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「出来た……」

彼女は、キャンバスに向かって安堵の息を吐いた。

そしてマスクをずらす。

窓から、熱気の風が入って来る。

「今日も暑いわねー」

彼女の独り言は、誰も聞いてはいない……。

パレットや絵の具を置いたサイドテーブルには、何度も読まれたであろうぼろぼろの、一冊の詩集が開かれていた。

そのページも、熱気の風で捲られていく……。

筆を持ったまま、彼女は何かを思い出すように、目を瞑る。

「――、元気かな……?」

目を瞑ったまま彼女はクスリと微笑んだ。

筆を持った左手首に、僅かながらの傷……。

それを、そっと右手で覆う。

目を開く。


キャンバスの絵は、きらきら輝く一番星が描かれていた……。


チャイムが鳴る。


どうやら、()の定期便が、届いた様だ……。


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