断髪と陸酔い
そうこうするうちに、王都ジョーダンを出てから初めての停泊地である港に入った。
港の名前は知らない、というか覚えていない、もしくは覚えられなかった。
というのも 船酔いがようやくおさまりかけたのに、今度は陸酔いして地名どころではなかったのです。
~~~ ~~~~ ←波のつもり(;'∀')
北海岸のとある港に、夕日を見ながら入港しました。
魅惑的な光景に ワクワクしました。
船客の下船が終わるころには、日が暮れておりました。
人影がまばらになった宵闇の中、私とシノ・ピピ・ララにキョーシローも護衛として加わって
ひっそりと上陸して 陸の上で1泊です。
その目的は、「断髪」です。
というのも・・・
言うまでもなく 船旅において水は貴重です。
就航記念の特別航海なので、いくら通常よりも頻繁に寄港して 新鮮な水を仕入れているとはいえ
むやみやたらに 真水を使って体を洗ったり洗髪はできません。
男の人は 海水用の石鹸を使って体も髪も洗います。
もちろん 海から海水をくみ上げて。
女性は 毎朝コップ1杯の真水をもらって顔を洗い、
夕刻には 小さな洗面器1杯の水で清拭することが許されていました。
シノは海水と海水用の石鹸を使って体を洗った後、ほん少しの真水を上手に使い、
自分に割り当てられた水の大半を私・ピピ・ララの3人に譲ってくれていました。
なので 無事に年賀行事も終わり そこそこ及第点もとったことだし、
私の断髪式をしましょうと言うことになったのです。
早い話が私のなが~いなが~い髪を切って 少年のような短髪にするわけですよ。
その時 私は陸酔いで大変な状態でした。
だって 桟橋を歩いている時から 足の下が揺れる~ 揺れる~ 踏ん張れない><
それでも踏ん張って お宿まで行って、座るとお尻の下がぐらぐら揺れて気持ち悪い・ふらふら~
そんな状態でも、ピピとララがどんどん事を進め、
気が付くと髪も込みで全身を磨き上げられ 髪がきれいに乾かされ、櫛削られ・・
気が付くと きれいにカットされていました。
清潔に手入れされた状態で切りとられた髪は、丁寧に箱にしまわれ、鬘にGO!
「すみません ご気分の悪い所を 強引に事を運んで」とシノが謝ってくれました。
「日程が厳しいのも 髪を切る前にきれいにしておいた方が良いのも
陸酔いの原理も知ってるから」私はそう呟き
「船に 戻って寝たらだめ?」と聞いた。
「夜道は危険ですし 現在 寝具類は洗濯中で使えませんよ」ピピ
「へ?」
「ここで1泊するのは、シーツや衣類などをまとめて洗濯する為です」シノ
「お嬢様の断髪式はそこに便乗したわけですよ」シノ
(だよね、うち 貧乏だもの。)
何をするにも 「ついで ついで」とばかりにあれもこれも同時にすませて 諸費節約するんだった。
ちなみに 宿まで同行していたキョーシローの姿はない。
彼も 女4人の夜道の護衛をすませたあとは、
本来のお仕事をしに どっか行ったんだろうなぁ
「せっかく 上陸したのに 目が回る
これで 明日乗船したら 船酔いのやり直しになったら泣く!」
実際泣きました。
私の三半規管って ずいぶん弱そう
(なんで みんな平気な顔をしているのよ!)
「お嬢様の繊細さを一手に引き受けているのが 三半規管じゃありませんか?」
セバスが さらりと嫌味を言った。
あーあ 心の中で悪態をつくと必ず嫌味を言われる。
この執事の受容器官はどんなつくりになっているのだろう?
※ 土日休日は 朝8時
月~金は 朝7時の1回投稿です




