出会いのピクニック
出会いの一話です。
<萌えたリコリスの君#1>
春、桜の蕾がつまみ細工のように愛らしく花開いた頃。
上京し、一人暮らしを始めることとなった私の部屋では趣味であった美少年ポスターや、美男子をモチーフしたぬいぐるみが美しく配列され、夢見た理想の部屋を目前に広げていた。しかし埋めきれぬ心の穴があることに気づく。
「そうだ、友達が欲しい。あわよくば彼氏が欲しい。」
そんな時だ、あのラジヲを聞いたのは。
「みなさんこんばんは❤️リコリスエンジェル赤色担当の襾刃牙アミンです!今月発売のニューシングル桜のピンクが〜」
私は特に興味のなかったアイドルの宣伝を意識する暇もなくチャンネルを変えた、そして変えたチャンネル先で私は春一番の嵐が近づいていることを知ったのだ。
満開の桜が雨ざらしの残骸となってしまう前に桜を見に行こうと思い立った私は、推しのぬいぐるみを持っていきオタク女子の間で流行っている推し活をと一人企みカバンに潜ませた。
アパートを出て数十分、桜の見頃を迎えた公園にたどり着き、一人用のレジャーシートにコンビニのおにぎり、タピオカミルクティーを手に一息ついた私は。桜を見上げた。
「愛らしい薄桃色の桜は推し活の背景にぴったりだ。」
周りに人がいないと思っていた私であったが、思わず出てしまった言葉に一人赤面した。
「クスッ、っぷ。ふ、ふふ、あははははっはは!」
「!?・・え////」
いきなりの背後からの嘲笑とも取れる、というか嘲笑としか取れない笑いが聞こえたせいで赤面した顔がさらに赤面。同時にふつふつと訳のわからない憤りが湧いてきた。
キリッとその笑い声の方を睨みつけるとそこにはふんわりとした赤毛と対照的な深いブルーの瞳が目を引く美少女が立っていた。
「やはり世界は外見だな…」独り言が小さく出た。
「ハハッッウ」
彼女はまた笑った、聞こえたのか。耳がいい。
さっきまでの感情は何処え消えたのか、今はただただ恥ずかしい。
「あの、一緒にどうですか。」
恥ずかしさと、美少女への対応に慣れていなかった私は。血迷ってしまったのだ。完全にかける言葉をいや文章を間違えた私はまた一人前を向き赤面した。
しかし、美少女とは実に不思議な存在であった。彼女は私の隣に座り、こちらの目を見ながら言う。
「私も桜を見にきたんです!あ、私お弁当持ってきたんですけどシェアしません?」
「え、いいんですか。」
「うふっ、さっき失礼にも笑ってしまったのでお詫びです!」
「あ、でも私おにぎり一個しかない、、、」
「じゃあ、そのタピオカミルクティーをください。」
私はびっくりした。見ず知らずの人と食べ物をシェアする時点でもおかしな話ではあった、しかしこのタピオカミルクティーはもう、
「これ、もう口つけちゃったから、その、これはちょっと…」
しかし美少女はやはりマセていた。女同士なら別に気にならないそう言いたげだった。しかしさすがにそれはと私が主張したことで、彼女はちょっとむすっとしながら私からは何もあげることはなく彼女のお弁当を頂いた。食べ終わりに、彼女は私を見つめながらいう。
「あの!またここで一緒にここでご飯食べてくれますか?」
「え、いいですけど。」
「じゃあ明後日!いいですか?」
「うん、いいけど。」
「やったあ!じゃあ午後四時この場所で。私これから仕事なのでじゃあ、また今度!」
「うん」
そうして彼女は小走りで道路の方へ走って行った。
そして、彼女がいなくなった桜の下私は一人、カバンからぬいぐるみを出した。
次回出会いが友情に変わります。