第45話 ~栞side~ 転校
わたしは高校二年になるときに、地元の公立高校に転校することができた。
普通、転校することは難しく、転校する先の高校が定員割れしていないと入れないみたいだけど(そうしないと入試をした意味がないもんね)、ちょうど少し前に一人転校した人がいたから、ちゃんとした試験と面接を受けて入ることができた。
家からも自転車で行ける高校で、教室で転校の挨拶をしたあと、小学校のときの友達から声をかけられた。
「ひさしぶりじゃん、栞!
どうしたの?
あんな超進学校に行ってたのに」
「勉強についていけなかったんだ。
だめだった」
わたしは自然に答えらていた。
家族に、てっちゃんに、噓無く自分の気持ちが伝えられたからか、最近背伸びをせずにいられた。
「栞、美人になったよね。
前からそうだったけど、より美人になったよ」
友達はわたしを見ながら話してくれる。
この学校でわたしは、見える存在に戻れていた。
「ありがとう、そういってくれて」
わたしはメイクをしなくなっていた。
今のわたしには必要がないと思ったから。
始業式とロングホームルーム、二時限の授業が終わり、さっき声をかけてくれた友達と話しているとき、わたし達は急に声をかけられた。
「ちょっといいですか!」
声をかけてきた男子はわたしより少し小さく、学生服の上からでも痩せていることがわかる体型で、寝ぐせに大きめな丸眼鏡という恰好だった。
「先輩、お名前は」
真っすぐにわたしを見て尋ねてくる。
「相楽だけど……」
少しひるんだわたしにその男子は続けていった。
「相楽先輩!ぼくと付き合ってください!」