バッキ―のパン屋さん① (画像あり)
朝6時開店
朝食用に バゲット・バタール・ブールと、食感の異なる3種類の焼き立てパンを店頭販売
朝7時~8時 モーニングコーナーも営業
ここでは 具材がはっきりと見えるオープンサンドイッチと飲み物が提供。
バゲットとバタールの生地は同じだが、細長いバゲットに対して ずんぐりめのバタールは少しもっちりとしている。
これぞ パン作りの腕!がなせる業
同じ生地でも 成型方法を変えることにより、食感の違いを出す。
バゲットは細長いので、輪切りにしてオープンサンドイッチの土台にもなる。
お上品なお貴族様では オードブルの土台にする。
フランスパン全体に言えることだが、バゲットは特に、時間がたつとどんどんバリバリに硬くなっていく。
だからこそ バッキ―家では、売れる分づつ 1日に何回も分けてパンを焼き
できるだけ 焼きたてパンを店頭に並べるようにしていたのが、人気の理由だった。
町の人々が、「自分でパンを焼くのにうんざり」している理由は、
よその店同様、自分のうちでも パンを焼くのは1日1回がせいぜいなので、
毎日の食事の半分以上は、硬くなったパンを食べなければいけなくなるからであった。
その点、バッキ―の店なら 朝でも夕方でも焼きたてのパンが食べられる!
このおいしさのありがたみを 最近 再確認した町の人々であった!!
モーニングコーナーを開設するにあたっては、一膳めしやのオカミと事前に協議した。
実は 一膳飯屋「女将」では 以前、「朝ごはん」定食を出していたこともあるのだが、売れ行きが安定せず赤字になったので 今は「昼定食」に特化していたのだ。
「お客さんが一人で来るのではなくて、団体で来るんですよ。
しかも毎日来るのではなくて 各家の事情にあわせて・・
だから ご飯を用意しても余ったり 足りなかったり。
それに 一人で「朝定食」を作るのも体力的にきついですし・・
人を雇うほどの売り上げもないしで・・
だから バッキーさんがモーニングコーナーを出すのは うちとしてはぜんぜんかまいません。
むしろ 私を雇ってもらえたらうれしいくらい」
とオカミはちゃっかり自分を売り込んできた。
「それより これからは 俺を仕入れ担当として直接雇ってくれませんか?」
逆に自分を売り込むウマイヤ。
「そうね あなたがお城に研修を行っている間、ケイタ―さんちの若い子が代わりに仕入れを代行してくれているのだけど とにかく高くついてね。
これまでどおり あなたが仕入れを請け負ってくれるなら大歓迎よ」オカミ
セバスがこっそりとイヤホン型通信機を使って解説してくれた。
「これまで オカミは食材の仕入れをケイタ―に頼んでいたのです。
ケイタ―は オカミから依頼料を受け取り、ウマイヤを派遣すると言う形をとっていました。
ウマイヤは オカミから仕入れの実費分しか受け取っていませんでした。もちろん実費の中には運送料も含まれています。
現在 オカミの仕入れを担当している若者は、自分に対する手数料を上乗せしています。
もちろんケイタ―が許容している範囲でですが」
その説明を聞いてから 私は二人の会話に加わった。
「だけど オカミの店の仕入れは、ケイタ―さんと契約していたのではないの?」
「最初にケイタ―と契約した時、仕入れの代行契約は1か月更新にしてあったのです。
一人で店を切り盛りしていたら 急に休業することがあるかもしれないから、
休業中の仕入れをしない月の契約料を節約できるようにってことでね」オカミが言う。
セバスから追加の情報が入ってきた。
「先日 ウマイヤといっしょにケイタ―の所へあいさつに行きました。
そのおり 餞別代りに オカミの店の仕入れ分については、契約をウマイヤに譲ってもいいと言われたのです。
条件は ウマイヤが自分で直接オカミと話をつけることって。
