花号と仲間たち (写真あり)
いよいよ 出発だ! 新たな航海へ♬
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「とりあえず 海岸めぐりでもしていらっしゃい」
最近 私が会話の最中に 意識が夢の世界にのまれやすくなっているのに気付いたフローラは言った。
「体をしっかりと動かして、おしゃべりして、周囲との結びつきを深めてくださいな」
というわけで 引き合わされたのが、花号とその船長スイレン。
花号は1本マストの平底船だが、帆はクラブクロウ。
帆布2辺は桁と呼ばれる材に括り付けられている。
上図では下側の桁BCが直線に描かれているが、実際には、カーブしている
さらに桁のない帆布の上辺ABもカーブしているので、帆の形が まるでカニの爪のように見えるからクラブクロウと呼ぶ。
花号の帆桁は竹製で軽いので、一人で帆を立てたり倒したりできる
正直言って船の構造や帆の仕組みがぜんぜんわからなかったが、船長一人で操船できるうえ、風上に向かって進むことのできる船だそうだ。
「積載量は1頭立ての荷馬車とかわりませんが、風向きさえよければこっちの方が速いですし、馬の餌代がかからない分、お得ですよ」
と言って スイレンは笑った。
以前 積載量に関して、
馬1頭で米2俵=約120キロ
一番小さな川下り船(船頭一人)で米25俵=約1.5トンという記録を紹介したが、
荷馬車を使うと馬1頭で積載量1.5トン 時速4・5キロ(※1)だそうなので
たしかにそうだろう。
ちなみに 馬1頭で米2俵という計算は、馬に直接荷物を背負わせて運ぶことを想定しているんだろうなぁ。
馬車道の作れない山道、舗装のできない所だと 荷物を直接 人や牛馬が背負うことになるわけだ。
こうやって考えてみると、陸上運送にも 自然環境とインフラ技術とコストが相互作用しているんだなと改めて思った。
◇
花号の乗客は、私とララ。
ララは護衛役だ。
その話を聞いた時
「だけど『女性を美しくするためのテクニシャン講習会』とリリーへの侍女教育は?」
「講習会については 一段落つきました。
花峡谷の娘さんたちの今後については フローラにお任せです。
リリーですが・・あからさまに言っちゃうと、あの子 エステシャン向きじゃないということがわかりました。」ララ
「えっ?」
「力加減するのに必要な 感受性が低いんですよ。
だから お客さんに痛みや不快感を与えてしまう。
ホビット寮にいる女の子達と 互いに 体の洗いっこさせたら
一番苦情が多くて、本人も自分が向いてないってわかったみたいなんで 進路設計の見直しとなりました。」ララ
「あら まあ 気の毒に。
貴方も 大変だったわね」
「孤児院では 身辺自立を重視した教育をしていましたから、いっしょに入浴した子供どうしで背中を流しあう体験をさせておらず、相手の反応を見ながら程よい力加減を工夫するとか身に着ける機会がなかったんだろう、ってことに気が付かずに 進路を考えてしまったことを反省してます」フローラ
「あー でも そういうことは その場面にでくわした経験がないと、事前予想しにくいよ」
「ですよね」ララ
「それで 彼女、だいじょうぶ?」
「彼女は 同世代の女の子と一緒にお風呂に入ったり、ヘアメイクをするのが楽しかったみたいで、
その中でごく自然に 自分はそういうのを人にしてあげるより、してもらう方が好きだって感じたそうです。
それで もともとの洋裁の腕を活かして独立したいと言い出しました。」フローラ
「それで だいじょうぶ?」
「これから考えます。
なんとかしないとだめですしね」フローラ
「ごめんね。苦労ばかりかけて」
「お気遣いありがとうございます。
でも それが私の仕事ですから」フローラ
「よろしく頼みます
フローラ一人に 仕事が集中していないと良いのだけど・・」
とまあ フローラに無理させてないか、逆にリリーとホビット寮の住人達に適切な仕事をわりふれるのか、などなど今後のことは気にかかったけど
そして やっかいごとをフローラにまかせてばかりであることに後ろめたさも感じたけど・・
「後のことは任せて安心して 行ってらっしゃい」と言うフローラの言葉に背中を押されるようにして、新たな船旅に乗り出した。
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(おまけ)
・帆布が三角タイプだけど 実はいろいろちがう帆の種類について
『人類学研究所 研究論集 第1号(2013)
オセアニアのカヌー研究再考ー学史の批判的検討と新たな課題ー後藤明』
P224~226の説明をもとにP225の図に色を付けたり説明を書き加えた。
尚、このP225では
「オセアニア型スプリットスル」と呼ばれるタイプにも、「船体に渡した横材にはめ込むマスト役の桁が固定されるかあるいは回転するのか、それとも前後に倒せるように凹みに置かれるだけなのかは大きな機能的相違」があり、「いろいろな機能を持った帆装を混合している」とのホリッジの指摘が紹介されている。
ようは、太平洋諸島では、地域にあったさまざまなバリエーションがあると私は受け止めた。
又、P224では、地中海型ラテン帆とオセアニア型ラテン帆では、「表面的にはラテン型に見えるが両者は機能的にまったくちがう」と指摘している。
尚p224では、「タッキングやシャンティングの際に 」との記述があったが、「タッキングとジャイビング」のまちがいではなかろうか?
