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貧乏領主になりました  作者: 木苺
     王都にて
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王宮での儀式の裏話

3個のイブは ヒノモト国の三種の神器のような存在であった。


北の領主 すなわち正当なるヒノモト国の王から 王権と三種の神器を奪った、現在のバンザイ国王家であったが、オリを唱えることができなかった。なぜなら簒奪(さんだつ)者はオリを知らなかったから。


新年の儀式で 私がハカの先導をしっかりと務めたのを見た神官たちが

今年は イブを私に渡して 様子を見たいと言ったらしい。


私が オリの正当なる継承者であるシノにオリの先導役を任せて、

私とシノとセバスできっちりとオリの儀をおこなったことで、

神官たちもまた 南の領主:航海王として私の存在を支持することを表明した。


その結果 ヒノモト国の三種の神器である3個のイブは正式に私が継承することになった。


名目上の王権は (いま)だバンザイ国王が持っているが、

神聖ヒノモト国の神官たちは 全員天河家の配下に戻って来た。


というわけで いつの間にか ヒノモト国の宗教紛争(内乱)は終結したらしい。


もともと天河家の双子たちが 南北に分かれて分割統治をすることに決めたのも

神官たちに(わずら)わされることなく海洋開発を始めたかったかららしい。

 ゆえに 今でも 島の全土地図は 天河家のみが知るマル秘事項だとのこと。


 「南の入り江」という名称も 天河家以外の者に知られてはいけないそうだ。

 なぜなら その名称から 南の地形が他の者達に知れてしまうから。


 現在のバンザイ国王は、本当は天河家の存在を抹消(まっしょう)して 竹林省を()が物にしたいがゆえに

まずは、イブを下賜するという名目で、私にオリを失敗させて神官たちによる竹林領主攻撃の火ぶたを切らせたり、

これまで新年のオリのみはシノの一族が行なっていたのにと、シノの心証を害して、南北天河家の反目をかきたてるつもりだったらしい。


ところが、オリの先導を私はシノに譲り、

私とセバスはきっちりとオリをこなしたので

神官たちは 南の領主支持を表明するに至った。

 なにしろ ハカもオリもフラもきちんと 配下の者と共に(おこ)なえる領主ならば

 それらがまともにできないバンザイ王家よりも、よほど信頼が置けるということで。


さらに 南北に分かれていた天河一族の結束ぶりを、王宮に居た者達にも印象付けることができて、今後の余計な介入を一時的にでも遠ざけることができてよかったとシノは言った。


・・・

といったことを、屋敷に戻ってから、シノとセバスから聞かされた。


「うーん なんで こうした説明が (あと)から来るの?」


「それはですね あなたがまだ15歳になったばかりだからです。


 15歳で成人というのは、これから大人の話を聞いて 社会人に必要な勉強を開始しますよという意味なんですね。


 それで ほんとに一人前として活躍できるようになるのは 25歳すぎてからというか

 まあ15歳から最初の10年くらいは、親とか先達(せんだつ)からいろいろ教わりながら

 公式の場での経験もじょじょに踏みつつ

 自分の評判と自分の力の両方を養なっていく期間なんです。


 お嬢様のご両親はすでに亡くなっておりますから

 こうしてフローラをはじめとする一族の者がお嬢様を支えつつ


 氏族の代表、それが領主と呼ばれる存在でもあるのですが、

 天河家ゆかりの領主たちが、お嬢様を南の領主として承認し、忠誠を誓い


 一方で 私たちのように、お嬢様個人に忠義を誓った者が お嬢様を支えていくのです。


 それらが 同時並行で進んでいるので、

 実体験と説明が あとになり先になり ケースバイケースになってしまいます。」セバス


「一族の者は 新領主のお人柄を見て忠誠を誓います。

 その一方で ご領主様も 相手の人物を見定めてから忠義を受け入れたいでしょう。

 

 それに 私をはじめとする使用人とて、忠義を誓うか、

 ただの雇用人としての立場で(あるじ)に使えるかは

 主のお人柄を見て決めますので」セバス


「幼い時から眠り続けていて、目が覚めたらいきなり領主に就任だの

 雇用契約だの

 と実用面で追われまくっている女の子に

 いきなり 忠義だ忠誠だと言って困らせたくなかったんだよ」シノ


「確かに 今の説明だけでも 少し頭がこんがらがって来たわ。」


「のようですね」シノが笑った。


「そうやってすぐ顔に出るうちは まだまだ子供です」セバス


「だからこそ 一所懸命頑張る子を支えたいって思う者もいるんですよ」ピピ・ララ


「相手の身分や立場を気にせず、目の前にいる一人一人との関係を大切に築こうとする

 あなたの天真爛漫(てんしんらんまん)さと 素直な努力に私は好感を持ったんだ。


 だから これからも 必要に応じて随時説明していくから

 あなたも 気を悪くすることなく話を聞いて欲しい。


 それに あなたの教育係はセバスチャンだから 文句は彼に言ってくれ。

 もともと 私が最初に請け負ったのは あなたの身を守ることだけだったから」シノ


「はい」と答えつつ 私は思った。

(ピピとララとは 雇用契約を結んでいるんだろうか?」


そんな私を見て ピピとララは笑顔で言った。


「私たちは 私たちの自由意思で お嬢様についていくことにしたのです。

 だから しばらくは お世話係としてそばに置いてくださいね」


「はい。よろしくと願いします」 私は頭を下げた。


「ピピとララは従妹(いとこ)どうしで、ララは一村領主なのです。


 ピピはすでに独立してフリーになっているので、

 二人とも 自分の意思で自由に進路を決定できるという点では タンタンと同じですね」

セバスが補足説明してくれた。


なんだかよくわからないが 自由意思と契約と親戚・姻戚(いんせき)と様々な縁でつながった人たちが

私の周りに居るのだということだけはわかった。


そして 私がまだ 見習い中の身であることも。


 一方では 竹林省領主という役割を担っているけど

 現実には、私を取り巻く人親しい人達の間では、私はまだ保護の対象となる子供で、

 日々いろいろなことを学んでいる成長途上の人間なのだ。

※ 土日休日は 朝8時 

  月~金は  朝7時の1回投稿です

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