イプ (写真あり)
元旦の夜を徹したダンスパーティーは、 ファッション・モードの競い合いと政治的駆け引きと商談の場であった。
しかし 私は未成年なので、ダンスファッション(モードの先駆けとなるもの)を披露した後は、セバスとタンタンに任せて、馬車の中で眠っていた。
草木も眠る丑三つ時が過ぎた頃 シノに起こされて身支度をすませ、
こっそりと大広間に戻った。
多くの領主たちが 大広間のあちこちで 居眠りをしていた。
シノは素早く私をセバスが立つそばに連れて行った。
事前にうちあわせていたように 私は黙ってシノとセバスの前に立った。直立不動で。
やがて ファンファーレが鳴り響き、王が入場した。
ファンファーレで目覚めたらしい領主たちもあわてて整列した。
王座を囲むように弧を描いて。
「天河家の者前へ」
突然王に指名された。
私達3人は御前に歩み出た。
「そなたち 見事に今年のモードを産み出した様じゃの。
祝いにこれを取らす」
イプを3個下賜された。
「せっかくじゃ 早速使って見せよ」神官が私達に言った。
「うむ それも一興」と王ものっかった。
「おそれながら 私は若輩者ゆえ、この者に先導役を務めさせてもよろしいでしょうか?」
「許す」王の許可を得て 私とシノは場所を入れ替え床に座り、イプを体の正面、開いた両足の間に据えた。
「ウイア ~ ケアハヒー」とシノがオリを唱え始め、
それを私とセバスが復唱し、そのあとは 3人でイプを叩きながら歌った。
神官たちは 私達の一挙手一投足を記憶に焼け付けようとしているかのように 熱心に耳を傾けながら私達の動きから目を離そうとしなかった。
オリが終わると、王は 「うむ」とうなづき 手を振った。
私達は イプを持って後ろに下がり、
セバスとすっと近づいてきたタンタンに3個のイプを分け持たせた。
二人は 素早くイプを抱えて脇によった。
すぐにスチールギターの音が響き渡った。日の出の輝きと共に。
領主たちは全員で アロハオエを歌いながら踊った。
むくつけき男達の中には 女のように体をくねらせている者もいた。
私・シノ・ララは 腕の動きに心を込めて踊った。
神官たちが 踊りながら進み出てきたので、私達3人が率先して陣形を変えて
王を挟んで 領主たちと神官たちが向きあうように 列を誘導した。アイコンタクトを駆使して。
かくして無事に 新年の祝いを終えることができた。
(参考)
Ipu by O Kekuhi
(本文のイメージの源泉となったビデオの一コマです。
http://uananiasosan.club/kahiko/ よりお借りしました)
※ 土日休日は 朝8時
月~金は 朝7時の1回投稿です
(参考)
イプ:ヒョウタンで作った打楽器
オリ:踊りを伴わない詠唱
カヒコ:フラの中でも 古典的なもの
自然に感謝をささげるチャント(祈り)
http://uananiasosan.club/kahiko/
https://ameblo.jp/aloha-hulalinomauloa/entry-11977267150.html




