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明子と灯  作者: 平 修(たいらおさむ)
1/4

―春編―

少しでも楽しんでいただけたら幸いです。

「―春編―」


 寄稿 : (たいら) (おさむ)


 二人の女子が夜二人で食事をしていた。

 ここは二人が共同生活するボロアパートの一室。

(あかり)ぃ~。明日休みだねー?」

 茶髪のロングの女子が相手に向かって言う。

 灯と呼ばれたボブの黒髪の女子が反応して答える。

「そうね~、明日は本でも読もうかしら」

 明子がけしからんと言わんばかりに灯に詰め寄る。

「なに!? 灯ちゃんこんなに桜の時期にお花見しないの!? ありえな~い!」

 灯と呼ばれた女子が面倒臭さそうに明子を見る。

「何? 読書の何がいけないの? 大体人混みの多い所は苦手なのよ」

 明子がジト目で言う。

「灯ちゃん陰キャ~」

「やかましいなっ」

 灯が苛立って噛みつくように叫ぶ。

「おー怖」

 明子がケラケラ笑う。

「貴様私をおちょくって楽しんでいるな! 許さんぞ……罰として夕食はコンビニ弁当だ!」

 灯が言い放つと明子が縋り付いて懇願する。

「なぁああっ! ごめんなさい灯様! 許して! やっぱり灯様の手作りがいいですぅ~」

 灯が冷たい目で言う。

「じゃあ私に従え!」

「わー灯が女王さ―――」

 明子の言葉に灯が口を挟む。

「な・に・か・言ったかしらー?」

「――ひっ」

 灯のあまりの剣幕に明子は黙りこくった。



 ◇◇◇



 それから陳謝した明子はようやく灯を説得して花見に行く約束を取り付けた。

 翌日、都内の公園に二人は灯の手作り弁当と缶酎ハイ、ビニールシートを持って向かった。

「わぁ~桜が満開だね? 灯ちゃーん」

「人がゴミのようだ」

 明子が頭上を眺めて歩いていると灯が正面を見てそう言った。

「へ、なんか言った灯?」

 明子がキョトンとして聞く。

「別に」

 ぶっきらぼうに答える灯。

「さてこの辺に陣取るかしらね~」

 灯が地面の開いているスペースを指さして言う。

 頭上には桜の木があって絶好の花見スポットだった。

「オーいいね! でもなんでこんな良さげなお花見スペース空いているんだろう」

 明子が喜々として言う。

「そうねぇ? たしかに不自然だけど、まあいいわ」

 その横で灯が首を傾げながら小声で言う。

 二人はビニールシートをせっせっと敷いて座り込む。横のビニールシートを見ると男が二人酒を飲んで馬鹿騒ぎしていた。

「なるほど、これか……大方前にいた人が女子会でもしてたんだな、警戒しておこう」

 灯は呟く。

「どした灯?」

「ん? なんでも無い」

 二人はそれから弁当を広げ缶酎ハイを飲み

 始めた。



 ◇◇◇



 ―――しばらく飲んで。

「うえぇへっへっ、灯ちゃん~クラスで好きな人はできたの~」

 明子はすでに出来上がって灯に絡み始めていた。

 灯はうざったそうに―――でも帰ることはせず飲んでいた。

「そんなのいないわよ、面倒なやつばかり絡んでくるけどね……そういうあんたはどうなの?」

 明子は灯に聞かれるとこう答えた。

「えぇ~あたし~あたしも絡まれるけど灯ちゃんという人がいるから振ってるかな~」

 明子はニヤニヤしながら灯に詰め寄る。

「近寄るなぁっ! 気色悪いんだよぉ! お前」

「釣れないな~灯ちゃ~ん」

 詰め寄ってきた明子を無理やり押し返す灯。

 それでもしつこくする明子に鉄槌が下った。「ふぎゃ」

 明子の鳩尾に鋭いボディーブローが入る。

