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貧乏領主になりました  作者: 木苺
     王都にて
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流行

翌朝 早速(さっそく) 朝食の席で王都の流行服をシノが尋ねた。


「この夏から、領主は全員男装・帯刀となりました。

 たとえ女性であろうとも 領主である以上男装すべしと。」


タンタンの説明を聞いて セバスは 手に持っていたパンを取り落とした。


「それでは決闘も復活ですか?」シノ


「それは 変わらず禁止です。」タンタン


「舞踏会はどうするのです?」セバス


「男女の区別なく 好きな相手と踊ってよいことになりました。

 最近は 同性愛も異性愛も共に認めるべきとの声が高まりまして」タンタン


「ということは近習の服装にも変化が?」シノ


「近習は自分の性別と関係なく 男女どちらの服装をしても良いことに」タンタン


セバスはうめき、シノはにんまりとした。


「それでは 私は男装しよう。

 そして お嬢様 私をエスコートしてくださいね!」シノ


「?」


「女の私が男装して 領主であるあなたにエスコートされていれば 

 男女どちらに対しても虫よけ効果を発揮します。」シノ


「シノは男装しなくても強いからねぇ。」セバス


「男装=建前上男と剣の試合をして負けても男の面子は守られるので

 シノも『お嬢様を口説きたければ 私を倒してからにしたまえ』と言いやすいですね」セバス


なるほど。女のカッコで男に勝つと逆恨みされるもんね。

「じゃあ 方向性を間違えたゲイモドキがつっかかってきたら 私がのしちゃってもいい?」


「どういう方向に間違えるのですか?」セバス


「男装のシノに懸想(けそう)したふりの男が、私に男同士の勝負を挑んできた場合。


 正直者なら 直接シノを口説くでしょうけど、

 ヒネたゲイもどきの男なら、シノにほれたから、シノの彼氏である私と勝負をすると言い出しかねない、

 そういう口実で突っかかってくるバカがいるかも。」


「あー いますね。その時々で自分と相手のジェンダーを故意に都合よくすりかえようとするの。

 ゲイモドキとは うまいこと言う」タンタン


「感心している場合か」セバス

「そういう時は 私の出番ですな」


「いや モドキにまともな話は通じません」タンタン


「そうそう だから 私が自分でぶちのめさないとだめでしょう」


「どうぞ お嬢様、鍛錬(たんれん)の成果を見せてくださいませ。

 私も うまく立ち回ってお助けします」シノ


「いざという時には シノが女に戻って成敗!ってやつね」


「そうです。そういうことだけは 理解が早いですね」シノ


「たぶん 夢に見たんだと思う」


「なんという世界の夢を><」セバスは嘆いた。


「でもおかげで 宮中の舞踏会問題が解決しましたね」シノ


「肝心のステップを覚え直さなきゃ

 っていうか 私 ダンスの稽古まだしてないよね」


「それも流行がございますから。」セバス


「今の流行は ワルツとタンゴです。

 社交ダンスはワルツ

 恋人ダンスはタンゴとなっております」タンタン


「もしかして私がシノとタンゴを踊るの?」


「あっ いや宮中の王様の前で領主がそろって披露する踊りは、カ・マテ

 先頭にたつのは 今年新領主着任のお嬢様です。


 晩さん会などの社交ダンスは 1曲目がワルツ。

 領主は、自分が選んだパートナーと入場して踊ります

  お嬢様の場合は シノですね。


 あとは任意です。

 そしてラストダンスは 意中の方もしくはそれに準じた方とタンゴです」


「カ・マテとは?」セバスが尋ねた。


「今年から 領主は全員男装と決まったのだから、

 ただの社交ダンスではつまらない、勇壮に男らしく決めようと言う話になりまして、

 古代の踊りの復活となりました。

 王都では すでに稽古が始まっております。

 私も 講習会に行ってきました。


 それはこういうものです」


タンタンは 腰を落として「カ マテ! カ マテ!」(私は死ぬ! )


私もあわせて 「カ オラ! カ オラ!」(私は生きる!)


タンタン 「カ マテ! カ マテ!」


私    「カ オラ! カ オラ!」


一緒に

「テネイ テ タナタ プッフル=フル  (見よ、この勇気ある者を。

 ナア ネ イ ティキ         この毛深い男が

 マイ ファカ=フィティ テ ラ!    太陽を呼び 輝かせる!)


 ア ウパネ! カ ウパネ!       (一歩上へ! さらに一歩上へ!)

 ア ウパネ! カ ウパネ!

 フィティ テ ラ!」          (太陽は輝く!)


腕を組んだり叩いたり足を踏み鳴らして気合を入れるハカは爽快(そうかい)だ。


かっと目を見開いて相手をにらみつけたり あっかんべ~と舌を出すポーズに

セバスは目を覆ってしまった。


「お嬢様が ご存知で助かった。

 じゃ 今度はお嬢様がリードしてください。」


「OK セバス・シノも一緒に V字隊形で行くわよ!」

シノは勇壮に 掛け声で応じてくれた。


・・

ハカで気分一新したところで 私は問題点を指摘した。

「ワルツの男子ステップ知らない

 タンゴの経験ない

 特訓お願いします」


セバスは黙ってバイオリンをとりあげ、私は シノやタンタンを相手に ワルツやタンゴを踊りまくった。


 もちろん 男性パートで。

 慣れると女性パートよりも踊りやすかったが、シノの方が背が高いので

 女性役の体を回す時だけは互いに手を離して踊ることにした。


ダンスの稽古の合間に 私は採寸され、仮縫いの試着も済ませた。

仕立てはもちろんピピ・ララ


門番は 今朝がたもどってきた管理人ことドードーだ。


「ドレスより男装の方が安上がりなので助かりました」シノは寝る前に言った。

※ 土日休日は 朝8時 

  月~金は  朝7時の1回投稿です


(参考)

ハカ「カマテ」について

  https://www.worldfolksong.com/folkdance/haka-war-cry.html


  (解説とビデオへのリンクもあり)


生徒達が亡き恩師への追悼ハカ (変遷を重ねながらも今もニュージーランドに根付いているハカ)

  https://www.youtube.com/watch?v=kEu94KBzMq4


 以前 日本に来ていたニュージーランド女性が、

 ハカは 性別に関係なく パブで気の合った仲間同士でやることもあるのよ~と

 披露してくれたのを見たことがあります。

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