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貧乏領主になりました  作者: 木苺
     東海岸 (北の岬~トメ)
56/123

洗濯

船での私の日課

 起床と身支度までは もう話しましたね。


東航路にはいってから、船内では Tシャツ短パン、地下足袋です語すことが増えました。

 地下足袋って 慣れると快適です。

 優しく足を包んで 衝撃から足底やつま先を守ってくれる。


 滑らず・軽く 足にフィット


セバスは運動靴

ピピ・ララは最初のうちこそ靴を履いていたが 今では地下足袋派です。


難点は洗濯。

 ほとんどは 寄港時に超特急で洗濯してもらっている

 だって 真水は貴重ですから。真水で洗濯したければ陸の上で。


寄港すると 船員たちは積み荷の上げ下ろしや、補給作業で大忙し。


一方 ピピ・ララとタンタンは 特別船室の汚れものに最近ではキョーシローの私服までまとめて持って(おか)の洗濯場に突撃

 大車輪で 洗って洗って洗って、乾かすのは船上です。


ピピ・ララが利用する洗濯場には、お手伝いの女性が待機していて

二人の監督のもと 一緒に作業をするそうです。

 ピピ・ララも作業しながら 彼女たちを差配する。

 すごい 手腕です。



キョーシローは 船員たちの汚れ物を洗濯屋に持っていき、洗濯済みのものを持ち帰る係。

 なんとなんと 船員たちの服は 天海からのレンタル品!

 下着に至るまで、船員たちが身に着けるものはすべてレンタル制服でした!!

   例外が コチの赤いターバンとブーツ、そしてキョーシローの服、

   これらは個人持ちの個人管理


一応運航スケジュールに沿った枚数分の服が船員たちに貸し付けられ

寄港するたびに汚れ物を回収して洗濯屋に運び、

そこで洗濯済みの衣服と交換して 船員たちに配るのです!


 シーツやカバー類も同じ扱いです。


◇ ◇ ◇


これ 頻繁(ひんぱん)に航行していれば合理的システムだけど、1隻しか稼働していなかったら 赤字じゃないの?とタンタンに尋ねたら


「船上生活の洗濯の大変さは もうお分かりでしょう。


 それにお嬢様のおっしゃっていた、「たらい式衛生場→たらい屋」も、併設しました。

  男性用は 洗濯屋に

  女性用は 洗濯場に。


 一人暮らしの労働者達は、自分で湯を沸かしてたらいで行水するよりも

 少し余分な収入があった時に、たらい屋で湯と石鹸を使って全身をきれいにする方が楽だし

 贅沢な気分になるし、風呂付の宿に泊まるよりはるかに安くて便利だと、

 じわじわと人気がでてきましたので、予定よりも早く採算がとれました。 


 海水用のせっけんを使って服を洗うことはできますが、海水をくみ上げるのもそこそこ面倒。


 かといって 自分で陸でまとめ洗いすると 寄港しても体を休めることができない。


 ボロボロの衣服を買い集めて 船上で使い捨てにすると気持ちもすさんでくる。


 船上での衣服をレンタル制にしてしまえば こざっぱりした服装を船上でも保てるし

 衛生的な環境は 人を気分よくして士気も高めてくれます。


 私服を着たければ自分で洗えばいいだけのことですし

 私服を使う人は少ないので 洗濯場での船員達の順番争いもなくなり


 代わりに、洗濯仕事やレンタル被服・リネン類の(つくろ)いや縫製などで雇用が増えて

 港町の人からも感謝されてます。


 最近では、町の人達から、自分達の作業服もレンタル品にしたいと希望が出ているくらいです。」タンタン


「もしかして?」


「そう もしかしなくてもです」


(港町の領主の機嫌を損ねないように 港の街の最下層の人間を一括雇用して

 天河家が買い取った土地に仕事場をつくり、天河家が建てた建物内に居住させて 働かせているのだ)


 領主たちは 目障りな貧民街が消えて喜んでいるらしい。

 そこに住んでいた者たちが 天河家の奴隷になってせいせいしたとまで言い放っている者もいるとか。


 もっとも ヒノモト国では奴隷制は禁止されている。

 それに うちはまっとうな雇用契約を一人一人と取り交わしている。


 しかし 人は自分を基準に他人を判断する

  自分達が 名ばかりの契約書で奴隷的従属関係を相手に強いている連中は、契約とはそういうものだと思い込んでいるのだ。



 タンタンの賢いところは 貧民救済だけだと 必ず庶民の妬み心が刺激されて悶着が起きるので、


 ちゃんと従来の洗濯屋にも、船着き場の近くに作った設備の整った「洗濯室」を無料提供し、


 天海所属の船の利用客を無料で斡旋する代わりに、

  天海側から派遣した人間が厳しく現場を監督し、

 船客たちが洗濯に出した、衣類の紛失や損傷に対しては、

  きっちりと賠償させ、必要なら厳しい制裁措置をとったことだ。


(なにごとにも、高い場所代・客の紹介料・店の紹介料をとるのが当たり前のヒノモト国では

 タンタンが行う竹林省方式の紹介・斡旋事業は 他領ではありえない好条件なので

 天海側の人間が 仕事ぶりを監督したり 必要に応じて制裁措置をとることに反発はなかった)


