とっても良い子のお話
今日は電車で遠くへおでかけ。
私は、乗り合わせた隣の席に乗ったおばあさんにお辞儀をした。
「まあっ、かわいらしいお子さんね。しかも礼儀正しいし、こんな子供が欲しかったわ。うちのは生意気で、私の事をババア呼ばわりしてくるんですよ」
すると、隣に座ったそのおばあさんはにっこり笑って喜んでくれた。
それからママと夢中になって話をしている。
私はそんな二人の話を聞きながら、お行儀よく着席。
良い子は電車に乗っても騒いだり、大声で話をしたりしてはいけないのだ。
ママの甲高い声が耳に入った。
「ええ、うちの子ったら本当に手がかからなくていい子なんですよ」
私は良い子。
私は良い子。
昔は悪い子だったけど、今は良い子になろうとしてるの。
だって、良い子じゃないといけないもの。
私はいつもはどこかに閉じ込められている。
でも、ママの機嫌の良い時には出してもらえるの。
可愛いお洋服を着せてもらって、楽しい場所に連れていってもらえる。
美味しいご飯だって食べさせてもらえる。
そういう日は、おめでたい日らしい。
たくさんのお金を持ったママは、私に見せびらかしてくる。
だいぶ機嫌がいいと、プレゼントだって買ってくれるし、愛してるとも言ってくれる。
だから、私はママの事が大好き。
そんなママのために、良い子でいるの。
例え普段は、絵本に出てくる鬼のように怖くて、痛い事しかしてこなくて、悲しい事しかいわなくても。
大好きだもん。