それと ケイタ―がこれまで契約したことのない相手と 仕入れ代行の契約をウマイヤが行うのは許すと言う言質もとってあります」
「なるほど。ケイタ―さんの面子をつぶさず、ケイタ―商会とトラブらず
城での勤めに支障をきたさず、顧客とまっとうな取引をするなら
ウマイヤ あなたの副業として オカミとの取引を認めるわ。」
私はもったいぶってウマイヤに話した後、オカミの方をむいてにっこり笑って付け加えた。
「ただし、あなた達二人の間で条件が折り合えばの話だけど」
「ありがとうございます。
まっとうな商いは 私の信条でもあります。」ウマイヤは頭を下げた。
そして ウマイヤとオカミのあいだで 契約交渉ができるように
私とバッキ―は席をはずした。
セバスチャンは公証人として ウマイヤとオカミの話に立ちあった。
城にもどってから セバスに 「ずいぶん面倒見がいいのね」と言うと
「いや ちゃんと公証人としての手数料は頂きました」と返事がもどってきた。
実のところ セバスは公証人、フローラは教師や事務仕事を副業にして
自分たちの生活費を補っていたらしい。
だから領都の人達は 城務めの人間がアルバイトをすることに慣れていた。
なにしろ 優秀な人材を仲介料なしで雇うことができるし
自分達が 城の人間を雇うことにより 領主の懐が潤って
自分達の納税額が下がるなら儲けものと考えているらしい。
「なんでそうなるの?」
「だって 領民一人一人の収入の1%の基本税に加えて、年に一度 徴税の費目が公開されて、それを領民が均等割で負担するのが 我が領の納税システムですから」セバスチャン
「え~~~~~!」
「もちろん領主の私的財産はマル秘ですけど
インフラ整備とか 飢饉対策とか いろいろ名目をつけようと思えばいくらでも付けられるんです。追加徴税の理由は。
でも うちは 年に1%の基本徴税だけで、追加徴税はやってません。
しかもよその領とは違って 領主の個人財産で孤児院を経営してますから
私達がアルバイトでもしないといけないぐらい 城からの御給金が少ないのだろうとは みんな思ってますよ」フローラ
「もともと どこの城でも雇い人の給料は少ないですよ。
それを補うのが 部下の給料のピンハネですからね。」
とセバスが補足した。
「そうそう よその領では 基本徴税は 収入の5~10%です。
うちは もともと3%と税率が低かったのですが、
お嬢様は眠りにつき、先の御城主様がなくなってから
私達で税率を1%に引き下げました。
ここまで 税率を引き下げる領主なんていませんから
領民たちも 幼いお姫様を領主としておくことに協力したのです。
眠り姫であることはマル秘でしたけど、次期領主が幼いことは隠しようもありませんでしたからね」とセバスチャン。
「それに 梅園県と松林県では 県令たちが税率3%のまま据え置いて、
近年は毎年の追加徴税の額も増える一方でしたから、
ご領主様の直轄地である竹林県では、お姫様の代になってから税率が1%で追加徴税が無しであったということを知った隣県の住民達が、自分達は騙されていた!と怒って一斉蜂起して、
先日の裁判沙汰の時には お嬢様の加勢にかけつけ、
梅園県と松林県も新領主であるお嬢様の直轄地となることを求めたのです。」フローラ
「なんで そういうことを 最初に言わなかったのよ。」
「一度に言えば 混乱するでしょ。
それに尋ねられませんでしたから」
すまし顔で答えたセバスをけっとばしたくなった。
「決算書を報告するときに ちゃんと説明する予定でした」とフローラがつけ加えた。
「私達の副業を 果たして御領主様がお認めくださるかどうかわからなかったものですから。」
「粉飾決済だけはしないでくださいね」私
「わかりました」二人はそろって頭を下げた。
※ 土日休日は 朝8時
月~金は 朝7時の1回投稿です
画像引用元
https://tg-uchi.jp/topics/3793




