領地の視察(4日目)
領主着任当日は 儀式とレセプション会場で お偉方と顔をあわせました。
領主になった翌日である本日は 領都の視察です。
現在私が暮らしている館は丘の上にあります。
東西2本の大河に挟まれ、南側が海 北側が森林地帯の平原の真ん中にある丘の上が我が館。
館のある丘の南側から海までに広がっている街が我が領都。
ちなみに首都は森林地帯を抜けてさらに北へ向かった所にあるそうです。
東側と西側の河の上流はそれぞれ山岳地帯となっており、領都からみて川の対岸はお隣の領です。
恥ずかしながら 隣領の名前をまだ覚えていません。
お隣の領主にも紹介されたはずですが・・緊張のあまり覚えられなかったのです。
さて、本日のメインイベント「領都ペンペンの視察」に出発!
丘を下って街に入るには馬で15分ほどかかるので、セバスチャンに乗馬の手ほどきを受けながらの道中です。
「現在 お屋敷に常駐しているのはフローラと私の二人だけですので、街で人を雇いましょう」セバスチャン
「では昨日の料理やレセプションの準備と開催は?」
「ケイタリングです。
最近のケイタリングは 料理だけでなく給仕もワンセットで貸し出してくれるので便利ですよ」
「どうして 館にあなた達二人しかいなかったの?」
「経費節約とセキュリティの為ですね」セバスチャンは澄まして答えた。
「経費節約?」
「そうです。お嬢様はご両親を亡くされて以来 引きこもっておられましたので、私とフローラの二人がいれば それで十分だったのです。
へたに人を雇うと監督する手間がかかりますから」
「監督?」
「そうです 盗み・さぼり・情報漏洩・良からぬ者を引き込む・手引きするなど いろいろ厄介ごとが生じます」
「徹底した人間不信というか 私ってそれほど危うい立場だったの?」
「そりゃ ご両親が同時に亡くなり
同じ夜 お嬢様の部屋にも暗殺者たちが窓から忍び込んだり
玄関先には賊がなだれ込んだとあれば 危うい状況だったと言えましょう。
幸いにも お嬢様のお部屋にはフローラがおり暗殺者を成敗、
玄関先の賊は私が討ち果たすことができましたが、
残念なことに ご両親はすでにベットの中で息を引き取っておられました。
医師の診断は「病死」とのことでしたが、この世には 痕跡を残さない毒も多数ございますから」
「知らなかった」
「成人なさるまで、このことはお知らせしないことをフローラと 取り決めておりましたから。」
「それでは なぜ 今日から人を雇うことに?」
「領主ともなれば、護衛隊長・料理長・メイド頭・庭師・馬番または旅慣れた者 まずは5人の配下が必要でしょう。
信頼のできる直属の5人が定まれば、あとは必要に応じて この者達を通して新たに人を雇い入れて行けばよろしいかと」
「なるほど」
「しかし なぜ旅慣れた者が必要なの?」
「それは 年末になれば王都に赴き 王宮への年賀に備えねばならないからです」
その際の旅の手配を任せられる者が必要です。
「ということは 行商人などから探すとよいのかしら?」
「どうでしょう。
単に旅の差配ができるだけでなく 自分で自分の身を守れるほどの力のある人に出会えればよいのですが」
「なるほど」