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「ノノア、図書館では静かにやで」


 レイテが口もとに人差し指をあてて、「しーっ」としてきた。


「あ、ごめんごめん。ついテンション上がって大きな声出しちゃった」

「あんまり騒がしくしたら、最悪ウチの近所のおばちゃんみたいに図書館出禁になるかもしれんで。……と、それよりもホンマに見つかったんか?」


 レイテが目を輝かせて尋ねてきた。ミヌエットも私をキラキラした目で見ている。


 私はにやっと笑みを浮かべて頷いた。


「うん、見つけちゃった」


 そう言い、『伝説級の不思議な珍しいもの集』の目次の聖龍水と書いてある文字の箇所を指さした。


 それを見た二人は目を大きく見開いた。


「ホンマや……」

「本当にありましたね……」

「でしょでしょ。あ、これ夢じゃないよね?」


 ほっぺたをつねってみた。そしたらちゃんと痛みがあった。

 つまりこれは夢じゃない。現実だ。


「まさかホンマにあるとは……」

「驚きです……」


  二人は目をパチパチとさせている。口数も少なくなった。


 私もぶっちゃけ諦めかけてたから、まさかのまさかですっごく嬉しい。


「5ページ目、見てみよっか」


 二人に声をかけた。

 そして聖龍水のページである5ページ目を開けた。




 ◇




 〜聖龍水の神秘〜


 かつて伝説の白き巨龍、聖龍(セイントドラゴン)が負ったキズを癒すために飲んだとされるデルンドンの滝の水は、別名『聖龍水』と呼ばれている。


 現在では寒冷な気候となり氷瀑と化しているデルンドンの滝は、かつては温暖で滝の水は清く美しく流れていたという。


 凍った滝を砕き、砕いた氷を融かすことで、現在でも聖龍水を飲むことが事実上可能とはなっているが、現地採取の難易度が高く入手困難となっているため、現実的には聖龍水を口にすることはほぼできない。そのため、市場に聖龍水が出回ることもまずない。




 聖龍(セイントドラゴン)……その昔、勇者とともに魔王と戦ったドラゴン。


 デルンドンの滝……コールドゴールド地方の南部にある滝。現在は凍っていて滝の水が流れる様子を見ることはできない。




 ◇




「へー、聖龍水ってコールドゴールド地方でしか採取できないものだったんだね」


 聖龍水の説明文を読んだ私はぽつりと声に出す。

 私のいるモニモナ村近辺では採取ができないものなんだ。ちょっと残念かも。


 11ページ目、作ってみたかったな。


「せやな。場所が場所だけに取りには行けんな」

「市場にも出回らないもののようですし、入手はちょっと難しそうですね」

「そうだね」


 こればっかりはしょうがない。

 でも、できたらおじいちゃんが作ったものを私も作ってみたかった。


 まあ、『伝説級の不思議な珍しいもの集』には他にも素材が山ほど載っている。

 他のレシピで作れるものがないか探してみよう。


「しっかし、ホンマにわからんくなったなあ」

「なにが?」

「ノノアのじいさんのことや」

「おじいちゃんのこと?」

「せや。隠れて伝説級の素材を使って何か作ってて……。しかも聖龍水は入手困難な素材なんやで。せやのにじいさんはどうにかして入手して、レシピのものを作った。ホンマ何者なんやろな」


 たしかに何者だったんだろう。ますますわからなくなった。

 いまここで考えてもわかりっこないけど、これだけはわかる。

 もしかしたら、たぶん、きっと。

 おじいちゃんは只者ではなかったんだ。


「家に帰ってお父さんに聞いてみる、おじいちゃんのこと」

「そうですね、お父さんならきっと知っているかもですね」

「うん、それじゃ私家に帰る!」


 私は椅子から立ち上がった。


 気になる。

 素材のこと、おじいちゃんのこと。

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