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第51話 ~栞side~ 守るべきもの

 佐藤くんとは塾がない日、一緒に鹿野さんのカフェに行くようになっていた。

 そんな二学期の期末テストが終わり、いつものとおりカフェに向かって歩いていた。

 「すごいじゃん、佐藤くん。

 今回のテスト、全部5位以内だったじゃん」

 「そういう相楽先輩だって、英語1位だったじゃないですか」

 「えへへ。

 まあねぇ。

 まあ、どうしてもそうなっちゃうよね」

 肩で佐藤くんの肩にぶつかり、おどけて答える。


 その時、後ろから

 「おい、いちゃいちゃしてんじゃねえぞ!!」

 と、怒鳴り声が聞こえた。

 振り返ってみると、わたしに告白したやんちゃな先輩が、何人かの仲間を連れてわたし達ににじり寄ってきた。


 先輩は佐藤くんのつま先から目まで舐めるように睨みつけていった。

 「お前みたいなやつが、何でこんないい女といちゃいちゃしているんだよ」

 「……。

 何でといわれましても……」

 佐藤くんは小さくなり、ぶるぶると震えながら答える。

 「お前らが校内でいちゃいちゃしているのをみていると、虫唾が走るんだよ!」

 大柄な先輩は佐藤くんの胸倉を両手でつかみ、上にもちあげた。

 佐藤くんの浮いた足が、少しバタバタした。

 「お前にゃ、この女は不釣り合いなんだよ」

 「……」

 さらに持ち上げる、佐藤くんは苦しいそうに声が出せない様子だ。

 「それとも……」

 視線がわたしに向く。

 「この女が馬鹿なのか?」

 その時、佐藤くんの目の色が変わった。

 「そんなことないですよ!」

 宙に浮いたまま先輩の胸倉をつかみ返し

 「相楽先輩はそんな人じゃない!」

 と叫んだ。

 「なんだその態度はぁ!」

 先輩は佐藤くんを右のこぶしで殴った。

 佐藤くんの鼻から鮮血が飛び散る。

 吹っ飛んだ佐藤くんに追撃を加えようとする先輩の前に、わたしが両手を広げて立ちふさがる。

 「おいおい、けなげだなあ。

 やっぱりこの女、おかしいぜ」

 先輩が仲間の方を振り返った瞬間、佐藤くんは再び叫びながら立ち上がった。

 「だから。

 相楽先輩はそんな人じゃないんだ!」

 先輩にとびかかっていった佐藤くんは、先輩の顔面を固く握りしめた右手で殴ろうとした。

 必死の反撃を先輩は軽くかわし、佐藤くんは勢いよく転がってしまった。

 その背中を先輩が蹴る。

 わたしが間に入り、これ以上佐藤くんが蹴られないようにする。

 先輩はその様子をみて

 「やっぱりおかしいぜ。

 こんな男のどこがいいんだ」

 「……、だから、相楽先輩はおかしくないんだ……。

 確かに僕はおかしいかもしれないけど、相楽先輩を悪くいうのは許さない!!」

 呻き声と混じりながらでも強い意志を感じさせる音で、佐藤くんが叫ぶ。

 「なんなんだよ、お前ら……。

 もういい。

 いこうぜ!」

 先輩は佐藤くんとわたしを一瞥して、仲間と去っていった。


 肩を貸しながらカフェにつくと

 「どうしたの!

 まあ、入って!」

 と鹿野さんがびっくりした様子でわたしにかわって佐藤くんを抱きかかえ、いつもの席に座らせてくれた。

 「氷、持ってくるね」

 鹿野さんが素早く厨房に行く。

 「大丈夫?

 じゃないよね……」

 佐藤くんはわたしの渡したハンカチで鼻を抑えている。

 ハンカチの一部は血に染まっている。

 「大丈夫です……」

 「嘘……」

 「はい……。

 本当は、あんまり大丈夫じゃないです……。

 殴られたことが初めてだから、よくわかんないです……。

 鼻が熱いです……」

 「……」

 「ハンカチ、汚しちゃってすみません……。

 いててて……」

 「あんなの無視しちゃえばよかったのに……」

 「はい、僕もそう思っていました……」

 「だったら……」

 「でも、相楽先輩のこと馬鹿にしたから、おかしいっていったから。

 それを聞いたら、体が勝手に……」

 「それにしたって……」

 「僕のことはいくら馬鹿にされてもいいんです。

 今までも経験ありますし、今でも自分に自信がないですし……。

 でも……。

 でも!

 相楽先輩を馬鹿にすることは絶対に許せなかったんです!」

 その真っすぐな思いにわたしは笑顔になった、そしてその笑顔のまま涙が零れた。


 「すごいね……。

 本当にすごいよ、君は……」

 佐藤くんも鼻を抑えながら、笑顔になる。

 その顔を見てわたしはいう。

 「よし!

 これからは『相楽先輩』じゃなくて、『栞さん』って呼んでいいよ」


 ガシャン!!


 鹿野さんが氷を落として驚いていた。

 シェフはといえば、今回は目だけでなく、口も大きく開けてびっくりしていた。

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