第56話 ~栞side~ 出逢い②
高校三年の十二月。
街は光をまとう季節だった。
わたしはひとり、佐藤くんへのクリスマスプレゼントを探しに繁華街へ向かった。
この街のイルミネーションは、どこか大人びたシャンパンゴールド。
静かに降る光の粒が、空気の中に淡く溶けていく。
この色、この街の冬の匂いが、わたしはたまらなく好きだった。
今日のわたしは、。
通りのあちこちでは写真撮影が行われていて、
イルミネーションを背景にした新郎新婦たちが、ブライダルフォトの光の中で微笑んでいた。
その輝きは、まるで星屑のように目に染みた。
広場ではクリスマスマーケットが開かれ、木の香り、焼き菓子の甘い匂い、カップのホットワインの湯気が混ざり合って漂ってくる。
アクセサリーや小物たちが並ぶたび、わたしは足を止めてしまう。
だから、お目当ての店にはなかなかたどり着けなかった。
けれどそれもまた、幸福な寄り道だった。
ようやくプレゼントを買い、自分用の『』も手に入れて、
心がふわりと浮くような気分で帰り道を歩いていると、広場の片隅にストリートピアノが置かれているのを見つけた。
いつもなら、通り過ぎてしまうはずだった。
けれど今夜の街の光が、わたしの背中をそっと押した。
「一曲だけなら」
そう呟いて、ベンチに腰を下ろす。
指先が鍵盤に触れた瞬間、冬の空気が少し震えた。
奏でたのは『 』。
昔から大好きで、いつも心の奥で響いていた曲。
音が消えると同時に、あたたかな拍手がわき起こった。
わたしは立ち上がり、軽く頭を下げる。
立ち去ろうとしたそのとき——。
ひとりの女の子が、光の中からこちらに歩いてきた。
白いコート、白い肌、白い息。
まるで雪が人の形をとったような、透明な存在だった。
彼女はわたしをまっすぐ見つめ、
唇をかすかに震わせながら、そっと言った。
「やっと会えました……」
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