キョーシローとコチ
特別船室の中で、天海号船長のコチと、水先案内人兼海の魔物対応のキョーシローに紹介された。
ということは、シノやセバスから見て信頼に足る人物と言うことなんだろう。
背高のっぽのキョーシロー
ぼさぼさの髪をポニーテールにして 腰には剣と望遠鏡
裾を絞った袴に地下足袋の御武家様風。
思わず彼の足元を見てしまったら キョーシローは唇の端をつりあげて言った。
「船の中で歩きやすく 海に落ちたときにも脱げ落ちない地下足袋が便利なのです」
「水を吸って重くなったり 足が冷えたりしませんか?」
「この足袋の生地は特別製で 防水速乾軽量素材で 滑りにくい優れものです。
それに 海から陸に上がる時 鋭い岩や石の破片・浅瀬の有毒生物から足先を守るためにも 脱げない履物は重要です」
「なるほど。勉強になりました。 教えて下さってありがとう」
「どういたしまして」今度は 本物の笑顔を見せてくれた。
意外と若々しく爽やかな笑顔であった。
一方 小柄で筋肉質なコチの頭には赤いターバン
Tシャツの袖から はちきれそうな上腕がのぞいている
細身のズボンの裾は長靴の中にきちんとたくし込まれていた。
「長靴にも 何かいわれがあるのですか?」思わず尋ねてしまった。
コチはニヤッと笑うと、
「水夫は忙しいのでね、地下足袋を毎日洗って乾かす閑がないんだよ。
その点 長靴は脱ぎ着が簡単でね、汚れたときも 水に突っ込んで カシャカシャっと降って中の水を捨てればそれでおわりさ」
「丈夫そうな素材に見えるのですが 足を保護する為ですか?」
「そうだよ。うっかりつま先をぶつけたり足の上に荷物をおとしたりということが
あった時の為にね。」
そう言ってコチは笑った。
「これからの船旅の安全と、安全な航路開発のために協力をよろしくお願いします」
二人に向かって一礼した。
二人が退出した後 シノに注意された。
「コチの履物は 長靴ではなく ブーツだと思いますよ」
「私もそう思った。長靴型のブーツ。高そうだなって」と私もこたえた。
「だったら はっきりとそういうべきでしたね」セバス
「なんとなく 前の話の流れで・・」
「未熟者」シノに 頭をこつんとされた。
「痛い!」
「コチはね 優秀な忍びなのです。陸の上では一村領主だったりもします。
あの靴は それを暗示する履物だったのです」シノ
「一村領主ってなに?」
「文字通り一村だけをおさめる領主です。
村長が村にいて実利を握っているのに対して、
一村領主は位だけあって 徴税した金だけでは食べていくのに精いっぱい、
結婚したければ副業して稼ぐしかないけど メンツがあるから忍びか海運業しか働き口がないという存在です」セバス
「正直言って 船酔いに負けて 駆け引きはパスしたかったの。
もう限界!」
そう言って 私はしゃがみ込んでしまった。
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