フローラとシノ
「ところで、どうして御庭番がシノではなくてタンタンなの?」
就任表を見て気になっていたことを尋ねた。
「シノにはご領主様の指南役をと考えまして」セバス
「なにを指南させるつもりだったの?」
「マナーから護身術までレディ教育と領主教育のすべてを」セバス
「私は外交担当ですし、マナーの中には同性から習った方がいいこともありますからね」と言葉を足した。
「なるほど」
「以前にも申し上げましたが、それぞれの役職の責任者が、部下の採用にも責任を持ちます。
たとえ 賃金の上納制を廃止しても、チームリーダーとして 人事に関する裁量権も与えるのが現状では必要なことではないかと」セバス
「なるほど」
「となれば 武人でもあるシノに、御領主様の護衛と身の回りのこと一切と指南役などを兼ね備えた近習を任せるのが一番であると考えました」セバス&フローラ
「わかりました」
「一方 タンタンは もとは領主階級の出身です。
両親は、松林県下での一族の権力争いを避けて 梅園県で商人となり
タンタンは梅園県で商人の息子として育ったのですが、高度な教育を受けていることは確認しております。
その後 冤罪を着せられながらも 己の身の証を建てるためにあれほどの調査実績を上げた男ですから、
御庭番として情報収集を、覆面巡察間として、3県にまたがる竹林省全体の巡察を任せるのが適当と考えました。」フローラ&セバス
「ケイタ―が徴税人として、表から庶民の生活ぶりを観察し、経済活動を把握するのに対して
タンタンには、金の流れを追いながら、貴族階級も含めた領内全体の金と人とモノの結びつきを
調べさせます」フローラ
「そして それらの情報をもとに 具体的な施政を行うのがフローラ大臣と言うわけです」セバス
「と言うわけで 王都にある天河家の屋敷を管理している者と連絡をとりあい、
王宮と折衝する件については 私にお任せいただけますか?」フローラ
「具体的には 何をするの?」
「竹林省のことに関する全権は天河家にあるのですが、何か異動があった場合には、形式的に ヒノモト国王に報告する必要があります。
また 新領主着任に伴い、ヒノモト国各地にちらばる天河家ゆかりの者達からの支持を得る必要もあります。
それらに関する諸事万事、連絡やら手配などなどです」フローラ
「各地に散らばる天河家ゆかりの者達のことを『里の者』と呼ぶのですが
私は 祖父母の代に里を出て、領都ペンペンのお屋敷に勤めた家の子なので
あまり里との関係が深くないのです。
その点 フローラは 先代の御領主様にお仕えするために里から出てきているので
今も 天河家ゆかりの者との連絡は密に取り合っているのではないかと思います。
里育ちのシノは お嬢様にお仕えするために、ペンペンに出て来たのです」セバス
「わかりました。
幼い時に眠りについて まだ目覚めたばかりの私には そのあたりのことがわからないので
よろしくお願いします」
私はフローラに一礼した。
(じっさい 私は 長の眠りにつく前のことなど何一つ覚えていない。
そうとう 幼いうちに 眠りについたのだろう)
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