俺の過去(1)
『これにて、第〇回、〇〇文学賞の受賞式を終わります。続きまして……』
壇上の上で、僕はカチンコチンに固まったままどうにか授賞式を終えた。
また、沢山のフラッシュが光る。
それは主に、自分に集まっている気がするが、気の所為と思いたい。
僕の名前は、朽木――。野々原小学校をもうすぐ卒業する、小学六年生です。
そんな小学生の僕が何故、こんな大層な文学賞の授賞式に居て、しかも壇上の隅とはいえ、注目を浴びているのにはちゃんと理由がある。
僕は、昔から本が好きで好きで、田舎の学校にある図書館の本は全て読んだくらいだ。
言葉というものは、面白い。色んな意味が合って、色んなことを想像させてくれる。
漢字検定も、早くながら準二級はとれてしまった。
小説や伝記、様々なジャンルがある中で僕が特に惹かれたのは、「詩集」だった。
海外の詩人から、最近の詩集まで、手に入るものは限られていたけれど、祖父が甘かったからお小遣いをねだっては市街の本屋で買い漁った。
金子みすゞ大先生の詩なら、みんな知っているだろう。
僕もあの詩が大好きだ。
詩の世界は、無限だ。
どんな形でも、詩になると思う。
僕が、読み手からいつの間にか、創作する側になったのは、言うまでもないだろう。
親に秘密のノートに書きこみ、たくさん、詩を書いた。
心に、"言葉の泉"があるように感じ、まるで溢れてくるかの様だった。
(……ほんとに、出来心だったのに!)
わなわなと手が震えた。
雑誌を取り落としてしまい、姉に不審な顔をされる。
「お、お姉ちゃん……」
「何よ?」
中学二年生の姉は、呑気に煎餅を齧っている。
「賞獲っちゃった……」
「は?」
「○○文学賞の、詩部門の、最優秀賞……」
ぽろり。
姉の煎餅も、手から落ちていた。
そもそもの発端は、祖父だった。
僕に甘いことは前述したが、詩を書いていることまでは秘密だった。
そんな祖父が、僕の秘密のノートを偶然見てしまい。
「お前には、才能があるぞ!」
と喜んでいた。
そして祖父が愛読している文学雑誌の賞に応募してみないかと言ってきたのだ。
出来心で、一生懸命応募要項を読み、祖父に聞きながら原稿用紙に書き込み茶封筒に入れて、郵便ポストに入れたのだった。
忘れた頃に、何とやらとはよく言ったものである。
本当に僕がそんなことを忘れた頃に、雑誌で結果が発表された。
史上最年少の、詩部門での最優秀賞の受賞だった。




