ダンスパーティー (図あり)
遅めの昼食をたっぷりとった。
「当分王宮では 私が毒見をしたもの以外決して口にしないように」とシノは言った。
私の腰にさした立派な拵えの鞘の中には 細くて短い剣と水筒が入っている。
「水筒の存在は秘密にしておいてください。これは緊急用ですから」とシノ。
私とシノは正装して豪華な馬車の中に乗り込んだ。
セバスとタンタンは、天河家の人間であることを示す緑色の制服を着て、馬車の両脇についたステップに立って天河家の威光を示し、制服を着たララは馬車のてっぺんに座って背後を警戒しつつ天河家の武運を示した。
ララは胸元に金の徽章を、タンタンは白金の徽章をつけていた。
御者は真っ白な正装をしたピピが務めた。
私は シノの手をとり、セバスとタンタンを従えて、大広間に入った。
ピピ・ララは馬車と馬の警護だ。
私よりも背の高い男装美人をエスコートしていたので かなり目立ったようだが、そんなの気にしない。
シノと私は二人そろって 国王夫妻の前で礼をとった。
予想どうりシノは 女性達に大人気であった。
ファーストダンスでは 私が男性のステップでシノをリードしつつ、回転するときには 二人は手を離してシンメトリーを描くように回った。
冷やかしの口笛をふく者もいたが、ご老人と女性陣にはうけた。
背は低くとも男らしいリード役と、凛凛と華やかな男装の令嬢
どーせ 私の空気抵抗の少なそうな胸と引き締まった肉体で男のかっこうをすれば少年に見えたことでしょうから。
本日の髪型は少年によくあるみずらです。
ファーストダンスのあとは、シノが毒見をしたノンアルコールカクテルを片手に
おえらがたに挨拶をして回っては 乾杯。
お偉方に私を紹介して回ったのは タンタンだ。
タンタンが いちいち相手を私に取り次ぎ、私が自己紹介して乾杯。
杯を干すたびに すかさず 傍らに控えたシノが私の杯を満たしたので、
だれからも 飲み物を勧められなくて助かった。
バンザイ国では 誰かの健康や幸せを祈って自分の盃を飲み干す習わしなので
相手の杯に飲み物が入っているのに強酒するのは決闘ものの無礼なのだそうだ。
大臣や 領主たちへのあいさつ回りが終わっても まだ 人々のダンスは続いていた。
そこで だれかから踊りを申し込まれる前に 私は 会場の隅にたっていたピピにダンスを申し込んだ。
ピピがいつのまにか 会場に来ていたのだ。
彼女の背丈は 私より少し高いくらいだったので、
手を離すことなく普通に私が男として彼女をくるくる回してリードすることができた。
男装ながらも愛らしいピピが、広間にいた若い男性陣の注目をひいた。
ピピと踊り終わったすぐあとに ラストダンスとなった。
私は シノと二人でタンゴを踊った。
幸いにも リズムのはっきりとした競技会用の音楽だったので、シノと二人で技の見本市のように華麗に踊りまくった。
二人がともに男性のポージングでタンゴを踊るとなれば、ターンやステップの種類の多さとシンメトリーの美で勝負するしかないと 二人で猛練習した成果である。
どこぞの危ない刑事さんのようにバラの花を咥える代わりに、
私たち二人の結びつきを象徴するかのように、二人の肩から腕にかけて 華やかなシフォンのリボンをまとわせ、手首からひらひらさせて柔らかい動きを演出した。
これは 老若男女に受け入れられたようだ。よかった。
(天女の羽衣のように 虹色に輝いて幻想的な雰囲気を醸し出せていたらよかったのだけど
そこまで うまくいったかなぁ・・)
社交ダンスが無事に終わった。
このあとは明け方まで無礼講の新年宴会が続く。
しかし私はまだ15才なので、お酒もノンアルコールだし
乱痴気騒ぎに参加せずとも城内のどこかに居ればそれでよいと言うことだったので、
あとのことはセバスとタンタンに任せて、
シノが用意してくれたフードをかぶって こっそりと馬車まで移動した。
今夜は場内で車中泊(馬車の中で仮眠をとるの)だ。
大広間での後を託されたセバスチャンとタンタンは、素早く 金銀のモールを服につけて、
自分達が 竹林省の外交と天河家の社交代表であることを示した。
ちなみに
シノの正装は、天河家直系子孫のみが着用を許されている 北の領主の正装
私の正装は、天河家直系子孫のみが着用を許されている 南の領主の正装
ララが身に着けていた金の徽章は、ヒノモト国の軍務大臣の中でも天河家ゆかりの者のみが身に帯びることを許されているもの
タンタンがつけていた白金の徽章は、航海王から海運交渉担当を命じられた者であることを示しているのだそうだ。
なんかこの辺は 天河家ゆかりの方々の総意をフローラがうまくまとめ上げて決まったらしい。
私は ただ その結果を受け入れるのみ。
※ 土日休日は 朝8時
月~金は 朝7時の1回投稿です
(イラスト出展)
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