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まずはレシピ本の1ページ目を見てみる。
するとそこには、おそらく料理のものではない別の何かのレシピが書かれていた。
◇
必要な素材
シルバナップス3つ
ギグルの葉3つ
ミトのしずく
聖龍水
作り方
①、シルバナップス3つとギグルの葉3つを細かく刻んで混ぜ合わせる
②、聖龍水に①を加えて、一晩寝かす
③、②から①を取り除く
④、ミトのしずくを数滴加える
⑤、一晩寝かす
◇
「なんなのよこれ……」
得体の知れないレシピに気味が悪くなる。
シルバナップス、ギグルの葉、ミトのしずく、聖龍水。
どの素材の名前も聞いたことがない。
また、レシピには素材と思われるものの挿絵が描かれていたが、その描いてある素材も見たことがなかった。本当にこの挿絵のような素材がこの世に存在するんだろうか、と疑わしくなる。
レシピはざっと目を通しただけでも100ページ分はある。そして1ページごとに必要なものと作り方と挿絵が事細かに載っていた。
「ていうか、作り方の工程が大雑把すぎない? それにこの素材を集めて作ったとして、最終的に何ができるんだろう?」
このレシピには必要な素材と作り方と素材の挿絵しか載ってないから、作ったとして何ができるのかわからない。何の作り方なのかが不明なのだ。
うーん。なんでおじいちゃんは作ってできあがったものをレシピに残さなかったんだろう。普通だったら、作ったらこんな物が完成するよーってレシピに残すと思うんだけど……。
あえて残さなかったのは、誰かにこのレシピ本を見られたときに、できあがるものを知られたくなかったから?
そもそも、なんでおじいちゃんがこんなレシピを?
おじいちゃんって、何者だったの?
「あーわかんないよ!」
次々に疑問が溢れてきて、私は頭をかきむしった。
私の頭脳じゃ答えがちっとも浮かばない。
「ほんとなんなのよ、この本」
1ページずつめくってレシピを見ていく。
とりあえず私が知っている素材が何かないか、ひとつひとつ確認することにした。
1ページ目、知らない。
2ページ目、知らない。
3ページ目、知らない。
4ページ目、知らない。
5ページ目、知らない。
やっぱり知らない素材だらけだ。
知らないのは私が無知だから?
それとも素材が珍しいから?
6ページ目、知らない。
7ページ目、知らない。
8ページ目、知らない。
9ページ目、知らない。
10ページ目、知らない。
11ページ目、知ら……!
次のページをめくろうとしたのをやめて二度見。
まさかだった。知ってる素材があった。
「え、これって……!」
私は急いで部屋に散らばったゴミを漁る。
「あった、これだ」
ゴミだと思っていたうずまきの形をした根っこのようなものを手に取る。これと11ページ目の『ラッセンの根っこ』っていう素材の挿絵。この二つが同じ形をしていた。
ということは、だ。
「もしかしておじいちゃんがいままで集めていたものは、このレシピ本に載っている素材だった……?」
きっとそうだ。そうに違いない。
そうだと考えると、部屋に散らばっているゴミだと思っていたものが、どれもこれも大事な物に見えてきた。エッチな本以外はひとつとして捨てちゃいけないような、そんな気がする。
11ページ目……。何が完成するのかはわからないけれど、頑張って作ってみたいかも。作ることでひまもつぶせそうだし。
私は11ページ目に折り目をつけた。それからレシピをじっくりと読む。
◇
必要な素材
プリメ草5つ
ラッセンの根っこ3つ
シューレの種1つ
聖龍水
作り方
①、プリメ草5つ、ラッセンの根っこ3つ、シューレの種1つを混ぜ合わせる
②、聖龍水に細かくすりつぶした①を加えて、加熱しながらよくかき混ぜる
③、②を冷ましたあと、日光と月光に当てつつ3日寝かす
◇
ふむふむ。ラッセンの根っこは3つ必要なのか。いま私の手元にあるのはひとつだけ。
あと2つ必要だけど、これって土に植えたりしたらにょきっと生えて増えたりしないかな?
って、そんな都合よくいくわけないか。
それとこの聖龍水って素材、たしか1ページ目のレシピにも載ってた。聖龍水はもしかしたら他のレシピでも使ったりするのかもしれないな。
ちなみに聖龍水の挿絵は、滝の絵が描かれている。
この滝で水を採取したら聖龍水がゲットできるってことなのかな?
てか、この滝ってどこにあるんだろう?
聖龍水っておいしいのかな?
「あれ、なんか楽しいかも……」
ふと、レシピのことを考えると胸がワクワクしている自分がいることに気がついた。ワクワクとドキドキがとまらない。
平凡な村での平凡な毎日。
平凡な私はずっと平凡に暮らしていくものだと思っていた。
だけどいま、その平凡がこの不思議なレシピ本によってちょっとだけ変わっていくような、そんな気がした。




