窓
鳥の鼻歌と雨上がりの湿った空気が
五感を刺激する霧の濃い日
私は、ふと酔いから醒める。
灰色の空から、また降り出す雨に
鳥達は逃げるように飛んでいく
憂鬱さを誘う曇り空と雨。
こんな日が続く梅雨が大好きだ。
目覚めたものの、頭痛やら酒が抜けずと
倦怠感に駆られていた。
インスタントコーヒーを作り
ベットに腰掛け
メンソールの煙草に火をつける。
これは、私の日課だが
ただ今日のところは、日課のことを忘れ
只々窓の向こうを見つめていた。
窓からは、8階建マンションや
点滅する街灯。濡れたアスファルト
道行く働き人、学生の姿だった。
ふと、幼い頃を思い出した。
ビニール製の質素な傘を広げ
いつもとは色の違った地面を歩く。
雨が傘に落ちる音や、滑るように流れる雨水
水溜りの中で跳ねたり、自然が生み出した
円舞曲をどれだけ純真で無垢な心で
感じれただろうか。
それからというもの、皮肉にも歳は取る。
私が思春期に入り、恋仲の関係がいた時だ。
いかんせん、初めての恋仲故に
どう接したらいいのか、分からず
気張らず適当にふざけてみたりして
あの子を笑わせていた。
まだ、あどけない瞳と笑顔。
そんな日常に終止符を打つべく日が来た。
そう、こんな雨降る日だった。
彼女は受験だとか、部活の大会などで
忙しく、壊れてしまいそうだとか
言い訳はいい、別れたいとのことだった。
何も言えずに、彼女から逃げるように
帰ることしかできなかった。
一つの傘を2人で入っていた為に、
私は傘を彼女に渡したままなので
雨に打たれて帰る。
雨には味があり塩っぱいことを知った。
その時の雨は終曲でしかなかった。
泣いていたのだ、雨も私も。
私は、家に着いて否やシャワー浴び泣いた。
初めて恋の喜びや悲しみを知ったのだ。
人は皆、恋の喜びや悲しみを
覚えているだろうか。
そうこうしてる間に、
聞き慣れた着信音で我に帰る。
使い古しヒビの入った携帯の画面を
指で横になぞり応答する。
これから友人とランチを食べることになった。
なので、今日はこの辺で失礼するよ。