三題噺練習帳
今日のお題はこちら。
「カチューシャ カルピス 香水」
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ふんわりと風に甘い香りが混じっているのを感じた。
どこか懐かしい。
辺りを見渡しても人影はない。
気のせい?幻臭?花の香り?疑問に思うが答えは出てこない。
でも、私はこの香りを知っている、そう思った。
「先輩の匂い……。」
私はボソリと独りごちた。
最終公演の翌日、先輩は消えた。
誰にも行き先も告げずに、消えた。
すぐ会えると思ってたのに、もう5年が過ぎた。
そんなことを考えながら、池の前のベンチに座る。
今日は誰かと会う予定をしているのだ。待ち合わせの時間まであと15分はある。
(あれ、誰と会うんだっけ?忘れるなんて変だな。
とりあえずあえばわかるからいいや。)
特にすることもないので、スマホを取り出すことにした。
しかし、スマホが見当たらない。
というか、このカバンは私のカバンではない?
中にはカチューシャが入っているのみ。
もしやと思い、すんっと匂いを嗅いでみると、先の香水の香りがする。
もしやセカンド!?これって先輩のカバンだったりするのかなどうなんだろ!?
ん?カチューシャ?何かを思い出しそう??
そんなことは置いといて、私のカバンはどこ?てかやばいんだけど、
財布とか入ってたんだけど!
バタバタしながら周囲を見渡そうとすると、真後ろに視線を感じた。
無表情の幼稚園児くらいの女の子がじっと見つめていた。
あまりにも表情がないので、少し怖い。
じっと互いに見つめ合うこと数十秒。ついに、少女が語りかけてきた。
「カルピス……」
呟くと同時に近くの自販機を指さす。
「……買って欲しいってこと……?」
恐る恐る訪ねてみる。コクリと静かな頷き。
無表情だが、意思疎通はできるということで少し安心した。
「わかったわ。買ってきてあげる。」
私は、5メートル先の自販機のところまで行きふと気づく。
財布入ったカバンないんじゃん!
ここは正直に言うしかないなと判断し
「ごめんっ!今お財布持ってないから買えないの。」
と少女に伝えると、ポロポロと大粒の液体が彼女の目から溢れてきた。
泣かれても私は正直悪くないんだけど、と思うもののやはり無垢な子供の涙の力は強い。
なんだか無性に罪悪感を感じてしまうものだなと。
「ほら、これあげるから、泣くのやめな。」
仕方ないからカチューシャをつけてあげてみる。
「これであなたはお姫様。かわいいよ’。」
池に映った姿を見て、満足したのか泣き止む少女。
その時、風が頬を優しくそっと撫でた。
甘い香りがする。
少女の姿は消えていた。
不思議に思っていると、私を呼ぶ声が聞こえてきた。
「ごめん。待った?久しぶりだね。卒業依頼だからちょうど5年。」
懐かしい声。甘い香り。
私は声を失った。だって、そんなの。ありえない。
「そうだ。カルピス飲む?すきだったでしょ?」
先輩の声がするなんてありえない。
あってたまるか。
「どうしたの?せっかく会えたのに」
私は気づいた。私の身体が公園に横たわっていることに。
「すぐに会えると思ってたのに、私だけ殺していくなんて酷いじゃない。」
ああ、これは悪い夢であってくれ。
ああ、先輩、カチューシャなんて。そう、カチューシャなんて……。
「最終日カチューシャ、ありがとうね。これからはずっと一緒だね。約束通り。」
ふふふと笑う先輩の顔は血まみれで、表情なんて読み取ることはできなかった。




