砕石の運搬:港湾施設としてのクレーン&アンローダー、アンローダー搭載船(夢の世界):写真あり
夢の世界の海運の歴史、特に船で何を運んできたのか?と考えると・・
なんとなくの印象ではあるが、
・異国との交流の一環として、異国の文化的文物・先進技術や書物の輸入
↓
・日常生活で必要な大型資材が 地元で賄えない時に国内の別の産地から運んでくる(材木・石材)
↓
・金銀などの交易目的で来訪した異国の人間が押し付けて来た珍しい商品(贈答用の贅沢品など)
↓
・ショーグン様のお膝もとに住む人達へ贅沢品(ミカン・薬など)・献上用の品のとりよせ
・国内のへき地の海産物・手のかかる工芸品(織物など)を 特産地から消費地に運ぶ
↓
・外貨稼ぎの為の輸出(海外貿易の本格化)
↓
・工業原料を国外から輸入(加工貿易)
↓
・インフラ整備のための輸入(木材・砕石など)
国民の食生活・日常生活の質を上げるための輸入
↓
工業製品を輸出する企業を儲けさせるために、黒字超過と相手国からの文句をかわすために
無理やり農産品・繊維産業・家電など生活必需品を輸入させられる
⇧ 政府が実質的に異国に乗っ取られ傀儡政権となり、植民地化されてしまった。
という印象がある。
・かつての花形、貯木場についての記憶がかなり薄くなっているうえ、
天然ガスや石油の運搬と貯蔵については 政治的アレコレが絡んで面倒なので
いずれもパスして
「機械・パワー⇦すげ~」の 砕石の運搬関係の話をしようと思う。
◇ ◇
・バラ荷と言えば、一粒一粒が軽い穀物やチップなどの粉流体もあれば、
石炭・鉄鉱石・石灰岩など、重量系の砕石もある。
港の敷地に 種類ごとに色や粒の大きさ・とがり具合が異なる砕石の山が並んでいるのも
胸躍る光景だった。
砕石が、こんなに いろいろな種類があるなんて! 何に使うのだろう?と。
昔は、バラ荷と言えば、燃料用石炭・鉄鉱石(製鉄の原料)がメインだったらしいが
その後、建築資材に加工される砕石の種類が ずいぶんと増えたようだ。
さらに、砕石から作られた建築資材が役目をはたして廃棄されたものを再活用するために、
リサイクル砕石として再加工して、太陽光発電パネルの下に敷いて雑草が生えないようにしたり、
雨などによる土跳ねを伏せる為のコンクリートクラッシャーなど、
土木関係で使う砕石は、採掘された状態から さまざまに 何度も加工しなおしたりして流通しているらしい。
それを言えば、古くから知られるグアノ(化石化した有機質肥料資材)もバラ荷になるのだろうか??
・この砕石の積み下ろしを行う機械もアンローダー(unload:荷を降ろす、から派生)という。
・かつては、グラブバケット(いわゆるショベルカーの先っぽみたいなやつ)つきクレーンを使って
船倉の荷をつかみとっては陸上に揚げる動作を繰り返していた。
クレーンというと、ついついクレーン車をイメージしてしまうが、作業現場では、
巻き上げ機(資材等の上げ下ろしや横への移動をするためのフックのついたロープと、それを巻き込む部分が一体化したもの)と、巻き上げ機を支えるための躯体を含めて指したもののようである。
その躯体(構造体)の形により、「橋形(or門形)クレーン」「水平引き込み式クレーン」などとと名前が変わる。(※2)
「橋形(or門形)クレーン」
片橋(or片門)形グレーン(※3)
・片側は建屋のランウェイ。片側は地上を走行
・地上側にはレールを埋没せず ウレタン車輪にすることで突起物のない床面にすることができる
・クレーンのパーツである巻上機(=上図や写真で、上からブラーンとぶら下がっているやつ)
この巻上機を構成するのがフレーム・ドラム・モータなどである。
これらのパーツを、標準量産品で構成しているのがホイスト
オーダーメイドの設計・製作品をクラブと呼び分けるそうだ(※4)
さらに 仕様によっても、巻上機の呼称が種類別に変わるので ややこしい><
・水平引き込み式クレーン(※5)
この形を見ると 私が抱く「クレーン」のイメージに近いので ホッとする。
・上記3タイプのように、外形は違えど、バケットで砕石をすくいあげてぶっちゃける方式での作業での問題点は、
①機械を長時間稼働しなければならない。
→連続使用に耐えるクレーン部品の開発が必要
→船の停泊時間が伸びる→海運コスト増・港の回転率が落ちる(=港で取り扱う貨物量が減る)
②つかみ上げたバケットを開いて 砕石を落とすときには粉塵も飛び散る
(=環境問題・労働者の健康問題・ほかの船荷と混じる・掃除がたいへんそう>< etc)
