第33話 ~栞side~ 居場所
昨日は始業式だったから一緒だったけど、特別進学コースと進学コースでは、授業が終わる時間も違う。
毎日一時限。
『ドロップアウト』したわたしとしては、そのまま帰ると一時限分早く帰ることになってしまう。
そして、てっちゃんとも一緒に帰れない。
だから一時限分、時間を潰す場所が必要になる。
特別進学コースの人たちからは見えない存在になり、進学コースの人たちからは見てはいけない存在になったわたしには、学校に居場所はない。
今日もどうにか酸素不足の教室から飛び出すことができて、深呼吸をしながらあてもなくとぼとぼと商店街を歩いてみる。
ふと見るとシャッターばかりの商店街に似つかわしくない、開店祝いの花輪が出ているお店があった。
昔ながらの靴屋と、こっちも昔ながらの古本屋に挟まれたそのお店は、明らかに周りから浮いているビビットな南仏っぽいカラーコーディネートのカフェだった。
その前でひょろっとした私より10㎝は高いであろう、コックコートとコック帽を身に着けた、あまり周囲の人に積極的に話しかけていない40代ぐらいの男性と、私より10センチは低いであろう小太りでベストに黒い腰だけのタイプのエプロンをつけた、汗をかきながら必死に周囲の人に話しかけている50代くらいの男性が、数少ない買い物客にチラシを渡そうと頭を下げていた。
小太りの男性と目が合う。
とっさに目をそらすが、逃がすまいと離れた所から声をかけられる。
「今日オープンしたカフェです。
一杯無料です。ぜひどうぞ!」
満面の笑みでチラシを差し出された。
それがわたしの居場所となる『Le cafe du cerf(ル カフェ ドュ サーフ)』との出会いだった。