ヨットでは 「ジャイブの時のブームの移動に気をつけろ」は常識ですが、
シャンティングというのは聞いたことがない。(ネットでもヒットしなかった)
(タッキングとジャイビングの操船手順については、
https://www.yamaha-motor.co.jp/marine/lineup/yacht/safety/howto/tacking-jaiving/
ディンギーヨットを安全に楽しむために YAMAHA のサイトがわりやすい)
長崎新聞2019年6月8日 https://www.nias.ac.jp/news/file/2793file1_20190610093705.pdf
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パッと見た感じ、船の帆は三角形・四角形・個性的な形くらいしかわからない。
が、しかし 帆布の形が三角タイプだなぁと思っても、実は その構造や機能が全然違っていたりする。
見た目のちがいのポイントは 帆柱の有無、帆桁(帆の端っこを支えるも材木類)の数にあるらしい
そして帆桁の移動のしかたや、帆布による風の受け止め方によって、船の向きが変わる・機能がちがうという話になってくるようだ。
がしかし、西洋船のように帆桁が柱っぽいのならマストの一部のように思ってしまうし
太平洋各地の船だと、帆桁が帆と一体化しているように見えるものもあったりで
パッと見だけでは わからないことが多いなぁと思う。
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海洋センターでヨットを触っているときに、(恥ずかしくて帆走したとはとても言えないレベル)
順風の時は ヨットが気持ちよく前進することにより自分の顔に正面から当たる風と
帆が受ける風向きとの区別がつかなかったり
転回するときには、加減やタイミングがつかめずヨットを横滑りさせたりと
よくわからないまま湾内1周してしまうアホさ加減だった私なので、
(ちゃんと指導者が同乗しており、湾内にほかの船がいない状態での練習でした)
帆走や船の機能について書く自信がまったくないのですが、とりあえず、調べた結果を記しました。
※ 土日休日は 朝8時
月~金は 朝7時の1回投稿です
(参考)
(※1)荷馬車の積載量 ↓のページのかなり下の方に載ってました
https://ja.wikipedia.org/wiki/%E9%A6%AC%E8%BB%8A
・クラブクロウタイプの帆について
https://www.aloha-program.com/curriculum/lecture/detail/391
ホクレア号の模型の写真
ホクレア号・ポリネシア航海術のハワイにおける復元活動などについても このサイトからどうぞ
ウェブセミナーもあります
https://www.aloha-program.com/curriculum/webseminar/archives/detail/137
・オセアニアの船について
〇『人類学研究所 研究論集 第1号(2013)
オセアニアのカヌー研究再考ー学史の批判的検討と新たな課題ー後藤明 』
http://www.ic.nanzan-u.ac.jp/JINRUIKEN/publication/pdf/kenkyuronshu_01/09.pdf
船体の構造、帆のみならず、「紐づくり」まで 地域別の素材とあわせて紹介している
(個人的には、p232~ココヤシ紐製の紐:紐造りに見る身体技法 の項目が一番興味深かった)
〇『国際常民文化研究叢書 5 2014 年 3 月
オセアニアのカヌーの船体構造とその特質―特に板接ぎ技法について― 石村智』
http://icfcs.kanagawa-u.ac.jp/publication/sosho/report_05_02_03.pdf
丸木舟に由来する船底部(刳り船)と、舷側板や船首部・船尾部といった部材を縄や紐で縫い合わせるという板接ぎの方法
「疑似鎧張り技法」は「肋材のような部材」の存在
〇ハワイの森とカヌーその1~4
https://www.allhawaii.jp/hokulea/world-sailing/forest_4/
カヌーの原料となるコアの大木を求めて