 ぼろい衣服を持ち込まれたら、洗濯屋は即座に受け取り拒否できる。

  そのために天海の人間が用心棒としてついている。


 その代わり 破れ・ほつれの無い衣服は、1品1品詳細に記した受領証を取り交わし

 料金前払いの代わりに、引き渡し日時と作業内容を明記した受領証を契約書として渡している。


 客は 受領証をもって受け取りに行かなければ 預けた衣類を受け取ることができない。

  これは、客に成りすまして 洗濯済みの衣服が奪われないための予防策でもある。


 引き渡しの時の客のごね得は許さない。


 そのかわり 洗濯屋側が衣類をすり替えたり破損したら 

 即新品購入金額を客に支払うと同時に 故意の場合は追放だ。


その為の用心棒兼監査役の天海職員。


厳正かつ妥当な監査役の存在は まっとうな洗濯屋と船客双方から好評でした。


従来は、洗濯屋でネコババされるから船員たちはぼろ服を着る。

ぼろ服を洗濯させられれば破れやすく、

元から破れているのを洗濯屋のせいだ、破れがひどくなったのは洗濯屋のせいだとごねる客も多い。

 こういう悪循環から客も店も解放されたわけですから。




さらに こういう 洗濯屋でのトラブルが嫌だと感じていた庶民は

天海社のレンタル服を利用するようになったので、


必然的に 街の洗濯屋に持ち込まれるのは、高級志向の私服となり、

洗濯屋は 高級服を扱うためのスキルが必要になったけど、


そこは天海社からの有料技術指導サービスがあったので、

洗濯屋がぼろ服洗い業から、高級クリーニング業にグレードアップするきっかけとなり


そうなると 街の富裕層・にわか成金からの依頼も増え、

自然と これまで船員相手の低収入不安定収入の洗濯屋だった人達が

 街に住む富裕層相手の安定商売にとグレードアップ転職できるようになったのです。


世の中 高級服の手入れができる侍女を雇う力はないけれど

取扱いに注意が必要なお高い服を着たい!と思う小金持ちは けっこういます。

 その人たちは 高級服の手入れを安心して任せられる洗濯屋の台頭を歓迎しました。


つまり 従来の洗濯屋稼業の方々は、天海社の「洗濯室(技術指導付き)」と顧客紹介を無料利用することにより、

自分たちのスキルアップと貯蓄に成功し、

独立した街のクリーニング店にアップグレードできたので、

天海社の船員服・作業服レンタル&洗濯業と競合することなく幸せな転業・起業に成功したわけです。




恐るべし 天河家(ゆかり)の隠れ里の住民たち

 突然 わらわらと湧いて出て?産業革命の推進者となった?!


「人聞きの悪いことを言わないで下さい。

 たんに 時節を待って雌伏しふくの時を過ごしていただけです」byシノ&キョーシロー


・・・

 とまあ 風が吹いたら桶屋が儲かる式に、

天海号就航後数年で、 港町の洗濯業と 街の人々の被服面での衛生状態が著しく向上した。


また 街の女性達も、家族の服を洗ってもあまり感謝されず、

自分の労働に対する金銭的報酬もなかったが、洗濯屋で働けば現金収入が得られる!

とばかりに 洗濯屋での就労をのぞむようになり、

洗濯産業拡大に伴う労働需要の増加を満たしたり、

逆に洗濯屋で身に着けたスキルをもって家庭婦人となり、家族の幸せに貢献する娘さんも増えたとか。


そして 独身時代 洗濯屋やたらい屋を利用していた男達も

 結婚すれば それらの業務を妻がしてくれることに感謝の念を持ち

 妻の家庭内労働によって節約できたお金は 当然妻の労働の成果であると認識するようになり

女性の発言力が増した地域もあったそうです。


さらに 石鹸需要も増えて、

 石鹸になる植物の栽培と、脂と木灰を使った石鹸づくりで、

 やせ地に住んでいた人々の副業が増え、やがてそれが主産業となり

 その地の人々の所得倍増、生活水準があがっていったそうな。


 港町以外での洗濯屋稼業に 海運会社天海は関与していないので

真似っこ起業家志望者たちは、他の町で 一旗あげることができました。

 その結果は その方々の力次第ということで、うちが関与することではありません。


ただ 石鹸の生産と流通に関しては、天河家ゆかりの領主達が もともとやせ地に住んでいたこともあって、がっつりと自分達の領の主力製品として押さえたようです。


おかげで 天河家の棟梁としての私の面目もたちました。

 これ すべて フローラ達の根回しと手配のおかげです。


 私は 夢の話をして 事業のアイデアを提供しただけ。(;'∀')



※ 土日休日は 朝8時 

  月~金は  朝7時の1回投稿です

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