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涯て。  作者: 森のきのこ
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ぷろろーぐ。

名前は、セレス。


覚えているのはそれだけ。


随分と長いこと旅をしている。


何故旅をしているのかは、忘れた。


何処へ向かっているのかなんてわからない。


この、終わりのない、長い旅路の終着点。


そんな場所が存在するのかすら曖昧なんだ。


それでも、ただひたすらに歩き続けるしかない。


今ここに存在している意味さえわからいのだから。



________________________


昔から人の顔色を伺うことが苦手だった。


…というより、私には【空気を読む】という事が出来ないらしい。


誰かの顔色を伺って、自分を押し殺して生きるなんてまっぴらだ。


そう思っているのだから仕方がない。


そして、隣にいる『コイツ』も私とは違った種類の【空気が読めない】奴なのだ。


つい先刻も、こんなことがあった。


数日前から共に旅をしてきた者達がいた。


私とコイツは、よく言えばマイペース。


そう言えば聞こえは良いが、言いかえればただただ協調性がないのだ。


彼等は後から来て私達に追いついてきた。


突然声をかけられ、旅路を共にすることになった。


それ自体は良くあることだ。


そして、この先の出来事も、等しく良くあることなんだ。


私達は相手に合わせてペースを変えない。


彼等は先を急いでいたようだ。


だが、私達には急ぐ理由などない。


ここらで少し休もう。


彼等も提案に乗った。


そこで私の悪い癖が出てしまった。


一度休憩を挟むと、往々にして動くのが億劫になる。


仕方がないことだ。


別に急ぐ理由などない。


行き先も、目的も不明なのだから。


どれくらい休んだのかは分からない。


『時間』という概念が曖昧な世界。


それでもまだ動く気にはなれない。


彼等は先を急ぐので、出立を促してきた。


そもそも、そんなにも先を急ぐ理由などあるのか?


すると、『コイツ』が言った。


「この先を進むのにも飽きたから、今来た道を戻ってみませんか」


彼等は怒って、私達と決別した。



________________________


『コイツ』とばかり呼ぶのも不便だから、呼び名を考えなければ。


今からコイツのことは『プラム』と呼ぶ事にしよう。


「なぁ、今からお前のことをプラムと呼ぶことにするよ」


「別に構わないけれど、ボクにはルースと言う名前があるんだけどね」


あぁ、そうだった。


コイツには既に名前があったんだ。


うっかりしていると忘れてしまう。


「なぁ、プラム、それじゃあ、そろそろ戻ろうか。」


今来た道を指差すとルースは言った。


「ルースだけどね。戻るのはやっぱりやめよう。それより、こっちの方が面白そうだ」


先程から道だの旅路だのと散々言ってきたが、そもそもここには【道】と呼べるものがない。


あるのは永遠に広がる平原。


何処へ向かうのも自由な、果ての見えない地平があるのみ。


プラムが指差す方角に、特段面白そうな物は見当たらない。


まぁ、良いだろう。


何処へ向かうも自由なのだから。





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