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貧乏領主になりました  作者: 木苺
第3章 王都でのお披露目 :王都への旅
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スキー

あれやこれやと お貴族様の特訓とやらをたっぷり受けながら 木箱の中の移動が続いた。


野宿をしたり、時々廃屋で休みながら。


 これらの廃屋に、地下部分はなく、

ただ屋根と壁があるだけの土間に、新鮮な藁がたっぷりと入っているだけだった。

 

馬車を外において、馬と人は仲良く屋根の下で 休んだ。

 

 煙突のない暖炉があり、そこで簡単な煮炊きをした。

 

「なぜ 煙突がないの?」


「人目に立たないように、臭いが森に広がらないようにです」シノ


「そもそも 私たちだけなら火も起こしませんよ」セバス


「えっ?」


「軟弱なお嬢様の健康のためには、時々お湯を飲ませたほうがよいというだけのことです」セバス


「誰でも 初めての旅の時には 時々 湯を飲みながら休息をします。

 セバス 貴方だもそうだったでしょう!」ピシりとシノが言った。


「じゃあ もしかして 旅慣れてくると 途中で火をおこすことなく移動するの?」


「マキを燃やせば どうしても痕跡が残りますし

 どんな燃料でも 燃焼するときに 水蒸気や臭いを出しますから。」シノ


「うわぁ 天河家の人達って 忍者の家系なの?

 それとも ヒノモト国ではそれが当たり前なの?」


「どちらかといえば 天河家ゆかりの者全体が シノビ系と言えなくもないですが

 それも極秘事項です。

 セバスは 本当に口が軽い」シノ


・・・

その後も続く馬車の旅。


もはや日数感覚もない。


ある日突然馬車から降りて歩くように言われた。

馬と馬車は 小屋の中に置き去りだ。


()一時間も歩くと森の外に出た。

 一面の銀世界だ!