などが考えられる。(すみません。現場知らずの伝聞情報で)
◇ ◇
・というわけでその後、連続式アンローダーが開発された。
アンローダーが港のレールの上を走るのは、穀物用のニューマチックアンローダーと同じ。
砕石用の連続式アンローダーも、先っぽを船倉に突っ込んで砕石などを運び出す。
ただし ニューマチックアンローダーのように、貨物を吸い上げるのではなくて、
先っぽ部分には、バケット(箱)を連続的にチェーンで繋げた「エレベーター」がついていて
そのバケットエレベータの連続的な回転動作で 砕石を運びあげていくのだそうだ。
(エレベーターというと、ついつい 建物の中で人や荷物を運搬する「鎖と箱1個が一対になったもの」が上下する物をイメージしてしまうが、
ここでは 鎖に多数の箱がくっついて上下する。
要するに モノを入れて運ぶ箱を鎖で上下させて運搬するものを、エレベーターと呼ぶのだろう。くっついている箱の数とは関係なく(;'∀') )
ゆえに 連続式アンローダーの製造会社は この砕石を集める(かき集める?)動作を「掘削」と呼んでいる。
(たしかに 見た目はそうだよねぇ。 穀物と違って砕石の積み荷は土砂と言っても良い形状だろうし)
遠目には、ニューマチックアンローダーと同じに見えたが、
稼働原理は まったく違う機械式アンローダーだった。\(◎o◎)/!
(詳細は ※6をどうぞ)
連続式アンローダーが掘削する先端部分
大型砕石運搬船とアンローダーの模式図
運搬船の船倉は、桝のように区切られている。
(仕切りがなければ、船の揺れにあわせて 積み込まれた砕石が 右に左にと流れていって
船がかたむくからだろうなぁ。たぶん。
あと 水密区画の関係もあるのかな???)
◇ ◇
小麦運搬船の中に、ニューマチックアンローダーを搭載した運搬船がでてきたように、
砕石運搬船の中にも、アンローダー搭載船が誕生した。
これをセルフローディング・アンローディングシステム というらしい。(※7)
このタイプの利点は、
①陸側に揚げ設備不要(コスト削減)
②環境に優れた密閉性
荷役装置が船内に配置され、陸上設備に連結されるため、
取り扱い物(石炭・石灰岩など)の飛散・発塵・会場への落粉を抑制
③ほとんどの装置が船内に配置されるため、塩害による腐食が少なくメンテナンスが容易
(一般的に 船は2~3年に1度ドック入りして さび落としや防錆剤の塗りなおしをする
2週間~2・3か月かかる)
④効率的な定量払い出しにより、荷役時間が短縮され、滞船料の削減ができる
・荷揚げ装置を取り付けた船を設計するときには、
積載量だけでなく、寄港先(荷揚げする港)にあわせた 設計をしなければならない。
例えば、揚げ地(港)から揚げ荷役に要する時間を10時間(平均8時間)以内にと求められれば、
アンローダーの運搬能力を上げるために、船底から甲板上のブームコンベヤまで上げるループコンベヤの大容量化必要となる。
寄港先によって、波浪の影響度がちがうので、地上に砕石を吐き出すブームコンベヤの先端の高さ調節しなければならない。
つまり 船が揺れやすい港では、荷こぼれが発生しやすいので、ブームコンベヤの先端を地上側の受け口に寄せるのだ。
その場合、潮位の干満や、船体のバラスト調整のために喫水が変化するから、ブームコンベヤの角度が変わることにも対応する必要がある。
(砕石という重量物の貨物を、船底から 甲板までどんどん上げて、それをさらに陸に下ろしていくので、船内での重心が変わる(と転覆する)のを防ぐために バラスト(船のバランスをとるための水)を調整するのだ。)
しかも 船体が揺れるということは、ブームコンベヤの先端も動くということであり
そうなると、陸側の受け口から外れるから、それを防ぐために、船の揺れを検知して、
各部の調整をするシステムが必要 etc
説明を読めば読むほど、港にアンローダーを設置するよりも、船にアンローダーを設置することの方がむつかしいことがよくわかった。
・アンローダー搭載 石灰石運搬船の アンローダーを使った積み出しイメージ図
この船に積み込まれていた石灰岩は、この船のブームコンベアの先端から、
直接 陸上の運搬用コンベアに排出され、保管施設へと運ばれていく。
もし、港にセメント工場があれば その工場内に直接運び込まれてセメントに加工されるのかもしれない。
そうなると荷役人足だけでなく、トラックも不要になるかもしれない。
