


◇ ◇


海運会社天海では、大根やかぶらを購入するときには 実と葉の両方を購入する。


もともと小規模農家では、大根や蕪は枯葉を除いたあと、軸の部分を握ってぐいと引き抜き、その軸の部分で束ねて、近隣の村へ売りに行っていた。


そして遠くの町で 大根を売りさばくときには、軸の部分を切り離し

大根本体だけを箱詰めにして出荷していた。

 もっとも とれたて新鮮大根ですよとアピールするために、1本だけ葉つき大根を見本にもっていったりもしたが。


漬物にするために 大根を干すときには、軸の程よい場所を縛って、その結びめの所で振り分けにして竿にかけたりもした。


つまり 天河領以外の農家では 大根葉を 売り物になる野菜とは考えていなかった。


最も飢饉のときには しっかりと大根の葉も軸も食べたが

逆に言えば ふだんは、大根や蕪の葉を食べるのは貧乏くさい話だと思っていた。


だから、天海の者が 優良農家との専属契約を結ぶために 港近くの農家の視察と買い付けに回った時には、大根葉も欲しがるとあきれられた。

 「やっぱり 竹林省は貧乏たれだね」とバカにする者もいた。


そういう農家は相手にせず、きちんと農業を営み、大根葉や蕪の葉が栄養たっぷりの野菜であると理解して、でも周囲の目もあるからとこっそり自家用にそれらの葉を食べている農家を選んで 大根の葉と大根本体の購入契約を結んだ。


「葉つき大根を買えばいいのに どうして 大根本体と葉を別々に買おうとするんですか?」農家さん


「葉っぱ付きだと、時間がたつにつれて 大根本体の栄養が葉っぱにとられるだろう。

 それに 大根本体だけを袋詰めにしたものを買った方が 保管も運送も楽だ。

 うちは まとめて買って 航海中にゆっくりと消費していくんだから。


 一方 大根や蕪の葉は、野菜としてまとめて買えば 必要な分だけ仕入れて

野菜として保存して せっせと食べるさ。


 葉つき大根として購入してから いちいち切り離したり詰めなおしたりってめんどうじゃないか。


 うちは まとめ買いするんだからさサービスしろよ。


 それにオタクだって、今まで捨ててた大根の葉まで うちにまとめ売りできるんだからお得だろうが。

 知ってるんだぞ、お前たちが 大根本体だけを港町に出荷して、葉っぱは捨ててたことを。」天海社員


「いいでしょう。村で葉つき大根を売るのと同じ値段で、

 葉と大根を切り離したものを売りましょう。

 どっちみち 運送はそっちがやってくれるので、うちは村まで売りに行く手間賃分だけ 得になりますし。」農家さん


「言うねぇ。

 大根の実だけまとめ介していく仲介屋は、まとめ買いしてやるんだからと言って、

 近隣の村で売るより1割か2割安く買っていくことも知ってるぞ」天海社員


「まいりました。だったら よそで余っている葉も おまけしましょう」農家さん


「おいおい 欲をかくんじゃない。

 俺たち天海社の人間が、まとめ買いをするからと言って買いたたきもせず


 農家からは農産物だけを購入し、

 運送には 運送の専門家を雇って賃金を支払うのは、


 働いた者に応分の賃金を払って、

 庶民が己の労働に見合うだけの収入を得ることにより、

 働き者一人一人の暮らしが安定するように願う竹林領主様のお考えに従っているからだ。


 おまえが 近隣の農家から安く買い付けた野菜を俺に転売して儲けようなんて考えは捨てろ。


 仲介者が 他人の労働の成果を奪って甘い汁を吸うことは許さないという厳しいお考えをお持ちの竹林領主様に 俺たち天海の人間は 雇われているんだ。


 俺たち天海社員の仕事は まっとうな農家から適正価格で農産物を購入し

 まっとうな運送屋を育てて その働きに見合った運送料を支払うことなんだ。


 転売屋を儲けさせたり、他人を低い賃金で雇って その労働力を搾取して農産物を売って儲けるような悪徳地主まがいのことをする奴とは契約しない。


 俺をだませば この契約書に書いてあるように、お前には厳しい罰が下るぞ。


 なにしろ うちの社長は、ヒノモト国すべての領主からの無期限信任状を得ているんだから、

 うちの社との契約を裏切ることは、お前が お前の領主を裏切ることに等しいんだからな」

  きっちりと、農家が欲ぼけないように、くぎを刺す天海社員


と言った具合に 話がまとまった。


蕪についても 別の農家と似たような感じで話がまとまったのだが、

蕪本体は 大根とちがってあまり日持ちがしない。


だから 蕪の実はどちらかと言えば 港町で働く天海会社の従業員用の食堂(職場では昼食のみ職員に実費販売している)で消費して、葉っぱだけ 野菜扱いで船で使うことになった。


やはり 天海会社に雇われていても、天河家ゆかりの者でなければ 食に関する考え方に妙な偏見をもっているから、そこは刺激しないに限る。

 いらざる悶着は不要だ。


というわけで 今日も元気に 天海社の社員=天河家ゆかりの者たちは

各種手配に あちこち駆け回っている。(たぶん)


◇ ◇


「なるほどぅ。

 

 ところで タンタンは ずーっと船に乗っていたのに、どうして そんなことを知っているの?」


「それはですねぇ、各地に天河家の連絡網が張り巡らされているからです。


 伝書係は 飛脚のように足が速いですから。

 リレー方式で 報告書を運びます。


 そもそも 天河家ゆかりの者達が、近年収入減で苦しんでいたのは、


 先の御領主様がなくなり、お世継ぎ様が領主に就任されるまでの間、

  フローラが領主代行として最低限の活動をして お家を維持してきましたが

 ヒノモト国全体に広がる事業をすべて いったん中断してしまい

 大量の失業者ができたことも 原因の一つなんです。


 それで 今回 新しく御領主様が就任なされてからは、

 領主交代時のダメージを減らすために、天河家の事業を 海運会社天海と言う形で 発足して、

 御領主様を社長に据えたんです。」タンタン


「それが 次のお家騒動になりませんように!」私


「どうして 火種になると思うのです?」セバス&タンタン


「だれかが 領主でなくても敏腕家が社長になるべきだ!とかいいだしたらどうするの?

 実際 領主不在時の 領主代行の権限を拡張するために 社長制を取り入れたのでしょう?」


「その点に関しては 社長は領主、領主不在時には 領主が指名した者を社長とする。

 領主による指名なき時には 領主代行が社長となるって 明記しているから大丈夫です」セバス


「そうなのかぁ。」


「それよりも お嬢様が 領主として 長生きして しっかりとした時期領主に引き継いでくださるのが一番です。


 そのためにも まずは 立派な御領主様となられますように!」セバス


「はい」


「歳の順番で言えば この船に乗っている者の中で 最期まで残るのが お嬢様なんだから

 私たちの分も しっかりと後を継いでもらわなくっちゃね」シノ


「うへぇ、責任重大!

 っていうか シノは 自分の跡継ぎをつくらないの?」


「どっちかと言うと 領主の側仕(そばづか)えとか護衛役ってのは 独身のままが多いからねぇ。


 私が安心して結婚できるくらい お嬢様がしっかり育ってくれなくては

 子作りなんて無理だよ」シノ


「プレッシャ~!」思わず叫んでしまった。


(あれっ? でも シノって南の天河家の棟梁じゃなかったっけ?????

  あっちの跡継ぎは どうなってるんだろう??)

 

※ 土日休日は 朝8時 

  月~金は  朝7時の1回投稿です

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