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第3話 出逢い

 僕の家の最寄り駅から急行で三十分、そこからバスで五分行ったところにあるビルに、これから僕が週一回通うことになる通信制高校が入っていた。


 午前十一時からの始業式だから、同じ沿線にある前の学校の生徒とは会わずに済む。

 それでも念のため、みんなが使う急行ではなく、各駅停車で僕は登校した。

 一階に中華料理屋、二階にカラオケボックスが入る八階建ての雑居ビル四階部分がこの学校の全てだった。

 音楽室もなければ、図書室もない。

 受付だったであろう場所が、必要以上に立派に作られた学校のパンフレットでは『扉がなく、生徒が入りやすい職員室』と書いてあり、三つの会議室だったであろう場所が『先生が生徒と同じ目線で、みんなが一つになれる教室』と紹介されてる。

 紹介文に嘘は無い、ただ何か騙されたような気がしていた。


 僕はちょうど四月に転入したため、ブランクなく二年次からスタートすることができた。

 だからここをちゃんと卒業すれば、前の学校の同級生と同じ学年で大学入試を受けられる。

 この期に及んでそう思う自分に嫌気がさした。

 この学校には体育館がないため、教室で始業式が行わることになっていた。

 二年次から加わる僕に居場所が無いことは、あのパンフレットをみてこの教室を想像することよりもはるかに簡単なことだった。

 僕は始業式が始まるぎりぎりに教室に入ることにした。

 名前順で座るように聞いていたから、教室に入ると周りを見渡さずに何も考えることなく右列一番前の席に座る。

 一年次から一緒であったのであろう人たちの雑談が聞こえた。

 僕は誰にも気づかれないように机に突っ伏し、始業式が始まるのを息をひそめて待つ。

 その時、不意に後ろから肩を叩かれた。


 「そこ、私の席です」


 その声はあまりにも真っ直ぐで、他意のないことがはっきりとわかる声だった。

 ゆっくり振り返えると、僕は目を疑った。

 その誠実な声をした女の子は、白かったのだ

 自然を装い、僕は一つ後ろの席に移る。

 彼女の後ろ姿が見える。

 やはり白い。

 髪の毛も、オフホワイトのスキッパーシャツからのぞく首筋も白かった。

 言葉を失っている僕を背中で感じたのか彼女は振り返り、南国の海の色をしている澄んだ瞳で僕を見つめながらいった。


 「私、『アルビノ』なんです」

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