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貧乏領主になりました  作者: 木苺
     土地の管理と領民の暮らし
26/123

領主の収入源:土地の賃貸料

(1/2)

バッキ―の店が立っていた場所は もともとうちの一族の所有地だった。


領内の土地の所有権はすべて領主にある。

これは 国の定めだ。


領主は 自分の土地を領民に貸し付けて収入を得ている。

領民は 基本税・均等税・借地料と3重の徴税を課せられていた。


だから庶民の暮らしはいつも苦しかった。


しかし 先々代は 竹林省内に住む者には、30年分の地代前払い制を認めた。

地代を払った者のみが その土地を利用できる。

借地権の転売も土地のまた貸しも禁止だ。


もし地代を払った者が30年以内に死んだら、端数切り捨てで残った年数分の賃貸料から手数料をさしひいた分が 同居親族に返還される。


死亡者の同居親族が、同じ土地を利用し続けたければ、新たな地価にもとづいた賃貸契約を領主と結んで賃料の前払いをしなくてはならない。


一方 万が一にも領主の配置換えを国王が決定した時には 次の領主に 前領主とかわした契約と同じ条件で賃貸契約をひきつがせることを 先々代は国王に認めさせていた。

この認可は恒久的なものだった。


うちの領主は 土地を細分化して領民と、格安価格で賃貸契約を結んでいた。

おかげで よその領主たちは 誰もうちの領地を欲しがらなかった。

軍事侵略しても 土地の実行支配をしたければ領民一人一人と契約更新交渉をしなければならなかったからだ。


おかげで うちの領地は3代続いて直系の子孫にひきつぐことができた。

軍事力に乏しい一族であったにもかかわらず。


・・


さて 私が眠っていた間、土地の契約の更新や確認がおろそかになっていた。


フローラは書類と実際との齟齬を確認はしていたが、

再契約交渉まで手が回らなかったのだ。

 そしてセバスは 頭が固いわりに女に弱いので、交渉役には適さない。


一方で 慣例により 領主が交代した時には 契約の再確認を個別に行うことになっていた。

(この場合は、新領主から 地価に応じて、土地代金の値上げを持ち掛けることもできた。)




というわけで 私とフローラと新たに徴税官に任命されたケイタ―の出番です。


領内では、契約期限の切れた人のほとんどの契約更新が保留されていた。



ただし領都ペンペンを中心とした竹林県内では、契約更新と、30年分の賃貸料の前納を済ませた富裕層が多かった。



というのも、新領主就任を祝うレセプションに出席したり、1日だけの名誉大臣(名前だけで実権なし)の栄誉を得るためには、

土地の賃貸契約の更新を済ませ、30年分の賃貸料を前納済みであることが条件であったからだ。


 それらの前納条件を見たした者だけが、レセプション参加券や「1日だけの名誉大臣席」購入のための入札やオークションに参加することができた。


竹林県は 質実剛健を良しとする気風であったので、富裕層に多額のタンス貯金があった。

(もともと税率の低い竹林県の領民の暮らしは安定しているうえに 娯楽に乏しいので貯蓄率が高かったともいえる。)


それ故、レセプション参加や「1日だけの名誉大臣席」購入に応募するために、

多くの富裕層はこぞって 土地の契約更新と30年分の賃貸料の前納に努めた。


さらに、契約を更新し、賃貸料の前納を済ませた者の氏名が、それぞれの町の中心に立てた看板に大きく張り出されたので、レセプション参加を希望しない者もまた、契約更新と賃貸料の前納にいそしんだ。


それを見て 庶民もまた、いずれ始まる新領主着任にともない、徴税官がやってくる日が近いと悟り

自分達の土地の契約書を見直したり、収めるべき賃貸料の準備を始めていた。


 幸いにも、ペンペンを中心とした竹林県内の多くの人々は

 領主就任レセプションのおかげで 臨時収入をたっぷり蓄えていたので、

 徴税官がやってくると、胸を張って 賃貸料の前納を済ませることができた。


「こうなることは予想済みだったので ちゃんと貯金してたんですよ」

とほとんどの者が自慢しながらの一括前納である。


というのも 一括前納者の氏名もまた、町の立て看板に記されたからである。



しかし、中にはバッキ―のように、土地の賃貸権を相続していたものの

賃料が全く払えない者もいた。


この人々は 借地料を 毎月払いの分割納入することを選択することができた。

 (ただし、この場合2か月続けて未払いの場合は 土地を没収されそれまでの住居からおいだされてしまう。)


しかし中には、すでに契約切れのまま、新たな賃貸契約を結ばず、同じ土地に居住し続けて

徴税官が訪れるまでの土地の賃貸料が そのまま「未納=領主への借金」として膨らんでいる者もいた。

 梅園県には 特にこのような者が多かった。


 これらの者は、新たな賃貸契約も結べず、「借金だけを背負った浮浪の徒」に転落だ。


そうした者への救済策として、フローラがすでに

「領主が経営する集合住宅や貸家の賃貸及び、未払い土地代返済計画と抱き合わせの就労斡旋・支援事業(案)」をたてていた。


(案)というのは これを始めて実行する領主が私だったから。


「お嬢様が眠っている間に 案を練る時間はたっぷりとありましたから。」と自信満々のフローラ。


「僭越なら 私がお出しした3つの課題をすべてクリアされた新領主さまのために

 他県を含めた竹林省全体での徴税活動に、私は全力であたる所存でございます」とケイタ―。


この3つの課題とは、ウマイヤの再教育・バッキ―の救済・オカミに騙されないことであったというから 参るわ。ほんと。


(ちなみにバッキ―の場合、パン屋の敷地代金は、バッキ―との共同オーナーである私が

 立替払いで領へ前納した扱いになっている。

 しかも バッキ―とウマイヤは 私の館に住んでいるから、住居用の土地代金を支払わなくても良いのだ!

  これは 館で雇用している他の者達にも当てはまる)

※ 土日休日は 朝8時 

  月~金は  朝7時の1回投稿です

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