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明子と灯  作者: 平 修(たいらおさむ)
2/4

―夏編―

今回は夏編です春編からギャグ2割増しです。お楽しみください!

「―夏編―」


 寄稿:平修


 スマホ画面に没頭する女子が一人、彼女の名は明子(めいこ)

 自由奔放でオタク趣味の専門学生、一応漫画専攻に通っている茶髪のロング。

 その隣で雑誌を読みふけっている女子がもう一人、彼女は(あかり)、明子とは同じ学校のクラスメイトで髪型はボブの黒髪。

 この築40年の学校から電車で30分くらいの県内にあるボロアパートに二人は共同生活していた。

 幼少期から腐れ縁で昔はどっちが上で先を行っているかでよく喧嘩するが結局一緒にいるのはとどのつまり仲がいいのかもしれない。

 ふと、灯が雑誌をたたむとぼそりと言う。

「明子、さっきから何見てるの」

「んーー新種のUMAに関する報告レポートについてのネット掲示板! 面白いぞ! 未知の生命体っ」

「おい、マニアックすぎてついていけないよ! それ、大体何語だ」

「もちろん英語さ、アイファインドゥイット~」

「あんた英語できるの? 存外やるのね、頭がフリルとロリータでできていると思っていたのに」

「はぁ? 馬鹿にしているの、もちろん嘘だけど」

「嘘なのかいっ! あとフリルとロリータは否定しないのか」

「それは命!!」

「言い切ったこの頭ほわほわ! というか私のほうがなんか馬鹿にされてる気がする!」

 二人の益体の無い会話。

 灯が息を切らす。

「あんたのその自由さはどこから来るのやら」

「自由って大事だぞ、ふりーだむな心が大らかさを育むのだ」

「付き合いきれん家賃払うのやめてバイトしてほかの家探そうかしら」

「それはやめて灯様!」

「よし、黙れ、そしておとなしく従え」



 ◇◇◇◇



 そんなこんなで明子は灯に謝り、ヒートアップしたかと思われた漫才はお開きになった。

「で実際何見ていたの?」

 灯が明子に聞くと彼女は、

「んースーパーのチラシだよ、ウェブチラシ。買い出しそろそろでしょ」

「むっ、そうね、明子、そろそろ食料品がなくなりそうな感じだったわ」

「で今日は卵一パックおひとり様一点限りにつき60円なのよ! 買いでしょ!」

「嘘、たとえ物価の優等生といえどもけしからん値段だ! すぐさま入手して今日はミートオムレツパーティーだ!」

「いいね~! それコスパが高そうだ」

 二人は目を見合わせて頷く。

「「そう! スーパーに行こう」」

 同時にそう言った。



 ◇◇◇



 意気揚々と外に出ようとする二人、するとポツポツと雨が。

「な、これは組織の陰謀か! 天候操作によるミッション妨害とはやってくれる!」

 明子が電波な妄言を吐く。

「あんたほんと脳内どうかしているよ、どっかのタイムリープするアニメの見過ぎだ、それ」

「ふんすっ」

「頼むから真顔でやるな、あと傘持ってこう」

「そうね、雨だけに止む無し」

「誰がうまいこと言えって言った!」

 二人は傘をそれぞれ持ってポケットにエコバックを入れスーパーに繰り出す。

 ほどなく歩いてスーパーにつくと人で賑わっており広々した店内は今、人でひしめき合っていた。

「卵はどこじゃい」

「落ち着け、戦いはまだ始まったばかりだ」

 二人はそれぞれ喋り、焦りながら探す。

 すると一段と人だかりの多いコーナーを二人は発見する。

 当然、目当ての卵は既に品薄だった。

「急がないとやばい!」

「そのようね!」

 あれよ、あれよといううちに特売の卵は買い物客のかごへと吸い込まれていくのを見て二人は焦ってコーナーに向かい。

「よっしゃゲット!」

「やったわね」

 しかし、レジに行って会計を済ませようとすると。

「申し訳ありませんお客様、こちらの商品は当店で二千円以上お買い上げの方のみのサービス品でして、もう千円お買い上げいただくかキャンセルしていただくかのどちらかになります」

