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第53話 ~栞side~ クリスマスイブデート②

 今日は佐藤くんとのクリスマスイブデート。

 場所は二年前にてっちゃんと同じ日にデートした遊園地。


 クリスマスの季節は好き。

 わたしは服が好きだから、その季節季節に合わせた服を選ぶのが好き。

 今日の服装は、白のもこもこのボアジャケットとチェックのツイードショートパンツ、白いブーツという格好。

 クリスマスは街がキラキラしているし、他の季節より笑顔の人が多い気がする。

 最近のわたしは相手のことを必要以上に意識せずにいられた。

 メイクも服装も「相手が喜ぶであろうこと」を第一で決めていたけど、今は自分がしたいと思うメイクと服装をするようになっていた。

 文のおかげで家でも、学校を変えたおかげで学校でも、佐藤くんのおかげで学校が終わっても、わたしは背伸びするどころか、わたしらしくいられた。

 とても生きやすかった。

 お母さんが時折出す不安定な音にも、影響を受け過ぎずに対応することができるようになっていた。


 あたりが暗くなりだし、イルミネーションが灯り始めたころ、佐藤くんがわたしを

 「う……上から見る、イ……イルミネーションもきっと綺麗ですよね!」

と、うわずった音で観覧車に誘った。


……。


 向かい合った二人が乗ったワゴンがゆっくりと動く。

 佐藤くんは黙ったままだ。

 下を見ると、イルミネーションがチカチカとクリスマスを彩っている。


……。


 上りながら(佐藤くんには悪いけど)てっちゃんと一番上でキスしたなと思い出していた。


……。


 「あ!あの!」

 ワゴンが一番上になったとき、佐藤くんが音を出した。


 「今回は勢いや思いつきじゃありません。

 ……。

 栞さん、ぼくと付き合ってください」


 誠実で真っすぐな音だった。


 「はい。

 わたしでよかったら」

 「そうですよね……。

 ぼくなんかじゃ……。

 ……。

 って!

 いいんですか!!

 本当ですか!!!」

 佐藤くんは立ち上がっていった。

 「嘘の方がいい?」

 ブンブンと顔を振る。

 「そ、そんなことないです。

 信じられなくて……。

 嬉しいです。

 夢みたいです……」


 告白されることは気づいていた。

 デートに誘われたときの音、今日までの音、今日の音……。

 いや、きっとわたしじゃなくても気づくと思う。

 そのくらい佐藤くんはわたしに、誠実にいつもいつでも向き合ってくれている。

 そんな佐藤くんのことを特別に思い始めていた。

 だから、告白を受けた。


 「あ……、ありがとうございます……」

 「こちらこそ、ありがとう」

 「ふー……。

 まさかオッケーしてくれるとは思わなかったです」

 「どんなつもりで告白したの?」

 「栞さんと出会ってから自分自身が変われて、自信がついて、そんな風にしてくれた栞さんに感謝したくて……。

 何よりも、ちゃんと栞さんのことをどんどんどんどん好きになっていて……、今度ふられたらダメージが大きそうだったけど、強い気持ちで告白しようと思って」

 「……君は……。

 本当に真っすぐだね……。

 真っすぐで素敵な音だね……」


 わたしは佐藤くんの隣に座り、立っている佐藤くんと初めて手をつないだ。

 佐藤くんはゆっくりその手を握り返しながら、真正面を見たままガクンと座った。


 ワゴンが下に到着したとき、佐藤くんは動かなかった。

 「どうしたの?降りるよ」

 「驚きと……、喜びで……、腰が抜けてしまって……」

 佐藤くんは動かないのではなく、動けないのであった。


 佐藤くんとわたしは隣に座って手をつないだまま、観覧車から降りられずにもう一周することになった。

 わたしは微笑みながら、幸せなこの二周目を過ごした。

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