「うぐ……灯ちゃん腕を上げたわね」

「あんたがしつこいからよ」

 灯が淡々と酒を飲みながら答えた。

 二人がそんな漫才コンビぶりを発揮していた時。隣のブルーシートから男たちがやってきた。

「―――やっぱり来たわね」

「―――は?」

 二人はやってきた男たちが二人を見てそれぞれのリアクションをしていた。

「やあやあ、君たち飲んでる!? 俺たちと一緒にパーリーしない」

 先に声をかけてきたのはいかにもちゃらちゃらしてそうな金髪にピアスの男の方だった。

 隣には太ったメガネの脂ぎった男がいる。

「灯ちゃんモテモテ~」

 明子がへべれけの状態で笑う。

「メエ覚ませバカタレ! これはあれだ! ナンパってやつだぞ」

 灯の言葉は嫌悪感がにじみ出ていた。

 そして、ついで言うとマジだった。

 この手の男が寄っている明子みたいな判断力の低下した女をどうするかなんて想像に易い。

「なはは! ノリが良いですな! そこの茶髪ガール」

 脂ぎった男が愉快そうに笑う。

 明子が釣られて笑った、顔が完全に赤い。

「ひっく……楽しわね~」

 灯によりかかり肩を組む明子。

 一人だけ酒の強い灯は冷静に周りを見ていた。

「―――一体どういう組み合わせなのよこの二人―――私たちはあなた達と一緒に飲む気はないわ。さぁ! あっちに行った!」

 すると金髪の男が挑発的な態度で二人にこう言う。

「トゲトゲしてると折角の可愛い顔が台無しだぜ~お嬢さんたち」

「そうですな! ガールズ!」

 ―――明子はそれを聞いてニヤニヤして。灯は冷たい目で男たちを見た。

「それもそうかもよ―灯ちゃん」

 数秒の間灯からリアクションが消えた。

 この瞬間灯の中で不機嫌と怒りのゲージが最大値に振り切れた。

 瞬間、ばちぃんと音がした。

「おらぁ、めぇ覚ませってっつてんだろ!」

 明子は何をされたかわからなかったようで頬をさすっていた。

「―――ひっ」

 痛みとともに酔いが冷めた明子は状況を確認し怯えた。

 男二人もやや怯みながら声をかける。

「おいおい~お嬢ちゃん達。喧嘩は良くないぜー」

「そうですな!」

 男二人が声をかけると灯は物凄い凶悪な顔とドスの利いた低い声でこう言った。

「―――なにか文句でも?」

   男二人はその形相に絶句して完全に萎縮した。

「「失礼しましたー!」」

 同時に悲鳴のような声を上げ身支度を始めそそくさと逃げていった。

「ふう、やれやれ」

 灯は額に滲んだ冷や汗に酔いが冷めていた。

「灯、ありがとう……あやうくお持ち帰りされてチョメチョメされるとこだったよ」

 明子が赤い顔から急激に青ざめて。

「やっと目を覚ましたか、このバカ」

 ふたりはその後身支度をして帰った。



 ◇◇◇



 ―――その夜。

「灯ありがとう。いつも灯には助けられてばっかりだよ。これからもよろしくネ」

 明子が珍しくしおらしい態度で言った。

「どうした、悪い物でも食べたかあんた」

 明子が若干怒って言う。

「灯ちゃんひどよー。私真剣に言ってるのに」

 明子が顔をふくらませる。

 灯は明子に聞こえるか聞こえないか位の小さな声で言う。

「まあ、いい意味でも悪い意味でも退屈しないわね。こいつと居ると」

「何ブツブツ言ってるのさぁ、灯~」

 二人の一年はここで始まった。


「―春編―」終


いかがでしたでしょうか。今後も夏編、秋編、冬編と掲載予定です。

春編はあまりギャグ要素少なめですが今後はギャク増えます。

今後ともよろしくお願いいたします。

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