「どうする灯、なんかここで帰るのって癪じゃない? あんたどう思う?」

「これは確かに同感ね、冷蔵庫も空だし、もう千円買い物していきましょう」

「らじゃ」

 ということで買い物を再度計画することになった女子二人。

 スーパーの入り口から商品を物色する。

「いい? 千円だからね! 千円! どうせだから日持ちするものにしましょ」

 明子が言うと、灯が頷きながら。

「はいよ」

 と答える。

 灯が人参、ジャガイモ、玉葱、それから缶詰少々をかごに入れてうーんと唸った。

「どうした灯? 計算できなくなった? スマホの電卓使えばいいじゃん」

「あんたの頭と一緒にするな」

「冷酷な女はモテマセンヨー」

「大丈夫、少なくともあんたよりか私モテるから」

「超・心外!」

「明子あんた欲しいのは無いの?」

 灯が明子に聞くと彼女は。

「えー……イケメンでお金持ちの彼氏」

「そこから離れなさい! ドアホっ! そうじゃなくて、このスーパーでの話だっ」

「えーじゃーお菓子」

「投げやりだなぁ、おい」

 灯があきれたように肩をすくめて溜息を吐く。

「食料品だよ! 食べたいもの、なんかあるかってきいてるのに」

「だって調理してくれるのは灯でしょ、灯が選べばいいじゃないの」

「あんたが普段からあまり調理しないせいで私がやっているの! 常日頃手伝え!」

「めんどくさい」

「―――しばくぞ………貴様!」

 明子の胸倉を掴まんばかりの殺気の灯。




 ◇◇◇



「いらっしゃいませー、本日のおすすめ商品でございます、ご試食いかがですかー」

 そんな剣幕を他所に店員の明るい声が響く。

 灯がそれに気を取られ、明子がこう言う。

「あ、これいいね? サウエッセンウィンナー、割と長く持つし朝食に焼くだけだから便利じゃん」

「話をそらしたなあんた」

「そう?」

 白々しく言う明子。

「まあいいわ、確かに便利だして時間もないからこれにするわ」

 観念したようにかごにサウエッセンを入れ、おまけに試食の焼きたてホカホカのウィンナーを美味しくいただき明子は上機嫌。

 灯はげんなりしていた。

 ほどなくして二人は会計を済ませ、エコバックに商品を詰めて店外に出ると雨は本降りになり、猛烈な勢いで振り付けていた。

「えーなんぞこれ! 天気予報では今日曇り時々雨だからこんなに降るはずなのにー」

「これは参ったわね、傘さして歩いても風が強すぎてずぶぬれになりそうだわ」

 それぞれ文句と落胆を口にする二人。

「灯、覚悟していくしかないか」

「そうね」

 それから二人はずぶぬれで帰った。



 夕方、外の雨は天邪鬼のように止み、天気は晴れた。

 自宅アパートで二人は順番にシャワーを浴び、夕飯を共同で作っていた。

「ちっ、なんでこんな面倒なことに」

「あんたがすっころんで卵たたき割ったからでしょ! 罰だ、罰!」

 ちなみに夕飯はミートオムレツからカレーライスに代わっていた。

「でも肉も買い忘れたのは私だけの責任じゃないと思うよ灯」

「うるさいわね、人間だれしもミスするのよ! 人間だもの」

「詩人なの灯」

「ちゃうわ」

 それでも夜にはカレーを仲良く囲んで食べる。

「いっただきまーす」

「いただきます」

 灯が溜息を吐きながら言う。

「はあぁ……今日は疲れたわ」

「そう? 雨にたたられて寒かったけどそれはそれで楽しかったけど」

「あんた得な性格ね、明子」

「あらそう? ありがとう!」

「―――別に褒めとらんが、ん―――まあいいや」

「ん?」

 呆けた顔の明子とあきれる灯。

 彼女らの平凡でよくある休日が終わるのだった。



「―夏編―」(終)


いかがでしょうか?

夏編はドタバタの梅雨時を書きました。秋編に続きます。

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