綱渡り
(補注)
本話から、カクヨムでも未公開部分となります
客船から調査船に転じてから 見張りの仕事が増えた。
①海の色の観察と記録
②魚群や 飛び跳ねる魚の観察と記録
③海岸線の観察と記録
④河口や川筋を捜す
①②は将来の漁場候補の目安とするため
③④は補給村候補地を捜すため。
私は 新鮮な空気を求めて 見張り台にのぼることにした。
高い所に上るのは怖かったけど 船酔いの恐怖よりは はるかにマシ。
そして せっかく見張り台に上るのだからと
帆柱と帆柱の間に張り渡されたロープの上を歩いて移動する練習もさせられた。
「それって クロストリーズの上を歩いたり、
クロストリーズの下に張渡したロープを歩く練習だけではだめなの?」
最初に綱渡りの練習を命じたセバスに尋ねてみた。
コチやキョーシローの指示に口ごたえはしないけど(船の掟)
セバスは まっとうな時も彼の思い込みの時もあるから、異議申し立てもアリなんですよ、私的には。
「領主ともなれば 何が起きるかわかりませんから。
侵入者から逃げるために 屋根から屋根へと飛び移ることも
どこかに忍び込むために 綱渡りをすることもあるかもしれません。
その時の為の訓練です!」セバス
シノは ニコニコと笑い キョーシローは呆れた顔でシノを見ていた。
もしかしたら 彼は心の中で「天河家の棟梁と言うのは、シノビの棟梁なのか?」と思っているのかもしれない。
いや、そう思ったのは私だけかな??
最初のうちは命綱をつけていた。
2本の命綱の先には それぞれ丈夫な金具がついている
移動するときには、1本の命綱を外して今までよりも前方に金具を付け替えて、
後方につないでいた金具を外して前進。
さらに前方に予備の命綱の金具をつけてから、今まで使っていた命綱の金具(今では後方になっている)を外して
といった具合に 2本の命綱を交互に付け替えながら前進する
この2本の命綱の使い方については いろいろな流儀があるらしいが
あの時、教えられたのはそういうやり方だった。
自分の腕の長さにあわせて 命綱を固定する場所が変わってくるので、
私の場合 頻繁に金具の付け替えをしなくてはならず かえって怖かったです。
「命綱をつかわず さっさと移動をすませて 目的地に滞在する間だけ命綱つけときたい」とぼやいたら
「事故というのは 命綱を外している間に起きるものなんです」とセバスに叱られた。
それにしても 綱渡りって サーカスみたいじゃない?
それに どうせ 船で練習するなら、綱渡りじゃなくて、
ターザンや 海賊みたいに ロープにぶら下がって、隣の船に乗り込むみたいなことをしたかったよう。
並走する船があれば そういう練習もできたかな???
※ 土日休日は 朝8時
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