「こっから スキーです。」シノ


うひょ~


「死にたくなければ 決して転ばないでください」シノが先頭を行く。


私は彼女の腰に手をあてて、しっかりとついていく

 早い話が 私はスキー板を履いて シノの腰にしがみついて 両足をそろえてひっぱられているのだ。


その少しあとを セバスが付いてくる。

わだちからはみ出すことなく正確にあとをついてくる。


夕暮れには 洞窟についた。

 洞窟の奥で1泊した。

 温泉はなかった。


火をたくと洞窟の天井の氷がとけるから 焚火も無し

ただ 体をよせあって毛布を巻き付けて眠るのみ


翌朝 燭光の中 急こう配を一気に下りおりた。

 先頭はシノ シノの腰を私がつかみ 私の腰をセバスがつかんで 一塊(ひとかたまり)になって下降した。


山を下りきったら ふもとの小屋まで めいめいですべっていくことになった。


「バランス感覚だけは身についたでしょうから あとは自分でスティックを使って体を前に押し出し ついてきてください」


シノはあれよあれよという間に滑っていく。

私も必死にその後を追った。

 気持ちよく滑れたので 小屋についたときは 爽快だった。


小屋に入ると 暖炉で火起こしだ。

 なたまきを削ってを作る

 細薪も作る。

 細薪の外側下部や、太巻きの真ん中の外皮に 鉈をふるって、樹皮がペラペラ薪から飛び出すように加工。加工するのは どちらも1本づつでいい。


 火打ち石で 木っ端に火をつけて、その火を細マキに移し、細薪から太い薪に火が映ればもう安心


私が暖炉の用意をしている間に、セバスは割った氷を鍋一杯に入れて持って来た。


「雪は見た目はきれいですけど (ほこり)の回りに氷の結晶がくっついてできたのが雪なので不衛生です。


溶かす時間はかかりますが できるだけ 氷を溶かして使ってください」


そう言いながら 氷入り(なべ)を火にかけた。


「ねえねえ、タンタンは このコースを 一人で移動したの?」


「いいえ タンタンは 船と馬で王都に向かいました。」

セバスはあっさりと答えた。


「???」


「彼は 隣の領の前領主の末裔ですから、冤罪が晴れたときに、自由通行証だけは取り戻したんですよ。

 だから 我々と違って 事前手続きなしに どこの領の関所も通れます。

 それで いくつかの領を通り抜けて 船で王都に向かいました。」セバス


「前は、松林県出身だと言ってなかった?」


「竹林省の外側には、とても小さな領が寄り集まっています。

 そして 中にはお家騒動を起こす領もあります。

 そこでタンタンの両親は松林県に来てくらしていたのですが、

 タンタンは 親元を離れて梅園県で商人として独立した生活を始めたのです。


 お家騒動に絡んだ話をあからさまに言いたくなかったので あいまいな言い方をしてすみません」セバス


「領主として 情報は 正確に誤解の余地なく伝えるよう要求します!」


「その件に関しましては、王都での謁見の結果次第とさせていただきましょう」セバスチャン


(`´)


「で、 話を元に戻しますと、

 よその領を通る時には 身分に応じた心づけを渡さなければいけなませんし

 体裁にも気を使いますから 

 経費節約のために 我々は 自分の領をつっきって王都に行くことにしました。」

何気ない顔で セバスは言った。


「じゃあ 途中の小屋にあった(わら)とかは・・」


「私が 隠れ里を通して 用意させました」シノ


「隠れ里?」


「竹林省というのは 特殊なんですよ。


 王領の南端と竹林省の北端が接しています。

 うちの北端というのは そのぅ 森林から山岳地帯 そして原野、

 これは峡谷とその向こうの領外も含みますが、それら一帯が無人の地ということになっています  が、実態はですね、過去の王族などが住む隠れ里が点在しているのです。


 竹林省の外の小さな領主たちとは別にね、


 竹林省成立の経緯は、隠れ里を平定した将軍が

 その褒美に平定した地域と海辺の土地をもらって

 以後も監視の任についたということになっているのですが・・


 隠れ里を攻め滅ぼしたのではなくて、

 王都に住む王族に反旗を翻さないように説得してまわったor説得して回っているというのが実態ということになっています。


 そもそも隠れ里の者の多くは、もともと 現王族よりも 天河家との縁の方が深いですから。


一方 隠れ里の人間は 見知らぬ者の訪問を嫌いますからね、

新領主が王都に挨拶に行くときは 里を通らず 今私達が通っているコースを利用して年賀に伺うことになってます。

 表向きは 経費節約ということにして。」とシノの説明。


「じゃあ タンタンの準備というのは?」


「新領主が年賀に(おもむ)く先払いです。

 対象は主に 一村領主などと呼ばれる小さな領ですが。 」セバス


(@_@。 (◎_◎;)


「お城の中で説明しなかったのは これは秘中の秘だからです」シノ


「私だって 隠れ里に行ったことはありません」セバス


「あなたは 祖父の代で隠れ里を出たほとんど部外者も同じだから」シノ


「ってことは シノさんは?」


「何も聞かないでください」


「この人はね 隠れ里でもかなり上の方の人だと思いますよ。


 おそらく 年賀の案内人を買って出て、我々の品定めをしているのでしょう。


 王都での式典にも 隠れ里出身者が何人か紛れているはずですから

 そこで あなたの器量を計って 今後のうちの領との付き合い方針を決める参考とするはずです。


 だからこそ あなたには立派にふるまっていただかなくてはいけません」

セバスがあきらめたように言った。


疲労と新情報へのショックから 空腹を強く感じた。

 呆然自失(ぼうぜんじしつ)するかわりに 生存本能が前面にでてきたようだ。


「お(なか)減った」


セバスは 鍋の中の沸騰した湯に インスタント食品(乾燥野菜と干し肉・干飯ほしいい)を放り込んで 雑炊(卵抜き)を作った。


干し肉のうまみと塩気のおかげで 結構おいしかった。


食事の後は 暖炉の前で横になった。


わけのわからない変な夢を見た。

※ 土日休日は 朝8時 

  月~金は  朝7時の1回投稿です

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