家族会議 (地図再掲)
家族会議と言えば 普通は血縁の集まりを指す。
私の場合 生存する血縁者はないので、セバス・シノ・タンタン・ピピ・ララ・(ドードー)が目下の家族だ。
ドードーがカッコつきなのは 彼は門番の仕事があって会議に加われないから。
王宮では、初日の出を拝んだら いったん解散となった。
宮中に用意された部屋に泊まる者、王都の宿舎や王都にある館にもどる者とさまざまだった。
王族はもちろん 王宮に住んでいる。
大臣や領主が 王宮内の部屋を借りる為には 王の許可と多額の賃料前払いが必要である。
それでも権威を誇示したいものは 毎年、王宮での式典の時に己の栄華を誇る為に大金をおさめているらしい。
それ以外の者達は 王都で部屋や館を借りることになる。
我が家のように王都内に別宅を持っている領主は 他にはいなかった。
家に着いたら とりあえずは 風呂に入らせてもらった。
ピピが エステサービスの間に飲めるようにとイチゴミルクスムージーを持ってきてくれた。
「冬にイチゴって贅沢~♡」
「イチゴは小さいから温室栽培しやすいのです」だって。
「ピピもララも私の配下なので、試練の内容を洗いざらい話しても大丈夫ですよ」シノ
「ベッドを用意してくれたのはだれ?」
「私で~す」ララが私の背中を流しながら陽気に言った。
「神官たちは横穴の存在を知らないのです。
墜落して死ぬか 一晩穴の縁にぶら下がっているか 途中で助けを求めて叫んで失格になるのを期待していたみたいです。」ララ
「王様も横穴のことを知らないでしょうね。」シノ
「なんで?」
「うちのご先祖が もともとこの国の王であの宮殿を作ったから」ピピ
「私らの棟梁はシノ様です」ピピ・ララ
シノの顔を見ると、
「血筋だけで言えば 私がこの国を建てた者の直系の子孫ですね。
そして それはあなたも同じですよ」とシノ
「両家の遠い遠い先祖は双子だったらしいです。
双子だから 北と南に分かれて分割統治することになったのだけど、
北の領主&国王となったうちのご先祖はやがて隠れ里に落ちることになっちゃって
バンザイ国王ができたんです。
一方 南の領主だったあなたの家系は 直系の子供が時々眠り病にかかったりして
嫁の来てがなくなってしまって 他の領主との縁が薄れました。
しかもあなたのご両親が早くに亡くなってしまったので、竹林省が松林県・竹林県・梅園県に分割されてしまったのです。
バンザイ国王は あなたに試練を与えて失墜させるかあわよくば死なせようと考えたようですが
あなたが立派に試練をこなし、うちの一族の信任を勝ち取ったのを見て
竹林県・松林県と梅園県の土地をそっくりあなたに治めさせることにしたんです
なぜなら、国王が、松林県と梅園県に送り込んだ県令の不正をあなたが暴いて、竹林省の再統一を成し遂げたので、国王としてもあなたを竹林省の領主として認め、すべての権限・権益をあなたに返還せざる得なくなったからです。」シノ
「すべての権益?」私
「私たちの先祖は、北の領主が 今私たちがいる島の国王となる代わりに
南の領主は、この島の回りの海とその海の中にある島のすべての王になると決めたのです。
もともと、北の領地の回りの海は 入った船が出てこない謎の海域と 魔獣のいる海域にとりかこまれていて航行不能でした。
しかし 南の領主となったあなたの先祖の方々は、東海岸を航海する船を作り出し、航海王と名乗るようになりました。
ですが、あなたの御両親がおなくなりになったあと、バンザイ国王は、北の領地の各県を収める領主たちに、南の領主の船の寄港を認めないように命じました。
ヒノモト国の北側は、狭い領地しかもたない領主がひしめき合って、互いにけん制しあっています。
バンザイ国王ですら、直轄できる所領はとても小さい。
ですからどこの領も、自領に港を一つ持つのがやっとのあり様。
港をもたない領主も珍しくありません。
それゆえ ほそぼそと沿岸漁業を行うのが精いっぱいで、自力での船旅など無理です。
ですから、南の領主の船が運航しなくなってから、じわじわとその不自由さ・不便さが北の領地に住む人々にも実感できるようになっていました。
そんな時に、タンタンが 大型船に載って東航路を北上してジョーダンまでやってきたので、
各地の領主達は大騒ぎしました。
しかも 南の領主の復活の知らせを携えて来たのですから。
それゆえ、新領主着任時の試練の儀を無事に済ませたら、航海王である南の領主の権限をすべて認めて
南の領主に属する船の各地への寄港と物資の補給を無税にするとともに、海運事業の再開を! と求める声が一斉に噴出しました。」シノ
「私が載せてもらった船は、フローラが手配したものなのです。
彼女は ある一族に依頼して 南の領主の船をひそかに保管していたのです」タンタン
「私の先祖は 配下に裏切られて国王の座を追われ、北の領主の一族も分裂してしまいましたが、
南の領主の方々は、分裂ではなく 平和的に分家して 各地に分散して暮らしながらも協力体制を維持してきたようですね。
もっとも 北の分裂した一族と南の分家との婚姻も繰り返されて、今では 南北の直系の子孫以外は ほぼ同族のような感じになってしまっていますが」シノ
「もしかして 私が」
「お嬢様!」セバスが私の言葉を遮って首を横に振った。
突然 シノが私の前に片膝をついた。
ピピとララも素早く素早くシノの両側について 片膝をついた。
3人は一斉に「お嬢様に忠誠を誓います」と言った。
「ありがとう。3人の忠義を受け入れます」私は儀礼通りに誓いを受け取った。
3人が席にもどると 今度はタンタンが 私の前に膝まずいた。
「私とわが一族は 貴方様に忠誠を誓い 忠義を尽くします」タンタン
「受け入れます。これから よろしく頼みます」私
(もしかしたら、私が期限までに目覚めなかったり、私に領主としての力が不足していたときには
シノが竹林省の領主になったのかもしれない。
でも その可能性については 今後も決して口に出してはいけないのだろうなぁ。
まして シノがこうして私に忠誠を誓った以上、うちわ話としても持ち出してはいけないことなのだろう)
一方、セバスチャンの胸の内は
(またもや お嬢様が変なことを考えているようだ。
大方 シノが次期領主候補だったとか考えているんだろうなぁ。
実際には シノとフローラが、領主候補として一騎打ち、または話し合いで決めるところだったのに、
でも こればっかりは シノとフローラ二人がそろって打ち明ける気になるまでは、口にできないことだから)だった。
朝食後、ピピが ドードーと門番の役目を交代しに行った。
ドードーは 屋敷に入ってくるとまず私のもとに来て
「我ら隠れ里すべての者が あなた様の手足となり盾となってお仕え申し上げます」と誓いを立てた。
それも ありがたく私は受け取った。
ドードーが退出し、再びピピが戻って来た。
「これで お嬢様は 名実共に竹林省領主として 南の領主として認められましたね。
領都ペンペンへは 船で戻って、今度は航海王であることを世に示しましょう」
とセバスが言った。
「でもその前にエステをしましょうね」とピピ
ギョッとした私の顔を見て、言った。
「ダンスパーティに参加する前には 髪も体も磨き上げるのがマナーです。
お肌や髪の手入れをする間 寝ててください。
昨夜は 試練の儀でお疲れになったでしょうから、今の間にお昼寝をどうぞ」
というわけで、私は ピピとララにこの身を任せてひと眠りした。
(うん 私は お金持ちのお嬢様なのか 貧乏な領主なのか よくわかんなくなってきちゃった。)
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