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貧乏領主になりました  作者: 木苺
    領主 ことはじめ
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ケイタ―さんとウマイヤ

領都に入った。


領民たちは 特にお辞儀をするでもなく、好奇心いっぱいで見つめてくる。


道行く人達は 先ぶれをせずとも 私達が通りやすいように脇によけてくれるから、

それなりに気を使ってくれているのかな?


耳穴に入っている送受信機から「その通りです」とセバスチャンの声が聞こえてきた。


この送受信機は 骨伝導を利用して、小さなつぶやきもきっちりと拾って発信してくれる。

しかも電波帯を厳しく絞り込んだ設定が可能なので、2人だけの内緒の送受信も可能だ。

しかも イヤホン型だから 耳に髪を被せると 装着していることが周囲には全くわからない。



話をもとにもどそう。

沿道の人々は 自主的に脇によって道を譲ってくれるが、皆 まじまじと馬上の私をみつめては 互いにささやきあっている。


中には 建物の中に飛び込んでいく人もいる。


人が飛び込んだ建物からは 他の人が飛び出してきたり、窓を一杯に開いて人々が鈴なりになって私を見に来ているので・・


手を振って笑顔を振りまいてみた。


私の笑顔を見てぎょっとする人もいる。

笑顔で手を振り返してくる人もいた。


「よそでは領主が笑顔を見せるのは 人を処罰するときが多いようです。

 うちの前領主つまりあなたのご両親は 領民から親しまれていたので、

 笑顔で手を振り返してくる人々は その頃のことを覚えている人ですね」

セバスチャンが解説してくれた。


・・


まずは 領主就任披露宴の仕切りをやってくれたケイタリング業者のケイタ―さんのお店に行った。


昨日のレセプションの切りもりについてお礼を言った。

続いてセバスチャンが支払いに来たと言うと奥に案内された。


社交辞令は店頭ですませるのに、ビジネスだとわかると途端に奥の部屋に通されお茶まで出てくる

(笑)


セバスチャンが支払ったのは特別金貨1枚。

この特別金貨というのは、領主御用達&信用状のような効力があるそうだ。

それだけに この特別金貨を売り払ったり紛失すると、二心ふたごころありとみなされ処罰されることもあるそうだ。


「この度はお引き立ていただきありがとうございます。

 これから3年間は全品無料サービスをお付け致します。

 そのほかにも 何なりとご用命ください」とケイタ―さん。


「料理番を雇う予定だが、心当たりはあるか?」とセバスチャン。


「3人ほど心当たりがあります」と紹介されたのが


①領都1のパン焼き名人と異名をとるおばあさんの孫娘バッキ―18才。

 パン焼きの腕は可もなく不可もなくだが、経営のセンスがあるので

 ケイタ―さんとしてはその将来性を期待して息子の嫁にと考えたこともあるのだが 齢の差があるので断念したとのこと。


②一膳めしやの女将「おかみ」40才

 とにかく料理がうまい。やりくり上手で人あしらいもうまい。

 早くに夫をなくし それ以後寡婦として明るくたくましく生きているそうだ。

 それゆえ後妻にと望む男たちも多いようだが、本人は今の生活が気に入っているらしい。


③ケイタ―さんの店の調理人ウマイヤ30才

 料理の腕だけでなく 食材の目利きと仕入れの腕も確か。

 経理もできるので 支店を出すならぜひとも支店長にしたい人材だが、いかんせん竹林県の規模では本店のみで十分にまかなえ、近隣県もパッとしないので 当分支店設立の予定はない。

 しかも ウマイヤと同じ年のケイタ―さんのむすこが彼をやたらライバル視しているらしい。


「つまり お家騒動回避のために ウマイヤを外に出したいが、ライバル店に引き抜かれるのは困るということだな」とセバスチャン。


「さようでございます。

 息子の嫁とあれこれございましたものですから、ウマイヤの為にも 外に出たほうがその才能を伸ばせるのではないかと。」


「ふむ」


「ウマイヤを引き取っていただけるのなら、この先もケイタリングや人材派遣など

 さまざまな分野でお役にたてるかと」


「それは だれがだれの役に立つと言う意味かしら?」私


「もちろん ご領主さまの為に 私も私の店も ウマイヤも協力すると言う意味でございます。

少なくとも 私の忠誠心はお約束します」


「ふむ」セバスチャン


「ねえ 料理というのは互いの相性もあるから 一度食べてみたいわ」私


というわけで、ケイタ―さんの厨房に行き、見学かたがた まかない食を頂くことになった。



通常まかない食というのは見習いが作るのだが、今回は 特別にウマイヤが私達の分を 店の者達の(まかな)い食と同じ材料で作ってくれた。

 それは、いわゆる「お魚定食」だった。


「領主さまは 薄味がお好みとのことでしたので 汁物の塩分は控えめに

 キノコの軸を多めに使ってうまみを引き出しました」


「セバスチャン殿の焼き魚には塩味を利かせてしっかりと焼き上げまたが、よろしかったでしょうか?」


「なぜ それが私の好みだと思ったのだ?」セバスチャン


「昨日、数種類用意してあった魚料理の中から召し上がったご様子から」


ウマイヤの推量がセバスのお気に召したのかどうかはわからないが

ウマイヤの料理は確かに おいしかったです。


ウマイヤは毎朝 魚河岸(うおがし)に仕入れに行き、そのあと市場で野菜類を購入するとのこと。

明日の市場見学の案内は ウマイヤに頼もう。

※ この続きは、明日1月22日(日)の朝8時と夜8時の2階に分けて 数話づつ公開します

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