このようにして、埋立地と港湾整備を伴う臨海工業地帯と大型船による大量輸送が二人三脚で発展してきたのかもしれない。
そうなると、荷揚げされた船荷を国内各地に配送する手配を行う「港湾運送事業・仲立業」の形態が変わりゆくのも 納得である。
アンローダー搭載のブームコンペアから排出された採石が、陸相ベルトコンベア(茶色の部分)に乗って運ばれていくイメージ図
(元の図では 陸上部分が水色に青の波模様が入っていて、ものすごく紛らわしかったので
ベージュの斜線を入れました。
たぶん 岸壁に横付けにされたアンローダー搭載船の向こうに見える青い部分が海だと思うのですが・・
港によったら、海上に 陸上ベルトコンベアらしきものが付きだしている写真もあっただけに・・
解釈がむつかしい・・・
興味を持たれた方は 双眼鏡をもって 港湾の見える高台に行って 実地に各地の港を見て回るのが良いかも。
予備知識なく港を見ても謎だらけなので、写真と解説で予習してから 各地の港を見て回り
現地で仕入れたパンプや自分が撮影した写真と、予習した時に使った資料を見比べて復習
(でも わかりにくいので 航空写真を見たり地形図を見て 見学ポイントを再設定してまた実地を見に行くw)
(参考)
※1 http://asahi-sangy.co.jp/blog/post-5128.html より画像引用
朝日産業株式会社の宣伝サイト
※2 https://kito.co.jp/products/cr/bridge KITO
この会社のサイトのトップに掲載されていた橋形クレーンの構造図を見て
はじめて 他サイトのクレーン写真の意味が分かった。 激感謝であります!
※3 https://naniwa-crane.co.jp/products/bridge.html 株式会社ナニワ製作所
橋形クレーン・片橋形クレーンの写真が豊富
※4 https://www.nipponhoist.co.jp/crane/ 日本ホイスト株式会社
「クレーンの話」
ここで クレーンの歴史や用語集(専門的・図が豊富)を見て、やっとばらばらのピースが
形になってきました。
ほんと、「港で見かけるあのごっついの何?」という素朴な疑問から
藪やら迷いの森やらにさまよいこんで ジタバタ四苦八苦していたので・・
最初に ここのサイトに出会ってたら もっと楽だったのに‥と思いましたorz
※5 https://www.pref.toyama.jp/documents/6143/01442959.pdf
富山県土木部 港湾課 H29nenn10月
国際拠点港湾 伏木富山港に設置するクレーンを、
海上輸送してきて、新湊大橋をくぐって入港し、中央ふ頭に陸揚げ~稼働までを解説
豊富な図と写真が直観を刺激する
※6 https://www.shi.co.jp/tech/create/unload.html 住友重機械工業
・このページの2本動画では、モデル化した映像を使って、船から砕石を取り出していく様子が
かなり詳しく具体的に説明されています
※7 https://www.mitsuimiike.co.jp/products/transport/harbor/self.html
三井三池・(米刀 の下に衣)作所
動画と船の写真あり
※8 https://www.tex.nipponsteel.com/pdf/810/
船舶用アンローダーの建設 (写真が豊富)
呉のエンジニアリング事業部の連絡先は書いてあるのだが 社名がわからない><
※9 画像出典 https://www.tex.nipponsteel.com/project/2175/
※9のサイトのロゴとページアドレスから推測すると、※8のサイトも日鉄テックスエンジ(株)かな
日鉄テックスエンジの社史を読むと、重工業の発展には、海運の発達が重要であり、それが多角的に展開していく様が実感できる。
〇セルフアンローダー船の写真と内部の動画:西部造船会
https://www.jasnaoe.or.jp/old_sites/wjsna/mm/007/article02.html
(お詫び)
・アンローダーを搭載した砕石運搬船の構造を詳しく記したサイトがあったのですが、見失ってしまいました。
そこでは、砕石の詰まった区画(ボックス上の船倉)が、ベルトコンベヤー式に 船に取り付けたアンローダーの下まで動いていき、
そこから、船が搭載するアンローダーが それらの砕石を荷下ろしする過程が、各部の写真と図を使って詳しく説明されていました。




