天河家の商売
これはあとになって聞いた話だが、
徹夜のダンスパーティーに残ったタンタンは しっかりと商売にも励んだらしい。
なんでも、タンゴの時のリボンひらひらは、百合姉妹と男達の妄想をかきたてる一方、
ダンスにかこつけたセクハラに辟易していた高位女性達の間では、
同性同士でダンスの楽しさを堪能しつつ、自分達の美を引き立てる小道具としてナイスアイデア!
これなら動きやすいズボンにも 優雅なスカートにも合わせやすく、女性性を演出できると人気を博したとか。
というわけで タンタンは このひらひらリボンバージョンを最新モードとして売り出し、年賀滞在中の費用にあてることができたそうだ。
お金はなくともモノ持ちなのねぇと感心したら
あれは もともとお嬢様のドレスの飾りにするために用意してあった布類ですとセバスに言われた。
とにかく 何が流行るかわからないから 各色さまざまな種類の生地の布をそろえてあったのだそうだ。
だから「売ってしまったら また補充をしないといけないのです!」とセバス。
「モードとして売り出すと言うのはね、品物を直接売るわけではないのです」
とタンタンが説明してくれた。
販売は、王都の某商店が取り扱い、その店の品ぞろえをタンタンが監修する一方、
タンタンから紹介された人しかリボンを購入できないと言うシステムができた。
この某商店との事前打ち合わせも 私が王都につく前にタンタンが話をつけていたらしい。
「バンザイ国って コネクション国家ですから。
紹介状なくしてはモノを買えず、紹介状を出せる人間が富を得るのです」ピピ
「だからこそ毎年「年賀のテーマ(流行の基準)」が直前に発表され、
その中で人気を博した人がその年のモード(流行の中心)を産み出し、
いち早くそのモードに沿った服装を整えた少数者が、その年のファッションリーダーとして勝利を得るのです。」タンタン
「そのために 生涯最低3度は出席する年賀の儀にそなえて、王都の別宅には 様々なファッション小物と服飾材料を蓄えておく必要があるのです。
武力抗争を避けるためには、ファッションを武器とした戦いに勝利する必要がありますから。
特にうちは 年賀への出席回数を絞り込んでいるだけに。」とセバス
「そしてモードを産み出すには、デザイン・モデル・社交の3拍子揃わなくては、運すらつかめないのです」とシノが締めくくった。
「つまり ピピ・ララのセンスと腕、領主と近習の出来栄え、タンタンによる情報の収集と売り込みというわけね」
「情報集めには ドードーを含めたこの屋敷に属する全員があたったのですよ。
売り込みとその手配はタンタンの手腕ですが」とセバス
「みんな ほんとにありがとう」
心からの礼をとった。
屋敷に属する人全員に会えたわけではなかったけど。
というか 天河家に関わる人達っていうのは、「忍び系」というだけあって
必要以上に姿を現さない、気配も感じさせないから
直接会って 話せる人の方が限られているのよ。
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