第58話 ~深雪side~ 進路
中学三年の冬を前に、私は自然と『これから』のことを考えるようになっていました。
成績は平均的で、特別優れているわけでも、劣っているわけでもありませんでした。
だから、地元の高校に進むんだろう。そんなふうに、ぼんやりと思っていました。
けれど、「五年後に失明する」という言葉を聞いたあの日から、私の中で世界の輪郭が変わり始めました。
本当に、それでいいのだろうか。
何となく選んだ道の先に、私の未来はあるのだろうか。
考えれば考えるほど、胸の奥で何かが小さく鳴り続けました。
もっと、自分で選びたい。
光がまだ見えているうちに、見たいものを見たい。
そんな思いに導かれるように、私は通信制の高校に進むことを決めました。
必要な授業だけを受け、それ以外の時間を『生きること』に使いたかったのです。
目が見えるうちに、この世界の色や形や光を一つでも多く、この心に焼きつけておきたかったのです。
母にその決意を話すと、少しの沈黙のあとで、やさしく微笑んで言ってくれました。
「深雪が決めたことなら、お母さんは応援するよ」
学費のことも、通う日数のことも、何も聞かずにです。
ただ、その言葉だけで、世界が少し温かくなった気がしました。
思えば、私がこれほどはっきりと自分の意思を口にしたのは、これが初めてだったかもしれません。




